<   2018年 10月 ( 28 )   > この月の画像一覧

タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる

タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる

野瀬奈津子、他、玄光社、2017

3207冊目


インドには子どもに読ませたい本がない。

タラブックスの創設者の思い。


1995年、創設者の一人がインドの画家に語った怠け者のライオンの話が二ページのサンプルになった。ザラザラとした手触りの手すき紙とシルクスクリーン印刷で。絵本の見本市で、カナダの出版社が8000部を注文。

その本が欧米で評判を呼び、タラブックスの経営は安定した。


ハンドメイドは見本ズリのための偶然だった。


しかし、その見本本に対する評価が、インドでは気づいていなかった価値を、創設者自身に対しても明らかにした。


インドの伝統的なアートと物語、世界観と手作り絵本の出会いは、2008年の『夜の木』The Night Life of Treesがボローニャ・ラガッツィ賞受賞によって、世界的に認知されるに至る。ゴンド画家による絵と世界観。


手作りならではの仕掛けも楽しい。パタパタ本や、穴あき本。それらのアイデアを出したのがラトナ。


いまも「ちいさい」ままで、納品まで半年待ちなどは当たり前。


絵本の最初のアイデアの段階の「対話」やワークショップから、素材やデザイン、絵やストーリーなどが丁寧に作り出されていく。


そして、20年が経って、タラブックスの絵本で育ったという若者が担い手として入社しているという。

どんなに注文が殺到しても残業しない、急がない。自分たちのやり方を変えずに、ちいさいままで取り組み続けている。


2009年にTsunamiが出されているというようなシンクロニシティがあるのも、民俗的な知恵の普遍性の現れか。


アボリジニーとも、アフリカン・アートとも共通する線の描き方にくわえて、インド映画のポスターによくある人物の描き方など。インドの民俗アートの多層性にも心惹かれるものがあるね。


どれか一冊をと言われれば、どれにする?



『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』2017

は、写真を中心にしたもの。



[PR]
by eric-blog | 2018-10-31 11:30 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

あなたの心配事を話しましょう 響きあう対話の世界へ

あなたの心配事を話しましょう 響きあう対話の世界へ

トム・エーリク・アーンキル、エサ・エーリクソン、日本評論社、2018

3206冊目


フィンランドのOD実践が世界的にも話題になり、「刊行によせて」によれば5-6年前に日本にビデオや書籍で紹介されたという。日本でも、ODADの実践ができないかという機運から、『オープンダイアローグ』の翻訳、出版、そして、20174月、トムとロバートの二人を日本に招き、一ヶ月にわたる集中研修が行われた。


そこでADを始める前にまずは修得しなくてはならないという「Taking up One's Worries」に出会った。それは『OD』の本にも記載されていない内容だった。そして、日本滞在の経験から、この研修のテキストが全面的に書き換えられ、この本が生まれた。


その経験から「日本の読者の皆様へ」は文化や社会状況の違いに心を用いたものになっています。

一ヶ月の滞在と日本の同業者との対話、交流を踏まえて、トムが導き出したイシューは五つ。

・人は誰もが唯一無二、そのような人とコミュニティとの関係

・コミュニティの調和(ハーモニー) コミュニティの調和に向かう「美しい努力」。そこに「開かれた調和」はあるのでしょうか。調和のスペクトラムの一端には「沈黙させる調和」があり、もう一端に「調和の決裂」がある。オープンであることとコミュニティ/共同体であることを両立させることがどのように可能であるか。

・心配事の主観性  関係性の中での心配事。他者からどう見られているか。

・上下関係(ヒエラルキー) 支配的な大声がまかり通り、か細い声が打ち消され聞こえなくなることはある。どのような地位の人も、その人の観点が鳥瞰図であるわけではなく、自分の関係性や世の中についての観点から状況を確認しようとしている。複数の視点を認めることができれば、さらに全体像がよく見える。

・沈黙 フィンランドでは沈黙が大切にされる。これは対話にとってはメリット。対話では聞くことも大切。「他人の話を遮れば自分の内面の対話もそこで止まります」xiv

他の人についてわかることはできない。しかし、他者と触れることで自分自身についてより理解を深めることはできる。


それぞれが自分の心配事を話題にすること。

心配事を減らすために、協力を求めているということ。


専門家からの協力はサポートでもあり、コントロールにもなる。

コントロールをクライアントが握ることができるようになれば、それがエンパワメントになる。

クライアントがサポートから自立できなければそれは依存になる。


p.56




[PR]
by eric-blog | 2018-10-27 12:10 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる

遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる

Free to Learn--Why unleashing the instinct to PLAY will make our children happier, more self-reliant, and better students for life

ピーター・グレイ、築地書館、2018

3205冊目


吉田新一郎さんが翻訳している。相変わらずのナイスセンス。


でも、この本、役に立つのかなあ。なんと言っても「狩猟採集民の子どもの学び」をベースに物事を考えている節があるからだ。


とはいえ、「子どもが自分の生まれた文化の中で生き延び、そして成功するためにしなければならないことを、自発的に学んでしまう。」7と言うのはその通りだ。


農耕民族の私たちのサバイバルには役に立たない部分もあるかもしれないけれど、狩猟採集民の末裔と共生しなければならないこの世界で、知っておくのもいいかもね。


狩猟採集民の断固たる平等主義31


そして、義務教育制度の

4章では「強制された教育制度の7つの罪」が、今の学校制度の瑕疵として示されている。

1 正当な理由も適正な手続きもなく、自由を否定している

2 責任能力と自主性を発達させる妨げになっている

3 学びの内発的動機づけを軽視している(学びを苦役に転換している)

4 恥ずかしさ、思いあがり、皮肉、不正行為を助長する形で生徒を評価する

5 協力といじめの衝突

6 クリティカル・シンキングの禁止

7 スキルと知識の多様性の減少


信頼にあふれた子育て  

信頼にあふれた親が減少する理由 278

・近所の弱体化と近所の遊び友達の喪失

・子育てについての常識の低下と世界的な不安の上昇

・未来の雇用の不確実性の増大

・学校の力と、学校が押しつける抑圧的な諸条件に従わせる必要性の高まり

・学校中心の子供の成長と子育てモデルの増大


訳者あとがきで吉田新一郎さんは、これらのことに同意しながら、もう一つあると指摘している。「忙しすぎる」320


信頼にあふれた親になるには?287

・自分の価値を検討する

・あなたが子供の未来を左右するという考えを捨てる

・子どもの活動をモニター(監視)したいという誘惑に耐える

・子どもが遊べて探索できる安全な場所や機会を見つけるか、作り出す

・従来の学校に代わる別の可能性を考える


著者は教育の未来について楽観的だと言います。301

そして、それは学校の外の変化によるのだと言います。

吉田さんもあとがきに言います。「脱学校とみんなが集えるコミュニティ・センターの設立」であると。320


目指せ、学びのコミュニティ。


私たちの社会が賢くなってきていることを信じて。



[PR]
by eric-blog | 2018-10-26 14:25 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

対話のことば オープンダイアローグに学ぶ 問題解消のための対話の心得

対話のことば オープンダイアローグに学ぶ 問題解消のための対話の心得

井庭崇、長井雅史、丸善出版、2018

3204冊目



『オープンダイアローグ』をもとに、「パターン・ランゲージ」をその哲学にのせて紹介している本。


大きくは

1. 体験している世界

2. 多様な声

3. 新しい理解

という対話の段階における30の配慮事項それぞれにふさわしい言語を紹介。こんな風に言えばいいんだよ、というのを「セリフ」として確立している。

a0036168_12185529.jpg
xii


あれ、これ、「ひとまち」のホワイトボードミーティングでもやっている方法だね。


と思ったら違っていた。30の状況において、経験ある人が「その状況において」「そこで」「その結果」という手順で、どう考えるかを整理しているのが「パターン」。なんだあ。こう言えばいいよというパターンが言語化されているわけじゃないんだ。


どう表現するかは、自分で考えるということかな?


こういうのが「対話のことば」として、使えるのかなあ?


ODはフィンランドで1980年代に開発された精神疾患に対する治療方法。

対話を中心としたミーティングを重ねることによって治癒をもたらす。xiv

その対話の心得が30の「対話のことば」。


斎藤環さんが書いている『オープンダイアローグとは何か』(医学書院、2015)では「べてるの家」の実践との類似性が検討されています。061そこでは、アメリカで実践しているマリー・オルソン教授がまとめた12項目が紹介されています。(046-047)

  1. 1.ミーティングには二人以上のセラピストが参加する。
  2. 2.家族とネットワークメンバーが参加する
  3. 3.開かれた質問をする
  4. 4.クライアントの発言に応える
  5. 5.今この瞬間を大切にする
  6. 6.複数の視点を引き出す
  7. 7.対話において関係性に注目する
  8. 8.問題発言や問題行動には淡々と対応しつつ、その意味には注意を払う
  9. 9.症状ではなく、クライアントの独自の言葉や物語を強調する
  10. 10.ミーティングにおいて専門家どうしの会話(リフレクティング)を用いる
  11. 11.透明性を保つ
  12. 12.不確実性への耐性


フィンランドでは、「オフィス」に相談の電話がかかってきた24時間以内に複数のスタッフを派遣し、クライアントと家族あるいは友人などの関係者の参加を得て、自宅で行われるようになってきているという。020

そして、それは無料なのである。


本人が関わらない決定はなされないので、スタッフだけのミーティングはない。「リフレクティング」という専門家どうしの会話はその場で行われ、クライアント家族は自分たちがどのように観察され、考えられているかを、観察することができるのです。このことによってクライアントと家族に、「苦しんできた経験を言葉で再構築する」機会が得られるという。026


平等に参加するのだが、専門性は必要だと。


『オープンダイアローグ』は、開発者であるヤーコ・セイラック、トム・エーリク・アーンキルによるもの。(日本評論社、2016)

この本には、関係者の対話、オープンダイアローグに加えて、第三者としてのファシリテーターを入れた「未来語りのダイアローグ」Anticipation Dialogues ADが紹介されている。この<対話>のファシリテーターはペアで関係者のネットワーク・ミーティングからの依頼で活動する。74

ファシリテーターの役割は

・話し合いの過程を整える

・参加者が一緒に行動する計画を立てられるように援助する。

・参加者個々人の思考プロセスを促し、考えがまとまるように援助する。

・質問に対する答えに正しい、間違いはない。ポジティブな未来とそこへの道筋を想起するような質問が出される。

・参加している人たちが新たに理解しあえるように促す。


ファシリテーターは一人がインタビュー、一人が記録する。

オープンダイアローグの関係者はクライアントとその家族と専門家の二つのテーブルに別れる。

最初に、一方のファシリテーターが、本人と家族のグループに対して質問し、もう一人が記録する。

「未来を想起」する手順

・近い未来から現在を考える 一年後どうなっているか。どのようにそこに至ったか。

・してきたこと、役立ったことを想起する

・不安、悩みごととその軽減、解決


次に、記録していたファシリテーターが今度は専門家グループに対してインタビューする。先ほどのファシリテーターが今度は記録する。

支援者に対する質問は二つ。「未来とそこに至るプロセス」と「悩み事とその解決」である。90


こちらの本は、開発者らによるものだけあって、初期の頃の試行錯誤についても言及されている。いま、彼らの研究は、「どうすればいいか」ではなく、「なぜ、オープンダイアローグが効果があるのか」の探求に当てられていると、報告者らは言う。


専門性がどんどんと細分化していき、複雑さを増すと、専門性と「生活世界」との出会いがますます難しくなっている。

斎藤さんは「専門性は必要」と言うことを指摘しているが、どの専門性がより重要であるとか、上であるとかの判断があったと、開発者らは振り返っている。


そして、それは専門家と家族の間にも序列が作られてしまうことともつながる。平等に対話が行われるためには、まず専門家、スタッフの側が変わらなければならなかったと、著者は言う。1984年のあるケースで起こった変化。


後に7つの原則がまとめられた。57


1) 即時に応じること

2) ソーシャル・ネットワークを引き入れること

3) 個別で具体的な様々なニーズに柔軟に対応すること

4) 責任を持って対応すること

5) 心理的な連続性を保証すること

6) 不確かさに耐えること

7) <対話>が行われていること


ネットワーク・ダイアローグのアプローチにおける権力行使に関する研究から、権力の行使に関する四つの話法を取り出した。202


1) 専門家対患者の話法では、チームのメンバーは自分たちを支援者と見なし、これに対応するようにクライエントは自分たちを患者、つまりより影響力を持たない者とみなした。

2) 治療モデルの話法では、支援者は自分たちの位置付けをODの原則に沿ったものにしようとする。

3) 規範的な話法では、正常性についての一般的な社会的態度が力を持つ

4) 民主主義的話法では、個人であることに重きをおく西欧的パターンに従っている。


ネットワーク・ダイアローグがうまくいけば、クライアントの苦悩をやわらげ、彼らが社会から排除されるのを回避できるだろう。だからこそ、権力関係を率直に分析し議論することが必要である。権力関係が実践を可能にし、そしてその実践によって権力関係が変容するのだ。「エピローグ」より。205


専門家は自らの領域を超えていかなければならない。


どこまでもオープンな対話のあり方を求めていく考え方や態度が、技法よりも大切。




[PR]
by eric-blog | 2018-10-26 11:39 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

El libro negro de los colores : The Black Book of Colors: 多彩な色の黒い本

ひょっとして、この本にはもじもいらないんじゃないかなあ。
点字の方が、いいのかなあ。
何れにしても、声に出して読むのがいいね。

音楽だけのこの動画が、視覚者には心地よいのだけれど。
https://www.youtube.com/watch?v=R6xNg0544sE

======================

El libro negro de los colores

Menena CottinRosana Faria

The Black Book of Colors

多彩な色の黒い本


According to Thomas, Yellow tastes like mustard,

but it as soft as chick's feathers.

トマスにとって、黄色はマスタードの味がする

けど、ひよこの羽のようにふわふわだ。


Red is acid as strawberries and sweet as watermelon,

but it hurts when it peeks out of a scratch on his knee.

赤はいちごのように酸っぱくてすいかのように甘い

けど、膝小僧のかさぶたを突き破ってくる奴は痛いよ。


Brown cracks under his steps when the leaves are dry.

Brown smells sometimes like chocolate, but sometimes Brown can stink.

茶色はかさこそ葉っぱを踏む足元で砕け散る。

あるときはチョコレートの匂い、あるときは臭い。


Thomas says that Blue is the color of the sky

when the sun shines hot on his head.

トマスは言う。青は空の色

お日様が頭のてっぺんを照らしている時のね。


The sky turns white instead,

should the clouds decide to cover it and the rain to break loose.

空が白になる時は

雲がいっぱい広がって、雨をぽつぽつ落とす時。


But if the sun leans out to see the falling raindrops

all colors appear to paint the rainbow.

お日様が雨を見ようと顔出すと

全部の色が虹を彩る。


For Thomas, water without sun isn't much fun;

it has no color nor taste nor smell.

トマスにとってお日様がない時の水はたいくつなだけ;

色もなければ、味もそっけもない。


And Black is the king of all colors. It is as soft as silk

when his mother hugs tight and wraps him in her long dark hair.

そして黒は色の王様。絹のように柔らかく

かあさんがトマスをしっかり抱いて長い黒髪で包んでくれる時の色。


He says Green smells like a freshly mowed lawn

and tastes like lemon sherbet.

彼は言うのさ、みどりは刈ったばかりの芝生の匂い

味はレモンシャーベットのようだと。


Thomas likes all colors,

トマスはどの色も大好き


because he can hear them,

だって、色は聞けるし


smell them,

匂いがあるし


taste them,

味わえるし


and touch them.

触れるから。



[PR]
by eric-blog | 2018-10-25 11:04 | ◇ブログ&プロフィール | Comments(0)

My Room Portrait of a generation 天井から覗く世界のリアル 55カ国1200人のベッドルーム

My Room Portrait of a generation 天井から覗く世界のリアル 55カ国1200人のベッドルーム

John Thackwray, ライツ社、2018、フランス語版2017

3203冊目


http://myroomphotos.com/the-project/


本のタイトルには「1200の部屋」と書かれているが、実際に本に収録されているのは84名。2010年に始まり、最初は「パリの部屋」として写真家の真石や友人の間に行われていた。紹介者であるトニーに寄れば、そのプロジェクトは「次々と部屋を開けていった」。


この本は書評で紹介されていた以上の印象を残すものだ。それは、写真家がまとめたその部屋に住む若者(対象は18歳から30歳に限られている)についての半ページ、666字の紹介文に凝縮された「現在の世界の「小さなサンプル」」であるからだ。


著者の前書きも一ページだけのとてもシンプルなものだが、著者は言う。このプロジェクトを通して知ったことは「世界は不公平な場所である」と言うことだ。そして、見知らぬ写真家を信頼し、自らを語り、部屋を見せてくれた「この旅の真の英雄」に感謝する。


私は写真以上に、彼らの物語に心を動かされた。


そして、1200人の同世代と語り合ってきたことが詰まったこのプロジェクトを賞賛する。


『地球家族』以上の衝撃である。しかし、物語を読むと、その物語ほどのことはこの一枚の写真から読み取ることができないことに気づく。物語と写真を切り離して、「かるた」のように絵合わせを試みたとしても、ほとんど誰も正解することはないだろう。


四角く切り取られた部屋の真ん中で、天井に構えられたカメラを見上げて微笑む彼らは、一様に輝いている。美しいのだ、どのような「不公平な」物語がそこにあるとしても。


それに、彼らの寝室や衣類は均質化しているとも言える。ごくごく一部の伝統的な部屋、伝統的な衣装を除いて。


とはいえ、若者は美しい。そして、人類に未来はある。


若い世代に共感する暖かい心が湧き上がる。

そんな本だ。


そして、なんと、プロジェクトでは、世界のどこへでも同じShippingコストで本を届けてくれると言うのだ!

フランス語にも惹かれたが、無理せず、英語版にしました。ハードカバーで、可愛いギフトみたいだ。

http://myroomphotos.com/buy-the-english-version-of-the-book/


[PR]
by eric-blog | 2018-10-24 12:09 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

北方部隊の朝鮮人兵士 日本陸軍に動員された植民地の若者たち

北方部隊の朝鮮人兵士 日本陸軍に動員された植民地の若者たち

北原道子、現代企画室、2014

3202冊目


留守名簿なるものが軍隊にはあるらしい。部隊の留守家族に連絡するために作成された名簿。敗戦後、朝鮮人のみを抜きだいまとめたものには、厚生省によると14万人、韓国国家記録院によると16万人が登載されていると言う。(まえがきより)


この本はその名簿を資料として朝鮮人兵士たちの志願、徴兵、動員、軍隊内での差別、派兵、戦闘、犠牲、復員、帰還について描き出したものである。


また、給与や退職金の未払い金、残された供託金についても明らかにしている。


1949年の朝鮮人への債務総額が23700万円を超える。その内、陸軍海軍関係が6530万円であることが大蔵省の調べとしてGHQに報告書が出されている。59


2007年、「真相糾明委員会」による分析結果として、供託人数は94575名、金額は9178万円とされている。


日本政府は、軍人軍属に対する未払金があることを承知しながら、個々人に返却することはせず、1965年の日韓条約で無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力の形で処理した。61


さらには、軍隊での給料を預けていた郵便貯金についての未払いも訴える声が収録されている。125


郵貯については供託金の金額に反映されていない。


翻って日本人の軍人に対しては1953年以降、恩給が復活、支給され続けている。1954年恩給法改正。


金額 年額50兆円に及んでいる、と言う2010年の「全国空襲被害者連絡会」の情報から考えると、1953年から65年間で3250兆円が支払われたと考えられる。

https://www.zenkuren.com/aboutus_q3.html

「遺族に対しでも補償があり、普通恩給受給者の遺族へは年金型の普通扶助料が支給され、また、戦没者の遺族へは公務扶助料が支給されていますが、これについても軍の階級による差があり、毎年最低補償額1,966,800円から、平均300万~400万円位支給され、受給権は孫にまで及んでいます。

旧軍人の本人や遺族に対する援護や慰給支給額は、平成23年現在で総額約50兆円に及んでいます。」


平成28年度の支給金額

https://ameblo.jp/heiwatou/entry-12192097646.html


平成29年における受給者の状況

http://www.soumu.go.jp/main_content/000248542.pdf


恩給制度再開あたりの1950年代の諸課題についての論文

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/10-56/akazawa.pdf



[PR]
by eric-blog | 2018-10-24 09:33 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

いじめの直し方

いじめの直し方

内藤朝雄・荻上チキ、朝日新聞出版、2010

3201冊目


中間組織の全体主義を読み解いた内藤さんがこんな本を荻上チキさんと出していたなんて。レイアウトもわかりやすいHow To本。でありながら、哲学しっかり。


「治す」というのは人に問題があるとき、「直す」というのは仕組みに問題がある時だという。だから、いじめは直すのだ! これって、「障害」にも使えないか?


中間組織という「自分たちのオキテが通じる小さな世界」だと思って力を振るっている人たちに対して、「広い世界のルールを持ち込むこと」それがいじめの直し方だという。そりゃ、想像ついていたね。


いじめという「ニセ満足」

いじめをすることに信念やこだわりなんてない


人間関係が下手でも、事故が起こらないような環境づくりをする。


そうだ、そうだ、子供は完全じゃなくていいんだ!


いじめの言い訳がイイワケなかろ?

遊びだとか、いじめられる方にも原因があるとか。そんな理屈に惑わされない!


仲良くしなくていい。距離を置くことも大切。


いいね。



[PR]
by eric-blog | 2018-10-23 14:13 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

傷口から人生。-メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった- 

傷口から人生。-メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった- 

小野 美由紀、幻冬舎文庫、2015

3200冊目


中学の頃の教員に再会した時に、泣かれたと言う。「まだ生きていたか。教員生活40年で、一番心配した生徒だった」と。


母親に反発してリスカ、リスカだと痕がつくので、注射パリを刺して血液を抜き、バケツに貯めて、目につくようにおいておく。しかし、深夜に帰宅する母が見る前に、祖母が片付けてしまう。そんなことを繰り返し、その戦いが周りからどう見られているかなど、眼中になかった。


学校でもリスカのことが知られるようになり、学級会のようなもので検討されるに至る。「自分のことを大切にして欲しい」とか、「かわいそう」と言って泣き崩れる優等生の姿に、「人のこと、ほっとけ」「関係ねぇーだろ」と、何も響かない。そこに、「キモいんだよ、トイレでリスカなんかしている姿」と運動系の女生徒が発言。そうなのか、こんな自分でも人の中で生きているんだと言う実感が湧いた。


など、中学の頃についての描写が秀逸だ。今、中学生を生きている人が読んでわかるとは思わないけれど、あの祖父母を殺してしまった中学生やら、自分のことで一生懸命なんだなあと、愛おしくなること間違いない。


何か、特別なものになりたいのに、何かになりたいのに、自分ではありたくない。自分は認められない。認めてくれない周りにイライラしているだけなのに。周りと同じ価値観で自分を見ていたり、その枠にはまらないことにイラついたり。

大学生の頃にはスペイン巡礼の旅へ。

と、就職に敗れて旅に出るまでぐらいの葛藤を描いている。


旅とは何か。


捨てること。


スペイン巡礼の旅は、何も考えずに「黄色」の矢印に従って歩くのみ。何も考えない。体重の10分の位置の荷物を担いで、歩く。そんなディーテイルを描いたのが、『人生に疲れたらスペイン巡礼』

 

書くことが自分の中に溢れて、滴り落ちて文章になる。のではなく、自分の中にあるものを文章にする。


いま、『メゾン刻の湯』を楽しみながら読んでいる。多かれ少なかれ、若い刻って、こう言うもんだよね。人とむやみに関わって、関わらなくなって。しっかり居場所あるように思っていた彼女は、どこに行っちゃったんだろう? とか、交差点の通行量が多い時代だから。


旅は捨てること。


わたし自身、大学時代はサイクリング部に所属していた。中央アルプスや九州縦断などの自転車旅行にも出かけた。本当にミニマムな荷物と駅前でも夕食を食べれちゃうサバイバルなライフスタイル。結果身についたのが、生活のミニマリズム。いいのか悪いのか、TPOにとらわれない。シンプルイズベスト。


『メゾン刻の湯』よかった。「自分を教育することに失敗している僕が」みたいな表現が刺さるなあ。教育ってそういう風に捉えられているのね。

[PR]
by eric-blog | 2018-10-23 13:29 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

障害者雇用促進制度 不正水増し報告事件

障害者の雇用の促進等に関する法律


北区手話通訳者養成講座・基礎コース 昼間 14時から16

20181022日 月曜日 第20回にて勉強。


1960(昭和35) 身体障害者雇用促進法制定

1976(昭和51) 雇用率の明記と雇用の義務化。当初の法定雇用率は1.5%

1987(昭和62) 「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改正。対象範囲を、知的障害者や精神障害者を含む全ての障害者に。実雇用率を計算する際の対象に知的障害者を認める。

1998(平成19) 知的障害者についての雇用の義務化

2016(平成28) 事業主に、障害者に対する差別の禁止・合理的配慮を義務化。

2018(平成30) 精神障害者の雇用の義務化

法定雇用率は 企業2.0%、国や地方自治体2.3%、教育委員会2.2%

【参考】

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000178930.pdf


20184月からは民間企業2.2%、国や地方自治体2.5%、教育委員会2.4%


障害者雇用納付金制度とは、雇用率から算出される雇用義務数不足人数一人につき、月5万円を納付金として徴収し、障害者を多く雇用している事業主に人数一人につき調整金月27000円を支給する制度。その他に報奨金や助成金もある。


平成28年度の納付金収入は312億円、調整金・報奨金・助成金を合わせた支出は212億円(支出から事務費を除く)100億円ほど納付金からの収入が多くなっている。現在までの積み立て金額は172億円である。


現在、問題になっている国や地方自治体には納付金の制度は適用されない。


1981(昭和56)の国際障害者年から2006年障害者権利条約採択、2008年発行。日本でも2007年批准、国内法が整備され、201641日から「合理的配慮」を求めるなどの対策が進められている。


http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成256月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され、平成2841日から施行されました。



東京新聞 2018年10月23日 続報中
一面から
a0036168_13155791.jpg
a0036168_13160581.jpg
a0036168_13165187.jpg
8面
a0036168_13170957.jpg
a0036168_13173054.jpg




[PR]
by eric-blog | 2018-10-23 13:18 | ◇ブログ&プロフィール | Comments(0)