272-1(1170)生物と無生物のあいだ
福岡伸一、講談社現代新書、2008 分子生物学は20世紀後半に長足の進歩を遂げた。生物のミクロな世界に入っていくと、そこには生物の定義である「自己複製する」非生物的存在があった。ウィルスだ! 結晶体のような形をし、無機的なウィルスを、著者は自己複製以外ではまったく生物らしからぬウィルスを、生物とは認めない。 では、どう定義するのか?生物学の歴史の探求が始まる。 自己複製は当初タンパク質によるものだと考えられていたため、核酸説につながる結果を出し続けたエイブリーは厳しい反論に会う。 しかし、ATCGの四種の核酸が情報キャリアとなって、タンパク質のデザインを決定する。しかもAとT、CとGが対となり螺旋構造の長い紐を作っている。そのことがわかって、時代は一挙にゲノムの解読、遺伝子工学へ。 理科の実験で、わたしも納豆菌のDNAを取り出した。手順通りにやる作業を「実験」というならばだが。 生物も原子から作られており、原子の物理的な法則に従う。ではなぜ生物が生物を構成する原子に対して、こんなに大きくなければならないか? シュレーディンガーは問い、そして、原子の物理的な、ランダムさに影響されないために、物理的制約を超えるために必要な質量なのだと仮説する。 物理的現象は平衡状態、エントロピー最大の状態に向かう。しかし、生物は通常の無生物的な反応系がエントロピー最大の状態になるのよりもずっと長い時間、熱力学的平衡状態にはまり込んでしまうことがない。148 秩序を維持し、秩序を作り出す能力を生命は持っている。 タンパク質は取り込まれ、動的に均衡を保ちつつ、生物を流れて行く。 わたしたちのからだのすべての部分が壊され作り変えられるが、全体から見れば、一部でしかないため、全体性は揺るがない。あたかも、ジグソーパズルのワンピースが周りのピースによって、揺らぐことなく決定されるように。 さて、いよいよお話は、著者自身の研究へと進む。「死んだ鳥」症候群の日本社会を選ぶか、グラント中心主義のアメリカに止まるか、それとも「天才マリス」のごとき自由を生きるか?研究者であるというのは、かくも厳しい選択であるとき、まともな研究が進んでいくことそのものが生命の奇跡だ! 著者は遺伝子操作によって、ある特定の形質が「ノックアウト」壊されたマウスを受精させた。 果たして、どのような症状が出るかと固唾を飲むが、マウスはいたって健康だ!条件統制をして、普通のマウスになった、というのでは研究発表にならぬからとて、どれほどの同類実験が行われているかはわからない、らしい。しかし、自分たちだけでもないことは確かだと。 遺伝子操作を超えてまで、生きるということは、相互補完的な調整作用が柔軟に働いているからだ。 生物の中には、不可逆的な時間の流れがあり、さまざまな反応と応答と調整の結果としての動的均衡を生きている。 生物とは?というまとめを著者は避けつつ、稿を置く。 生物というのは、原子で構成されながらも、物理的法則を超え、越えながらも、物理的法則をうまく取り込んでいる存在のようだ。無生物の宇宙に秩序をもたらしているもの、それが生物だ。 生物とは物理的法則以外の秩序で構成されているものだとして、その秩序はなぜ、どこから? そもそも分子生物学という自然科学の世界すら、こんなにも人間くさいんだものね( ̄∀ ̄) ▲
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| 2008-09-29 17:56
| ■週5プロジェクト08
271-1(1169)高齢者の孤独 25人の高齢者が孤独について語る
ビアギト・マスン&ピーダ・オーレスン編、新評論、2008 いい本だ! これまでに「悲しみと喪失」シリーズの本を10冊も送り出してきた編者らが書き手を募るのにもっとも苦労したという本。 1917年1931年1925年1928年1947年1921年1921年1944年1932年1922年1928年1938年1931年1934年1929年1939年1937年1945年1931年1934年1938年1947年1921年1933年1937年 デンマークの出版物だ。ヤコブセンつながりで、いま、デンマークをキーワードに、本を読んでいる。 ここしばらく、ログハウスのことや大学が始まったりなどで忙しく、週5プロジェクトも滞りがちだった。ということはつまり、朝目が覚めたら本の世界に入るという時間なしで一日が始まるということ。それがあまりにも自分自身にとって大きな違いを生み出すことに気づいて驚いた。 本という別の時空間に身をおいてから自分の生活を始めるということは、自分の生活時空間が、どこかでリセットされることなのだ。最近のマイ流行語で言うと「inhibition待ったをかける」ような効果がある。それはコミックではだめだ。その世界に入りいる必要があるのが本なのだ。 しみじみと、入り込んだ世界だった。 家族とはいい関係の部分でつき合って、介護などの大変な部分は他人でいい。と割り切っているデンマークの高齢者。連れ愛を亡くし、子どもに先立たれ、定年退職後には関係も細って行く中で、「個人」として生まれ、人生を生ききるのが使命なのだと考える人々が、どのように孤独と向き合って行くか。 家族に囲まれ、介護され、「おばあちゃん」扱いされることが幸せと考える日本とは違う個の尊厳の姿がそこにある。 「個」を選んだ人々がそれでも求めるのが友愛訪問なのだと、孤独な高齢者を守る基金EGV基金代表は「はじめに」で言う。 福祉の制度がどれほど整おうとも、システムが人を助けるのではない。人と人とのふれあいが、人を助けるのだと、思える本である。 「ほらあ、デンマークみたいに福祉が進んでも人は孤独なんだから、日本の家族中心主義がいいのよ」なんて読み方をする人もいたりする? 表面的には、いろいろな趣味や会合に参加して、関わりを作るということが、孤独を紛らわせる手だてではあるようだが、技術的には同じでも、見通し的には行為の意味が違うのかもしれないなあ。 耳を傾けること リスベト・ノアダム作 私の話を聞いてほしいとお願いすると あなたは私に助言しようとする それは私が求めていることではない 私の話を聞いてほしいとお願いすると あなたは尋ねる そんな気持ちになったっていいではないかと それは、私の気持ちを踏みつけること 私の話を聞いてほしいとお願いすると 悩みを解決するために あなたは何かしなければ、と考える あなたは私を誤解している 変に聞こえるかもしれないが 祈りが素晴らしいのはきっと 神が寡黙で助言しないから 何かを解決しようとしないから 神は耳を傾け信じる あなた自身が解決する、と だから、私の話を聞いて---私が言うことを聞いて 私に話したいと思うなら 少しだけ待って あなたの番になるまで 約束するわ 後でしっかりあなたの話を聞くと ****** 自助のための援助 実存的孤独と社会的孤独 ▲
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| 2008-09-27 12:22
| ■週5プロジェクト08
どろ亀さんの「林分施業法」六原則
1 天然林は、各林分が極盛相の直前に速く達するよう誘導し、かつ、このステージで回転させる。途中相の森林は、このステージに向かって施業する。 2 天然林の取り扱いは、その生態系を強度に、かつ広く破壊することを、できるだけ避けなければならない。 皆伐はササとの戦いにつながる。 3 天然林は無数の異なる林分で構成されているから、画一的でなく林分の構造およびその動きに応じて、総合機能がより発展するよう適切な作業が行われなければならない。 4 天然林は、最高の総合機能を持つ高多層林に誘導すべきである。とくに陽光を最初に受ける最上相の林木を、量的、質的生産性の高いものへと導く。 5 遺伝的に悪い木は淘汰し、優れた木は保存し、より発展させる。 6 地力を維持し、諸害に抵抗力の高い健康林(針広混交多層林)の造成を目標とする。 林分を仕分けして、択伐・補植・皆伐の3つに分け、百年単位の時間経過を踏まえた施業案を作り、作業を行うのである。 残す木を定義づけるなら「樹齢や大きさに関係なく、良い遺伝子を持っていて、やがて森林の量的生産と価値生長に役立つ木」 選木は森林の価値を高めるもの。 富良野演習林の見学に行きたい! ▲
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| 2008-09-22 18:06
| □研修プログラム
270-2(1168) 樹海 夢、森に降りつむ
高橋延清、世界文化社、1999 1914年岩手県沢内村生まれ。東京大学富良野演習林23000ヘクタールを林分施業法によって天然更新させる森づくりに取り組んだ人。 定年後は静かに森で暮らすつもりが、日本の林業、自然環境の課題が彼を引退から阻んだ。 どろ亀さんの名で親しまれ、詩を書き、森の物語を伝え続けた。 表題となった詩は演習林を襲った風害の嘆きと確かな再生を歌ったもの。 PLTのアクティビティの参考資料にぜひ紹介したい詩だ。 ▲
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| 2008-09-21 17:59
| ■週5プロジェクト08
270-1(1167) ヤコブセンの家
桜日記 岡村恭子、プチグラパブリッシング、2005 1989年にアルネ・ヤコブセンが設計建築した住宅を入手、保存建築物の認定も受けて住んでいるご家族の物語。購入した時ですでに築50年 場所はデンマーク、コペンハーゲン。空港と旧市街地の間という便利な立地。 200平方メートル以上もある邸宅だ。 そもそもヤコブセンとは新国立美術館つながり。アボリジニアート展を逃したものの、美術館そのものにも行ってみたいと思っていたところ、デンマークのアーティスト・デザイナーについてセミナーがあるという。 早速申込み。 講師はマイケル・シェリダン。丁寧にウィリアム・モリスのARTS & CRAFTS運動、自然の素材を伝統的な技で活かす、からアールヌーボー、フランク・フロイド・ライト、バウハウスなどをたどりながら、工業の新興とあいまって、コンクリート、合板など新素材の特性を生かしたデザインが出てくる。 講師の話はヤコブセンの代表作の一つであるSASロイヤルコペンハーゲンホテルの支配人がヤコブセンのデザインが大嫌いだった!ことを中心にたくさんのスライドで展開。 ホテルのすべてをデザインしたという。 ドロップチェア、ポッドチェア、ジラーフ、スワン、など、シャープな曲線で自然の造形が写されている。 いまホテルはリニューアルされ、606号室だけが保存されている。 もう一つの代表作であるエッグチェアは今年誕生50周年。タル・アールとのコラボ特別エッグチェアが10月に日本でも見られる。 ヤコブセンの作品写真集を探したのだが、見つかったのがこの本だけだったという話。 デンマークの学校教育や社会についてのお話が面白い。「バリバリ日本人」は日本で暮らすつもりはないようだ。 ▲
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| 2008-09-21 09:04
| ■週5プロジェクト08
268-2(1165)孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再生
ロバート・パットナム、柏書房、2006 Part 2 市民参加をもっともよくしている世代は1910年から1940年までに生まれた「長期市民世代」という集団である。310 この世代が、米国の社会関係資本の中核をなしていたのだが、その退場によって、社会関係資本の弱体化が顕著になってきたのが、最近の課題なのである。 何が市民参加を殺したのか、その総括、第15章最後で、まとめられている。 時間と金銭面からのプレッシャー 1割 郊外化、通勤、スプロール1割 電子的娯楽、特にテレビによる余暇時間の私事化2.5割 世代的変化5割 テレビ世代と長期市民世代は重なり合っているので、まだ説明がつかない要因が2-3割をしめている。 この長期市民世代がどのように形成されたのかという歴史背景について、顕著なのが「米国民意識」と「戦争」であったという。日本の明治時代から昭和に似ているね。 もちろん、社会関係資本が強固である場合の「暗黒面」も描き出されている。排他主義、非寛容など。 それらをふまえて、Social Capitalist の課題 第24章で著者は以下のような点について、わたしたちが考えるべきことをあげている。 2010年までに社会参加が祖父母の年代と同じレベルに匹敵するようになる方法。 2010年までに労働者が家族やコミュニティへのやさしさを取り戻す方法。 2010年までに通勤時間を減らし、近隣とのつながりにより多くの時間が費やせるようになる方法。さりげない社交が促進されるコミュニティのデザインと公共空間の利用。 2010年までに、一つ以上の意義ある精神的コミュニティにさらに深くかかわるように、また他に対する寛容を身につける。 2010年までに、ひとりぼっちの余暇時間を減らす。 2010年までに、コミュニティにおける公共生活に参加することが確保される方法。 ▲
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| 2008-09-19 09:35
| ■週5プロジェクト08
記録が13ページもあるので、プログラムの流れとファシリテーターのふりかえりだけ、共有します。
次回の対立から学ぼうが楽しみです。 ********ESD fc at ERIC 人権教育ファシリテーター育成講座************* 2008年9月13-14日 二日間で人権三部作を活用して指導者育成の課題を共有する講座。 参加者 10名 プログラムの流れ セッション1 共通基盤づくり 10:00-12:00 セッション2 アクティビティ実践 13:00-15:00 人権教育ファシリテーター・ハンドブック基本編より セッション3 「気づきから行動へ」のアクティビティについてのふりかえりと評価 15:00-17:00 セッション4 指導者育成の課題 10:00-12:00 セッション5 指導者育成のプログラム検討 13:00-15:00 いっしょに! 人権 二部作より セッション6 ふりかえりとまとめ 15:00-17:00 【ファシリテーターのふりかえり】 ○ 人権教育の構造と持続可能な社会のための教育との関連が、自分自身にとっても見えてきた。参加によって人間の社会と人間と自然の関係を取り戻したいというのが、わたしの目標とするとところなのだと思う。「人間的に関わらないでも動く・回る社会」ではなく、「わたしが動かさなければ動かないもの・貢献」を一人ひとりが実感すること。 ○ ヘーゼル・ヘンダーソンの言う「二段重ねのケーキ」の「アイシング」の甘い汁に引きつけられやすいのが「幼い脳」なのだと思ったのだが、参加者はいつもこちらの意図からはみ出す、はみ出すおもしろさ。 ○ 「自分の経験から考える」というのは正しく参加型学習の理論的背景の一つである構成主義的な考え方だ。とってつけたような知識をなぜありがたがって丸覚えしようとするのは、なぜなのだろうか。そして、構成主義的アプローチに対する自信がこんなにも欠如しているのは、なぜ、なのだろうか? ○ 力の分有が、課題だね。 **** 見通し的省察とは価値観や信念でもあるが、成長を見ることができることであり、つまりは「幼い脳」から次の「相対主義」的価値観を経て、普遍主義的な価値観の共有に至る道筋を見ること、だね。 ▲
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| 2008-09-18 10:15
| □研修プログラム
わたしも参加した自主講座のまとめをいただいたので、共有します。
図表はやっぱりだめなのですね。きれいに作ってくれた「対立の連想図」載せられませんでした。 ************************ ワークの記録とふりかえり 2008.9.10 拓大自主講座 SK記録作成 活動1. 色紙を使って、対立のイメージを共有する。対立からイメージする色を選ぶ。 ・赤~テンションが高い。緊迫。 ・黄~妥協できるところもある感じ。 ・ シルバーレッド~赤よりもギラギラ。血をイメージ。 ・黒~白黒はっきりしている。いろんな色が混ざって濁った感じ。 ・金~お金や光りもののイメージで人が取り合いそう。 宝物(対立によって得られるものがあるから?) ・ 銀~金はBESTでそれ以上はないが、銀はBETTERでまだ改善できる余地がある感じ。 活動2. ブレーンストーミングで、対立の様々な側面に気づく。ウェビング ・ *ウェビングから、「ネガティブなものが多い」という気づきがでたが、ポジティブなものがそれ以上広がらなかった。こんな場合、意図的に出るように問い続ける方がいいのか。 活動3.対立のロールプレイを実践して、解決法を知る。 二人組になって、夫婦で休日の過ごし方を話し合う。「外出したい妻と家でのんびりしたい夫」 何を望んでいるか 妻 いつも料理しているので、つくりたくない。 せっかく晴れているから出かけたい。 昼間で寝ていていいから、午後散歩しよう。 「子どもが・・・」 じゃ、私が働く。 何を望んでいるか 夫 たまには料理を作りたい。 家を楽しみたい。てんやもんを取る。 たまの休みは家で過ごしたい。夜は家で飲もう。 昼間で寝たい。疲れてる。 休みたいので、近場の公園へ行く。アルコールも飲める。 ほっといてほしい。 「子どものためなら・・・」近所へ。 食べさせてやってるからオレの言うとおりにして。 真のニーズは? *対立点は、外に出たい妻とうちにいたい夫。真のニーズは、二人ともいっしょに過ごしたいというところに持っていきたかった。(DEARの時はそうだった)が、思惑通りに 流れなかった。そういう場合もあるか、ということで終わらせようとしてしまったが、角田さんの指摘で「ここから何が学べるか」考えることになった。 こうなると、ゆさぶるファシリテーターの力量が必要だと感じた。言葉に隠れた本音を引き出すとか、みんなに気づいてもらう問いかけとか。そこで、沈黙続いたらどうしよう、決裂したらどうしようと不安になる。ねばり強く進めていく度胸が要りそうです。 *その後、「休日の捉え方によっても過ごし方がかわってくる」 「外に出る、というニュアンスの捉え方が違う」 「専業主婦か仕事を持っているかによってかわる」 などの視点が挙がった。 *価値観の違い「連休は出かけなきゃ、と気が重い」 *仕事に対しての情熱だけではずっと働けない。家族というしばりも必要。 *「対立はめんどくさいから妥協する」 *「多少のロスなら妥協できる」 *「対立とウィンウィンはどう違うのか」 *「めんどくささを乗り越えても価値があるか」→「越えて得られるものがあるから対立する」 *夫婦の真のニーズは一致しなかったけれど、価値観の違いや何気ない言葉からイメージするものの違いなどが歴然としていたりして、おもしろかった。 *最初のねらいとは、流れが変わってしまっても、何らかの学びになる余地があることに気づいた。 *ゆさぶり→人間関係をよくしたい *論点を持つ。何を発見したいか、学びたいか。 *敢えて極論を出さないと討論にならない。よかったですね~だけでは、学びはない。 後日の角田さんのアドバイス 対立のロールプレイから「要望」と「本当に満たされたいこと」に気付いて行く流れで、夫婦でも、一致点が見出だせないということになったのは面白かったです。 そこを追及したのは発見につながりましたね。 (対立にならない理由) ○めんどくさい ○よく思われたい ○関係を悪くしたくない ○エネルギーの浪費 対立を避けることで得られるもの、得られないものの分析をすれば良かったですね。 *対立を避けることで得られるもの・・・・けんかによる時間とエネルギーを消耗しなくてすむ・ 要望が通った方の満足感、などが出たかも? *対立を避けることで得られないもの・・・・ 要望が通らなかった方の満足感は得られない。 対等な夫婦関係・気持ちを言い合える夫婦関係は得られない。 二人が満足できる第三の選択肢の発見を得るチャンスを逃す。 などが出たかも? ・ファシリテーターが対立の例をロールプレイする予定だったが省略。 *やむにやまれぬ対立の場面で、互いに知恵を出し、ウィンウィンになるようなロールプレイをしてみたかった。しかし、そのような場面設定がなかなか思いつかず断念。 妥協しながらでないと、先に進まない日常の方が多い。対立ばかりでは闘うためにエネルギーを消耗してしまう。でも、対立をチャンスとして何かを生み出す力に変えられたらいいなと思う。 破壊的な対立ではなく、創造的な対立をしてみたい。 ▲
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| 2008-09-18 09:59
| ▲ファシリテーターの課題
269-1(1166)赤いコートの女 東京女性ホームレス物語
宮下忠子、明石書店、2008 波さんは、知的障害を持つにも関わらず、必要な保護をずっと受けることができないできた。そのハンディのままに世間に翻弄されてきた。40年の過去の中で、さまざまな男性関係、人間関係に不信感を植え付けられている。 ハルさんは、30年間にわたる農家の嫁としての家族関係、地域関係、夫婦関係に疲れ果て、上野に逃げてきた。交通事故の後遺症で歩行不自由な身だ。 著者は、1975年に東京都城北福祉センターで医療相談員として働き始めた。20年の勤続の後、退職して同じ領域で今度はボランティアとして関わり出した。職員としてはできなかったこと、職員としてすべきだと思いながら実現できなかったことを実践していくために。 著者は、波さんやハルさんと、行政、そして家族や身近な人々との橋渡しをしていく。じっくりと話しを聞き、共に考えるスタイルだ。急がない。でも忘れない。 それぞれの物語は波瀾万丈でおもしろい。しかし、なんといっても驚かされるのは、1937年生まれの著者が、彼女たちとの絆を「何をするにも行動し闘いとっていくしかない世代だった。・・・私たちの世代は、偏見や差別に対して実に敏感に反応して世直しに挑む世代ではないかと感じる。」ところに見ているのだ。 どんな障害をもっていても、どんな過去を持っていても、人間的に行きていくことを保障するためには、自立と回復への確かなプログラム、それを実現する福祉のネットワーク、そして地域社会のケア力である。 闘い疲れて、誰にも相談できずに、刹那的な選択をしたことが、かえって自分の本当に満たされたいことをあぶり出す。そこから「堕ちて行く」ままにするのではなく、しっかりと道を探ることで、見えてくる自立の道もある。 いま、女たちの生きづらさは変わったのだろうか。「がまん・忍従」しているのだと、思っているうちに、何をがまんし、忍従しているのかすら、わからなくなり、混乱する。そして爆発する。 「待った」をかける、「手当たり次第の選択肢」に思いをいたす。 そんなテクニークが、まだまだ女性には必要だなと思った本だった。 ▲
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| 2008-09-13 09:01
| ■週5プロジェクト08
TEST08 with NIEDは四回目になるという。
例年、年度末から年度始めにかけて行う「教育力向上講座」だが、今回の名古屋はミッドターム編。年度の半ばに「ふりかえり」を行うことで見えてくることから省察力を考え、実現力につなげようという「見通し」だ。 セッション1共通基盤づくり1000-1200 初めに、半年をふりかえり、傾聴による自己紹介につなげて行く。 その活動をグループで「ふりかえる」ことで、テーマである「ふりかえり」「省察」についての共通理解を持つことを行った。 ふりかえりの視点は「どのようにふりかえったか」[技術的省察]「何のためにふりかえったか」[実践的省察]「何につなげようとふりかえったか」[見通し的省察あるいは批判的省察] 技術は驚くほどたくさん出た。何のためにかという項目は少なくなるが、目的に合わせた方法を選んでいること、選んだ方がいいことが確認された。 見通しとなると三項目ほどにまとまっていく。教育における見通し的省察・批判的省察と言っても、極言すれば「成長」を見ることに尽きるはずだ。そこにネクストステップが考えられているか、プロセス・ファシリテーターとして、ビジョンがあり、手立てがあるのかに尽きる。 次にここまでの作業形態をふりかえり、二日間の学び方について「話し合いのルールづくり」を行った。一人作業、ペア作業、グループ作業、全体共有などがあったのだが、それぞれの作業形態の良かった点、意義をふりかえることで、どのような学びの方法と質が望ましいかを考える。そこから「話し合いのルール」をペアで考えた。全体共有・板書。 このあたりですでに11時半。共通基盤として、ここまでで、つまり参加の募集の段階から参加決定、関連事項の事前学習あるいは期待として膨らんだ事柄などで、出て来たキーワードで「共有」しておきたいことを考えた。 出された項目を板書。四つから五つを選んでグループで一緒に考え、発表して全体共有することに。実現力、ファシリテーターとコーディネーター、テクノロジー、参加と協力、などが出た中から「仲間探し」でグループづくり セッション2自己のテクノロジー 1300-1500 人生の河でふりかえり。自分の価値観がどのように形成されたかを「省察」する。 「わたしはわたしでいいのだよ」という自信や安心はどこでどのように形成されたかを「人生の河」に書き込む。グループで年表にまとめる。 セッション3 関係性のテクノロジー 1500-1700 自己のテクノロジーだと思っていたものが、じつは「関係性」を育てたり、優先することを求めるものである場合が多い。この作業をするとたいていはそのことに気付く。 良かったと思えること、残念だったこと、「いま」という時点からの後付けだ。 しかし、そこから、いまの自分が求めるものが見えてくる。何になぜ囚われてきたか、はっきり、見えてくる。 アレクサンダー・テクニークが言うところの「inhibition待った」をかける。「means whereby手当たり次第の手段」の検討ができるようになる。選択肢が見える。選ぶ自由が自覚できる。自分の普段の、そして不断の選択傾向が自覚できる。 もう二日目は共に考えたい課題について、グループをダイナミックに換えながら、「人の頭で考える」トルネード状態。地上からの情報を次々と吸い上げ、新しい視点やインプットを求めて、軸足そのものも動かしながら、脳みそが解け合い、情報内容と思考スピードや思考技術を公倍数化する共同思考の高みへ。そこから見えるものは、自分一人で考えていたのでは得られないものだ。 そして、地表に戻ったとき、破壊された場所での再建が始まる。ビジョンを持って取り組むのか、それとも過去の再建に急ぐのか。 セッション4 社会性のテクノロジー 1000-1200 前日の自己のテクノロジーをふりかえり、できていること、課題を洗い出す。実現したいことを阻むのは何かで「オープンマーケット方式」仲間探し。 そこから課題解決の「プロジェクトづくり」 セッション5 課題の共有 1300-1500 新しい視点の提供を「地球の食卓」で行う。 「教室の中の世界」「つながり探し」「配分の正義」「いまの世界は・・・」「地球の食卓から見えてくるもの」 いまの世界は ○バナナ化 ○パッケージ化 ○規格化 ○大量生産大量輸送しやすい食べ物ばっかり化 ○地元の新鮮なものはない化などが見えて来たかな。 セッション6 市民参加の課題と行動計画 1500-1700 「孤独なボウリング」の傾向を受けて、参加を促進することそのものが「社会関係資本」の充実につながり、人間の社会のQOLを向上させることだということを再確認。 今回の研修で気付いたことは、「人の頭で考える」のは、ワークショップの中だけではいことだ。「かくたさんだったら、どうするかな?」とかって思うことも「人の頭で考える」ことに近い。 きっと、大阪のメンバーも名古屋のメンバーも、一年間、「みんなの頭で考える」ことをしてきたのだ。教育とは何かという課題について。情報収集をしてきたのだ。実践を通して。 TESTの場は、正しく「省察の場」であることを、みんなが期待を持ってやってきたことが、ワークショップの質をあげたのだ。 ありがとう!(^o^)/ あたまがとう!(o^-')b# 10人以上の頭で今週末も考えるぞう└|∵|┐♪┌|∵|┘ ▲
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| 2008-09-11 07:40
| □研修プログラム
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ERICからのお知らせ
2018年度ERIC主催研修
ESDファシリテーターズ・カレッジ □テーマ編 ■「国際理解」2018 年(平成 30年)6月 23-24 日 ■「環境」 2018年(平成 30 年)7 月 28-29 日 ■「人権」 2018 年(平成 30 年)9 月 29-30 日 □スキル編 ■「わたし」2018 年(平成 30 年)10 月 27-28 日 ■「あなた」 2018 年(平成 30 年)11 月 17-18 日 ■「みんな」 2019 年(平成 31 年)1 月 26-27 日 □ TEST教育力向上講座 ■ 2019年(平成31年)3月下旬予定 ==問い合わせ== eric@eric-net.org メルマガ登録 http://www.mag2.com/m/0000004947.html 検索
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