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ザ・レイプ・オブ・南京 第二次世界大戦の忘れられたホロコースト

ザ・レイプ・オブ・南京 第二次世界大戦の忘れられたホロコースト

アイリス・チャン、同時代社、2007、原著1997

2989冊目


 19371213日、国民政府の中国の首都、南京が日本軍の手に落ちた。

攻撃が始まったのは815日。4ヶ月の間に渡るばんこう、「レイプ」によって日本に対する厳しい見方が国際社会で固定した。ix


兵士の処刑と市民の殺戮、強姦は、あらゆる戦争法規に違反して発生した。


この本では、日本軍が入城した後、止まっていた宣教師やビジネスマンの証言、その他の一次資料に当たって、虐殺の事実を描き出している。しかし、何が日本の司令官と兵士たちをその残忍な行為に駆り立てたのだろうか?


この8月に、「なぜ、日本は焼き尽くされたのか?」と題するNHKドキュメンタリーがあった。そこでは、米国陸軍航空部隊の司令官であったアーノルドが、独立した空軍になるために、戦果を上げることに躍起となっていった事実。精密爆撃が命中率が低く功を奏さないために焼夷弾による絨毯攻撃に方針が変化して行ったこと。日本軍による無差別爆撃を非難していた米国が、どのように無差別爆撃に転換して行くかのプロセスが検証されていた。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2409266/index.html


日本が、あの攻撃を引き起こしたことは疑いない。


1937年に始まる中国大陸、その他のアジアの地域における日本軍の、敵側兵士のみならず民間人に対するまでの異常な残虐さはどこから来るのだろうか?


百人斬り競争が新聞に英雄譚として報道され、初年兵の訓練として捕虜を殺させた。そのことに国民全体が無批判であったのだ。


著者は言う。41-


「中国との避けられない戦争に備えて、日本は数十年をかけた、男子国民に戦闘訓練を施していた。青年を日本の軍隊に奉仕する型にはめる躾は、人生の早い時期に始まる。1930年代には、少年期の全てが軍国主義的な色彩に染められた。玩具店は兵器庫を思わせ、兵士、洗車、鉄かぶと、軍服・・・などのおもちゃが並べられ、戦争神社のような有様になった。・・・「爆弾三勇士」の・・・自爆攻撃の真似をして遊んだ。

日本の学校の機能はミニチュアの軍事部隊のようなものになった。実際に教師の一部は軍の将校であり、・・・彼らは、低学年の少年には木製の模型で銃の取り扱いを教え、高学年の少年には本物の銃で扱い方を教えた。教科書は軍国主義宣伝の道具になった。・・・また、教師たちは、中国本土に対する将来の侵略に心理的に備えるべく、少年たちの心に中国人碧憎悪と侮りを植え付けた。

日本の学校における軍国主義の根源は、歴史的には明治維新に遡る。19世紀に日本の文部大臣は、学校は学生の利益のためではなく、国家の利益のために運営されるのであると述べた。小学校の教師たちは軍隊の新兵のように訓練された。師範学校の学生は兵舎のような宿舎に入り、厳しい規律に縛られ詰め込み教育を受けた、1890年には教育勅語が発布された。これは軍人勅諭と同様の規範を民間人に適用したもので、権力に対する完全な服従と天皇に対する無条件の忠誠を至上の価値とするものだった。日本の学校では、天皇の肖像と一緒に教育勅語が祀られていて、毎朝、それが取り出され朗読された。・・・

 1930年代には日本の教育システムは組織化され、ロボット工場のようになった。・・・

学校の生徒が兵役につくと、権力への服従の圧力はさらに苛烈になった。悪意的ないじめと残酷な上下の順位づけにより、ほとんどの新兵の個人主義的な精神は残らず押しつぶされてしまう。服従が最大の徳目であると執拗に教化され、個人の自尊の感覚は大組織の小さな歯車としての自覚に置き換えられた。このような個人意識んら全体価値への昇華を実現するために、下士官や古参兵は、なんの理由もなく新兵を殴り、木製の棍棒で手酷く打ち据えた。

・・・

訓練は、大志を抱く士官に対しても、負けず劣らずに過酷なものだった。」44


1937年夏、日本は中国との戦争を引き起こすことに成功。


中島今朝吾

松井石根

柳川平助


127日、松井から朝香宮へ指揮権が移る。50


これが決定的な変更になった。


強姦、拷問(生き埋め、切断、火ぜめ、氷、犬)





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by eric-blog | 2017-12-31 14:16 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

今年の三冊

今年の三冊


24日の日曜日、いつもの「書く人 読む人」欄が「今年の三冊」特集だった。その中にわたしが読んだものは一冊もなかったことにショックを受けた。そして、挙げられている本の多くが「いま」のものではないことにも、気づいた。どこか回顧録であったり、まとめであったり、なのだ。旬感がない。今年の出版でなくてもいいだろう?


ふりかえって、では「わたしの三冊」を選ぼうということに、なった。ふりかえりの視点として主催研修のテーマとスキルで考えてみた。3つのテーマ、「国際理解」「環境」「人権」について、新しい発見や動きにつながる本はあっただろうか? スキル「わたし」「あなた」「みんな」についての新しいものはあっただろうか?


三本のスレッドにまとめよう。


■一の糸 「性暴力を裁く」

まだ読んでいないが詩織さんの性暴力被害の訴えは、2017年の人権課題の一つだろう。それに関連して山本潤さんの『13歳、「私」をなくした私』は、日本軍性奴隷の被害者たちについての理解も深めてくれるだろう。山本さんは国会で参考人としても証言している。

http://ericweblog.exblog.jp/23774147/


課題は「加害者」の鈍感さであることは、いじめ問題とも共通する。同窓会の思い出話でぶち当たる「え? そんなことあったっけ?」である。1993年、日本軍の営巣地に併設された慰安施設でほとんど奴隷状態で働かされた女性たちが声を上げ始めたとき、わたしはそのような施設を使ったかもしれない元日本軍の兵隊たちが、いったい何人ぐらい生き残っているだろうかと、1945年段階で20歳以上であった人々でその時存命であるはずの男性の人数を調べてみた。その頃で200万人から300万人という数であったように覚えている。証言の数の少なさに驚愕した。これはなんなのだ????


そして、最近になって、証言する男性たちが現れたし、またこんな証言も出てきている。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259585/index.html


その姿はルワンダの虐殺者が帰還してきた村の姿や

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/4231/2396590/index.html


1992年のセルビアで起こったこと、『Calling the Ghosts

https://www.youtube.com/watch?v=YFc0o0cVnwU


被害を受けた側は、怯えながら、記憶に苛まれながら生きるのに、加害の側は「戦争だったから」「俺だけじない」と嘯く。


何度も、何度も起こってきたことなのだ。


しかし、わたしはこの映画を見たときに、希望を感じた。たとえ、戦時性暴力の被害に合おうとも、その加害者に向かってわたしは「お前は戦後に裁かれことになるのだ」と言うことができると思ったからだ。それでわたしの名誉は守られる。


このように記憶されること、断罪されることが、再発防止の鍵なのだと思った。被抑圧者の3R's, 加害者が断罪されるわけではなくとも、わたしたちは被害者を記憶し、追悼し続けることはできる。remember, record, report


忘れないこと。記録すること。報告し共有すること。


■二の糸 「いまを作った運動をふりかえる」

東京新聞の「今年の三冊」にも感じたが、昔をふりかえるものが多かった。


障害者の運動についてのこの本も、今年出たものだ。

『差別されてる自覚はあるか 横田弘と青い芝の会「行動綱領」』

http://ericweblog.exblog.jp/23846594/


映画が良かった。

『大地の乱』『三里塚のイカロス』

http://ericweblog.exblog.jp/237829873/


あの熱はなんだったのだろうか。しかし、確かに、いまはあの熱があったから、あるのだと、思う。


■三の糸 これからを紡ぐ知恵の糸


過去に学びながら、自分たちが過去の悪魔的行為を繰り返さない知恵を生み出している本がある。


ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき

フィリップ・ジンバルドー、海と月社、2015

http://ericweblog.exblog.jp/237916625/


タイトルは悪魔的だが、しっかり悪魔にならないための対策まで考えられている。


そこに連なる実践本も何冊か紹介した。

ごく最近に紹介したデンマークの子育て法も含めて、ぜひ、読んでください。


◯「ユマニチュード」という革命 なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか


イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ、誠文堂新光社、2016

http://ericweblog.exblog.jp/238121088/


デンマークの親は子どもを褒めない 世界一しあわせなくにが実践する「折れない」子どもの育て方

ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー、イーベン・ディシング・サンダール、集英社、2017

Danish Way of Parenting, 2014

http://ericweblog.exblog.jp/238075076/

子どもにいちばん教えたいこと 将来を大きく変える理想の教育

レイフ・エスキス、草思社、2007

http://ericweblog.exblog.jp/238002747/


過去に責任はないが、今に連なる過去がなくなったわけではない。過去を記憶する義務がある。



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by eric-blog | 2017-12-29 15:02 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

Q&A 女性国際戦犯法廷 「慰安婦」制度をどう裁いたか

Q&A 女性国際戦犯法廷 「慰安婦」制度をどう裁いたか

VAWW-NETジャパン編、明石書店、2002

2988冊目


I 「法廷」の目的と仕組み

Q1 なぜ、50年以上も前の「慰安婦」制度を裁くことにしたのですか?

Q2 なぜ、裁判所や国際法廷ではなく民衆法廷なのですか?

Q3 女性に対する戦争犯罪、戦時性暴力がこれまでなぜ裁かれなかったのでしょうか?

Q4 「法廷」はどんな目的で開かれたのですか?

Q5 どういう人たちが「法廷」を主催したのですか?

Q6 「法廷」はどんなルールね、仕組みで開いたのでしょうか?

Q7 どういう人たちが裁判をやったのですか?


II 「法廷」の審理と判決

Q8 東京での「法廷」はどんな規模で、どんな日程で開かれたのですか?

Q9 どういう人々が被告人として起訴されたのですか?

Q10 被告日本政府は補償についてどのような主張をしているのですか?

Q11 適正手続気はどのように保障されて公正な裁判になったのですか?

Q12 被害女性たちは「法廷」で、どんな証言をしたのですか?

Q13 被害女性たちは戦後について、どんな証言をしたのですか?

Q14 「法廷」にどんな証拠を出したのですか?

Q15 ハーグでどんな判決が出たのですか?

Q16 昭和天皇はなぜ「有罪」になったのですか?

Q17 日本政府の国家責任について、何が指摘されたのですか?

Q18 判決にはジェンダーの視点がどのように貫かれているのでしょうか?


III 「法廷」の評価と課題

Q19 「法廷」の意義はどのように評価されているのですか?

Q20 証言や証拠など「法廷」記録をどう保存するのですか?

Q21 海外のメディアは「法廷」をどう報道したのですか?

Q22 日本のマスコミの「法廷」報道はどうだったのでスカ?

Q23 勧告を今後どう活かしたらよいのでしょうか?

Q24 勧告にある教育と教科書の問題に、どう取り組むのですか?

Q25 「法廷」の成果は未来に向けてどう生かせるのでしょうか?


「法廷」は2000128-12日、東京で開かれて、仮判決が出され、2001124日、オランダ・ハーグで最終判決が下された。28


性的奴隷制について「人道に対する罪」として

昭和天皇、東条英機、松井石根、畑俊六、寺内寿一、板垣征四郎、梅津美治郎、小林躋造、安藤利吉、9

フィリピン・マバニケの女性たちへの集団強姦について「人道に対する罪」として、

昭和天皇、山下奉文、2

その他、合計30名。


昭和天皇は「慰安婦」制度について、「知っていたか、または知るべきであった」

そのために、個人として上官としての刑事責任で有罪。52


日本軍は、戦時中、性奴隷制などの国際法違反行為を犯したことに対して、日本政府は賠償すべき。53


さらに、戦後も継続的違反行為を繰り返している。54

・終戦直後証拠となる文書を焼いた。

・国家の関与を否定し続けた。

・責任者の処罰を怠った。

・謝罪と損害賠償を怠った。

・国連特別報告者の報告に反対した。

・政府高官の暴言を放置した。

・「慰安婦」に民族差別的扱いをした。

・歴史教科書で未来の世代に伝えるなど再発防止に必要な手段を取らなかった。



■参考

00974"戦時・性暴力をどう裁くか

国連マクドゥーガル報告全訳""VAWW-NET Japan(バウネット ジャパン)編訳

松井やより、前田朗 解説"凱風社1998G5



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by eric-blog | 2017-12-29 14:57 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

備忘録: 慰安婦合意 再検証

2018年1月11日 東京新聞

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2018年1月10日 東京新聞
一面
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国際面
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2017年12月27日 東京新聞
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2017年12月28日 
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by eric-blog | 2017-12-29 14:16 | ◇ブログ&プロフィール | Comments(0)

チョコレートから世界が見える 人権を基盤にしたESD教材集

チョコレートから世界が見える 人権を基盤にしたESD教材集

ヒューライツ大阪、2008

2987冊目 ERIC蔵書番号02624


人権を基盤にしたアプローチ、Rights Based ApproachESD持続可能な開発のための教育の基本である。RBA


収録されている授業案、ワークショッププログラムは以下の通り。


  • チョコレートから世界が見える
  • ゴミに暮らす人々
  • 環境と人権をつなぐ
  • 遺伝子組換え作物からESDを考える
  • 食のグローバリゼーションかと遺伝子組換え作物
  • 持続可能な社会づくりとアイヌ民族の伝統文化に学ぶ
  • アイヌ民族: 歴史と現在(48ページの資料集収録)


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アイヌ民族資料目次







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by eric-blog | 2017-12-27 12:56 | Comments(0)

「ユマニチュード」という革命 なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか

「ユマニチュード」という革命 なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか

イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ、誠文堂新光社、2016

2986冊目


NHKのシリーズ医療革命の再放送で紹介されていて、図書館で検索して見ると、すでに昨年、翻訳が出ているではないか!


しかもこちらは2014年の報道番組。

https://www.youtube.com/watch?v=C4j_BCKDzrQ


番組で紹介していたユマニチュード(ヒューマンアティチュードのフランス語か?)のポイントは四つだ。


1. 見る しっかり視野に入る

2. 触れる 本人の力を支えるように

3. 話す 実況中継のように、なにをしているか、なにをしようとしているか

4. 寝たきりにしない


友人夫婦が24日に95歳の義母さんと同居を始めた。クリスマスの飾り付けをし、ケーキを準備し、楽しい雰囲気で、暖かく迎える姿をみて、まだまだこれから一緒に楽しめることがいっぱいあるよねと思った。


子どもが生まれたら、あれもして、これもしてと思うのに、高齢者だと負担のように思うのはなぜだろうか?


あとがきに、著者は「フランスはノーの国」だと言う。今の高齢者ケアにノー、医療制度にノー、社会の排除にノーを言って来た結果として、ユマニチュードが生まれたと言う。


日本は「イエス」の国だ。ノーの国で生まれたユマニチュードが、双方の国の良いところを取り込んで伸びて行けばいいと。


ユマニチュードはあらゆるポジティブな関係を築く上での、技術的な解決と哲学的な解明をもたらす。6


ケアを通じて「あなたはここにいます」「あなたは大切な存在です」「あなの存在を誰も否定することはできません」と伝えるのです。


相手と同じ価値を持っていること。相手を認めること、相手から認められること


高齢になると失うもの。

ペットを飼えない、プライバシーを尊重されない、お酒は禁止、寝る時間が決まっている、夜は出かけられない、デートできない。


ほんの少し、支えが欲しいだけなのに、制約ばかりが増えて、本当に生きたい生活の質は拒否されてしまいます。それが「高齢になると失うもの」です。90


人間として尊重されること。人権。


ユマニチュード 四つの柱

見る、話す、触れる、立つ


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それを尊重した上で人間関係をつくるための5つのステップ。231


1. 出会いの準備

2. ケアの準備

3. 知覚の連結

4. 感情の固定

5. 再会の約束

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ケアする人とであれ、私たちはなぜ人と会うのか?

「あなたといい時間を過ごすため」「あなたに会いに来た」236


そこから入ること。あなたの身体を洗いに来たのではない。


「あなたのことがとても好きだ」


無意識に行う無償の行動。それを思い出す。その基本をケアの時も心がける。







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by eric-blog | 2017-12-27 11:36 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

シベリア抑留者たちの戦後 冷戦下の世論と運動 1945-56年

シベリア抑留者たちの戦後 冷戦下の世論と運動 1945-56

富田武、人文書院、2013

2985冊目


シベリア抑留者と言えば、手記。研究は少ないのだと、著者は言う。


中帰連と同じく、ソ連の抑留者も受けた政治教育によって、帰国後「アカ」と見られ、戦後の復興期に湧く日本社会においては「忘れたい戦争体験を持ち込む」他者として疎まれたと言う。1 はじめに より


研究の第一歩が長澤淑夫『シベリア抑留と戦後日本--帰還者たちの闘い』2011年。随分と遅いね。全国抑留者補償協議会の運動中心。


批判的に読むべきものとして長勢了治『シベリア抑留全史』


抑留者群像には

高杉一郎『極光のかげに』、内村剛介『生き急ぐ スターリン獄の日本人』。


三年前から研究を始めたと言うから2010年。著者、1945年生まれである。


政治によって翻弄された戦後、学生運動などを通しての直接体験もあるであろう著者による研究は、固有名詞は多いものの、どこかドラマチックさがない。研究者としての距離の取り方のせいなのかなあ。


中帰連に中国抑留の人々が全て代表されているとは思わないが、ソ連抑留者の多様なその後は対照的だ。




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by eric-blog | 2017-12-26 14:06 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

女たちの21世紀 no.92, 2017年12月号「特集 教育への国家介入がもたらすものとは何か」

女たちの21世紀 no.92, 201712月号「特集 教育への国家介入がもたらすものとは何か」

特定非営利活動法人アジア女性資料センター

2984冊目


「道徳教科化の背景とこれから」俵義文

小学校道徳教科書検定の問題点


2018年度から小学校、2019年度から中学校で実施。


全国教科書採択地区 583

東京書籍 138(23.7%)

日本文教出版 134(23.0%)

学研みらい 91(15.6%)

光村図書 83(14.2%)

光文書院 68(11.7%)

教育出版 34(5.8%)

廣済堂あかつき 18(3.1%)

学校図書 17(2.9%)


育鵬社が検定申請しなかったのは、教育出版の中心編著者がかぶるから。32


教育出版は内容は他の出版社と以下の点で異なる。

1. 「国旗・国歌」の扱いが大きい

2. 首相や市長の写真を必然性なく掲載

3. 戦前の修身と同じようなお辞儀、しつけ・礼儀の教材を多用

4. 松下幸之助、豊田喜一郎、石橋正二郎などを賞賛、企業宣伝にもなっている。


2006年の教育基本法の改定で「愛国心」国民の育成につながる道徳の必要性が入れられた。2014年、中教審が「特別の科目 道徳」を教科に。


他の教科と異なり、道徳はその背景となる学問がないために、学問的な議論ができない。


各社ともに文科省が作成した『わたしたちの道徳』を準用したものになっている。


もう一つ面白いと思った論文は「育児論に見る右派のイデオロギー」能川元一

日本会議本が2016年から17年にかけて10数冊も出たのに、育児論についての言及がない。著者は右派シンクタンクの小坂実氏や田下昌明氏に焦点を当てて検討している。


三歳児神話に利するような形で北欧の在宅育児支援策を取り上げたり、ボウルビィによる1951年の本に依拠して3歳までを母親が見るべきと言う論考を繰り返したり。


フェミニズムが少子化を招いているとか、伝統的子育てが憲法24条によって否定されたとか。


軍事的武装解除が強制されたのが9条だとすれば、精神的武装解除を強制したのが24条であるというのが彼らの言い分。26


「少子化に対する危機意識を煽る言説によって女性の権利がスケープゴートにされることは避けなければならない。」


明快である。






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by eric-blog | 2017-12-26 13:17 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

小水力発電が地域を救う 日本を明るくする広大なフロンティア

小水力発電が地域を救う 日本を明るくする広大なフロンティア

中島大、東洋経済新報社、2018

2983冊目


こちらの本と合わせて読むのがベスト!

『水力発電が日本を救う 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』

竹林公太郎、東洋経済新報社、2016

http://ericweblog.exblog.jp/237919908/


日本に一年間に降る雨や雪の位置エネルギーを、全て水力発電で電力に変換されると、7176kWhになると試算されている。98


小水力発電(出力1000kW以下)で開発できるのは全国数千箇所、合計100kW程度と、著者は試算している。年間発電量で言えば50kWh程度。日本全体の電力消費量の1%


資源エネルギー庁の数字を見てみよう。


平成299月の電力需要は803kWh

新電力は85kWh,11%程度。

http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/results.html


2016年度の速報値はこちら。

http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_023.pdf

  • 発電電力量は1506kWh。発電電力量の構成は、再エネが15.3%(前年度比0.8%p) 原子力が1.7%(0.8%p)、火力が83.0%(1.6%p)

部門別消費内訳は運輸23%、家庭14%、企業・事業所63%

1990年から比べたら、「農林水産鉱建設業」は消費エネルギーが半減、2005年から比べても3割近く減少している。全体に占める割合は2.8%でしかない。


農山村にとっては、エネルギー自給は大きな意味を持ちそうだ。


しかも、「成熟経済の時代に、求められるのは多様な人材。」


「山の暮らしで育った人たちが増えることは、必ず私たちの社会に安定感を生んでくれます。」20


そして、小水力発電を開発し、山間地の地域社会を継続させることは、様々なタイプの人が生きられる多様性に富んだ寛容な社会につながると。


こういう意見を読むと、実はちょっと暗澹たる思いがする。どれだけの山暮らしの知恵をわたしたちは失ったことかと。ま、でも、遅すぎることはないか。

Better Late than Never.

いつでも、ここから、これから。なりたい未来を創ること。


なりたい未来のジクソーパズルのワンピースに、小水力がある。300ピースくらいのパズルかな?


山暮らしの知恵だけではない。小水力発電には、地元の建設会社が不可欠なのだ。いま、公共工事、道路建設などで生き延びている悪名高き、とわたしなどは思っているのだが、竹村さんも指摘するように、これからの日本は新規建設よりも「メインテナンス」なのである。道路と水路の両方のメインテナンスに、小水力はぴったりのアイテムなのだ。


実は、明治時代、日本各地に水力発電所ができたのだ。まだまだ石炭が高価であったため、水力発電と送電網の整備が産業革命を担っていた。それはアメリカに遅れること5-10年であったという。 150


これはすごい。


特に村落電化に力を発揮したのが小水力だった。


ヨーロッパでは戦後も生き延びた村営発電所。日本では全国を九つの電力会社で区分けするなどの流れの中で、やめるように指導があったという。159


誰だ、そんな指導をしたのは?


それから60年。著者が進めてきた「分散型エネルギー」による地域づくりが、やっと始まったというべきか。


なんだかなあ。1980年代に、すでに気づいても良かったのに。なぜ、舵をきれなかったのかなあ。


残念ではある。が、その間にも、小水力の事例は増えてきている。それで元気になった地域もある。そういう事例、サクセスストーリーも紹介されている。


また、実務の面にも第6章が割かれている。手頃なハンドブックだ。


小水力は地元の会社も村落も含めた人材ネットワークが続かないと続かない。

だから「地域を元気にする」のだ。


しかし、竹村さん、そして中島さんが「救う」とタイトルをつけていることをリスペクトして言うならば、


小水力は自ら助けるものを助ける。そういう天からの贈り物なのだ。


■加藤純子さんによる書評

https://brevis.exblog.jp/27138212/



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by eric-blog | 2017-12-26 11:56 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い

デボラ・リップシュタット、ハーバーBooks2017

原著 Denial Holocaust History on Trial, 2005

2982冊目


ホロコーストの真実 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ

http://ericweblog.exblog.jp/237923490/


この本の中で、デヴィッド・アーヴィングを「ホロコースト否定者」と虚偽によって断じたおかげで名誉を毀損され、経済的にも大きな損害を受け取ったと、著者と出版社であるペンギン・ブックスがイギリスの法廷で訴えられた。


その経緯をまとめたのがこちらの出版物。これが出るというので映画化が進められたという経緯。


映画についてのまとめはこちら。とてもいい映画であったが、原著もその面白さに負けないほどの面白さ。ぜひ、読んでほしい。

http://ericweblog.exblog.jp/238062452/


1995年、アーヴィングからペンギンブックスに告訴の通告があったと、著者に速達での連絡があった。米国の名誉毀損裁判では原告に被告の名誉毀損の事実を立証する責任があるため、この訴訟を無視するつもりでいた彼女に、イギリスの法律では逆だということが告げられる。


被告の側が、名誉毀損ではないことを証明する必要がある。


さらに、イギリスの裁判では公判における「後出しジャンケン」スタイルは認められていないため、双方ともに相手方が裁判所に提出する資料を全て閲覧することができる。

また、事務弁護士と法廷弁護士の役割分担もある。

陪審員制か単独裁判官方式かを選ぶことができる、など、裁判の準備段階から多くの戦術が駆使されていく。



弁護を引き受けたのはアンソニー・ジュリアス。ダイアナ妃の離婚訴訟を引き受けた弁護士として有名だ。

法廷弁護士はリチャード・ランプソン。


アンソニーは無償で引き受けると申し出たが、資料の調査や専門家への依頼などで、160万ドルもの裁判費用が必要だと。


ユダヤ人社会、そして出版社、その他の協力で裁判費用の資金集めは進む。


実際の裁判が始まったのは2000111日、判決の言い渡しは411日。


この本は、その間の詳しい報道である。


映画の印象とネット上で紹介されている写真や本における記述は、特にディヴィッド・アーヴィングについて、異なる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/デイヴィッド・アーヴィング


映画ではどちらかというと小柄で、懐疑的な人柄の印象が強い。


2001年、アーヴィングは新しい資料があると上訴。公聴会が開かれる。ここでもリップシュタット側の勝利。裁判は終わった。


しかし、反ユダヤ主義、ホロコースト否定論者との戦いは終わったわけではないと、著者は気持ちを引き締める。


その他の違いは、強制収容所の周りを歩こうと言ったのは現地を案内したロベルト・ヤンからの提案で、ランプソンの発案ではないこと。


まだ読んでいる最中。


Denial 否定 というタイトルが、『否定と肯定』になっているのもトーンダウン?


まだ読んでいる最中。


20171228日 読了


ずっと引っかかっている日本語のタイトル。『否定と肯定』。内容にはどこにも肯定すべきものはない。アーヴィング氏が否定しようとして居るユダヤ人大量虐殺の事実を「肯定」するかのように聞こえる。しかし、実際は、アーヴィング氏の否定の根拠を否定し続けて居るだけなのだ。


「証人たち」と複数形で表現して居るが、実際にはその類の証言をして居る人は一人だけであるとか。

前後の文脈には虐殺の根拠がたくさんあるのに、1つだけそこに疑問を投げかけるものだけを取り出すとか。

ヒトラーは命じていない、とか、知らなかったとかのあたりは、どこぞの首相の意向とその「忖度」に近いものがあるのかとも思ったが、やはりそれも切り取り方の問題であるとか。

ドレスデンに対する連合国軍側の空襲による犠牲者、ソ連による虐殺などを持ち出すことによって、ユダヤ人虐殺の相対化と規模の矮小化。

ドイツ軍による証拠隠滅のための破壊によって立証できない部分を持ち出す。(この辺りは「日本軍性奴隷」問題にも共通するなあ。)



そもそも、と被告側(アーヴィング氏に訴えられたリップシュタット氏のこと)の証人の一人、歴史学者のエヴァンズ氏は、この裁判をきっかけにアーヴィング氏の出版物の論旨とその根拠となる出典に当たった。700ページにも及ぶレポートを作成。ここまで劣悪な言説を歴史書としてアーヴィング氏が出版できていたことに驚くと言う。


映画では、アーヴィング氏を擁護するかのように「ここまで仔細にチェックされて、耐えられるだけのものを書けていると自信を持って言える人は少ないのではないか」と言う発言をする著述家が紹介されていた。


しかし、ポイントは、それらのすべての誤謬が意図的に1つの方向に向けられていることだと、被告側弁護団は立証していく。


ホロコースト否定論者であると言うリップシュタット氏の言説は、虚偽ではないことが立証されていく。


そして、411日。判決文の朗読は2時間に及んだ。

p.491-496にその詳細が書かれている。ここを読むだけで、アーヴィング氏の論拠の何が誤りであるかが明確だろう。


そして、この裁判の間、記者たちからコメントを求められ続けたアーヴィング氏は、性差別主義者であること、人種差別主義者であることも、あらわにし続けたのだ。


弁護団の方針によって証言台に立つことも、記者たちにコメントを発表することも禁じられた5年間を、この雄弁な女性がどのように耐え忍んだか、があの大女優の見せ所であったんだろうなあ。映画もとてもよかった。


■あとがき

アラン・ダーシュウィッツさんのあとがきが読めます。すごいね。


https://books.google.co.jp/books?id=LGs_DwAAQBAJ&pg=PT302&lpg=PT302&dq=否定と肯定%E3%80%80あとがき&source=bl&ots=Pi8QxXhApU&sig=XitT_wOkX6oaOawaGzm4gkFaSpM&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwilsPy7zavYAhVDJ5QKHZYBBR8Q6AEIOjAD#v=onepage&q=否定と肯定%E3%80%80あとがき&f=false


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by eric-blog | 2017-12-25 11:50 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)