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カテゴリ:□週5プロジェクト2019( 112 )

サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う

サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う

鈴木智彦、小学館、2018

3399冊目


ヤクザ専門誌ってなんだ?!

『実話時代』、20199月に休刊となったこの雑誌の編集長もしていたという。1966年生まれで、ヤクザ、暴力団関係の記事を多数書いてきたという。原発については、『ヤクザと原発 福島第一潜入記』で原発労働者として潜入取材。今回も、築地市場に就職、実態を調べたという。


シラスの密漁、アワビ、ナマコ、カニなど、もちろん利ざやの大きい高級魚の密漁がすごい。


そして、魚河岸はヤクザの身内だという。漁業自体が、実は博奕のようなものだ。加えて市場というのはブローカーが活躍する場所だからだ。その相乗効果で魚河岸はヤクザ的。047


密漁はヤクザの資金源なのだ。


消費者のニーズがある限り、密漁品は売られる。


岩手、宮城などの東日本大震災被災地では、海上保安庁や警察も密漁の監視に力を入れている。しかし、「現行犯」で挙げなければ、積荷を捨てられる、しらばっくれられるなど、逮捕に至らない。内偵のために「泳がす」間にもごっそり密漁は続く。など、悔しい思いをしているという。025


ルールを守っている漁業者はやりきれない。その思いを知るだけに、監視は力を入れている。


しかし、すべての灯りを消して行われる密漁の現場を抑えるのは、難しい。


北海道ではソ連のスパイとして働く代わりに安全を保障してもらう「レポ船」など、海は国外にも繋がっている。


行方不明者も出る。


日本の漁業は不正の上に成り立ってきたと。315


漁獲高が右肩下がり、高齢化も進む。このままでは日本の漁業は死ぬ。


産地偽装、名前の呼び替え、なんでもござれだ。


場当たり的に獲れるだけ獲る。そんな戦後の姿から始まって、今は、競など成り立たない底値で取引というケースもあるという。あまりにも全てが乱れすぎていて、どうすればいいかわからないのが現状だと、著者はいう。


「オリンピックでは持続可能で環境に配慮した魚を提供しなくてはならない。・・・海のエコラベル・・・国際基準は到底クリアできないので、水産庁の外郭団体に審査を担当させ、大幅に基準を甘くした。

せっかくの機会である。日本の漁業に暴力団と密漁が蔓延っている現状も知ってもらえばいい。」317


YAKUZAはもうそのままで外国人に通じる。


いまだに、水産庁は後からやってきて網かけるだけだと、漁業者は言う。本質的な水産業の体質改善に取り組んできていないことのツケが、積もってきたということだろう。


国連海洋法に抵抗し、国際捕鯨条約から脱退し、水産品の国際基準を甘くする。


「遠洋漁業」と称して他国の沿岸近くまで船を出してかっさらっていたから、海洋法の議論になった。しかし、沿岸国に囲い込むだけでは十分な資源保護につながらなかったことから、クロマグロなどの回遊魚の国際管理が進んだ。サケマスの流し網漁は禁止になった。公海流網も、だ。


排他的経済水域の総面積、世界第8位の日本。世界三大漁場の一つ、北西太平洋に恵まれた日本。


なぜ、そんな海洋国家であるのに、リーダーシップを取れないのか。

そんな思いをグリーンピース時代には感じていた。


しかし、この本を読んで原因の一端が見えた気がする。ヤクザを怖がっていては、規制はザルにならざるを得ない。そして、そんな「お目こぼし」は規範意識を切り崩していく。今の日本は、規範意識が崩壊し続けてきた結果なのだ。


うなぎが絶滅しようが、漁業資源が枯渇しようが、どうしようが、気にもかけない消費者にも、責任はあるはずだ。


世界のEEZランキング。wikiより


アメリカ合衆国の旗 アメリカ11,351,0002,193,52621,814,306

フランスの旗 フランス11,035,000389,42211,655,724

オーストラリアの旗 オーストラリア8,505,3482,194,00816,197,464

ロシアの旗 ロシア7,566,6733,817,84324,664,915

イギリスの旗 イギリス6,805,586722,8917,048,486

インドネシアの旗 インドネシア6,159,0322,039,3818,063,601

カナダの旗 カナダ5,599,0772,644,79515,607,077

日本の旗 日本4,479,388454,9764,857,318

ニュージーランドの旗 ニュージーランド4,083,744277,6104,352,424

中華人民共和国の旗 中国3,879,666831,34013,520,487

チリの旗 チリ3,681,989252,9474,431,381

ブラジルの旗 ブラジル



by eric-blog | 2019-09-22 13:00 | □週5プロジェクト2019

大統領の疑惑 米大統領選を揺るがせたメディア界一大スキャンダルの真実

大統領の疑惑 米大統領選を揺るがせたメディア界一大スキャンダルの真実

TRUTH The press, the President, and the Privilege of Power

メアリー・メイプス、キノブックス、2016、原著2005

3398冊目

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映画『ニュースの真相』の元本。実話。映画でも実名で出ている。このスキャンダル以降、著者はテレビの仕事をしていない。


インターネットで右翼の攻撃にさらされ、ニュースの価値をすり替えられ、失業に追い込まれた最初のケースではないだろうか?

「インターネットはニュースの性質を変えたが、もっと影響が大きかったのは互いをどう扱うかの変化だ。2004年にオンラインで攻撃された時には衝撃を受けたが、今ではそれが普通のことになっている。失敗や湿原を取り上げて人を破滅させるのは、国際的なスポーツ観戦になった。」17


「主要報道機関がブログの批判にしてやられた、というのがにわかには信じがたかった。攻撃の獰猛さに驚いた。CBSに、私たちを守る準備がなかったことにも恐怖を感じていた。」37


「私たちに攻撃を仕掛けてきた人たちは根拠には興味がなかった。あるとした襲撃全体の背後にある根拠だけで、それは党派政治だった。」37


「メディアはCBSをニュースにした」37


どう考えても、ネットもメディアも筋違いだ。ブッシュ大統領の経歴詐称を問題にしたニュースについて、その経歴詐称問題を掘り深める方向には論議は向かわなかった。なぜか?


「一時は権威を誇っていたCBSニュースがブログに屈すると、次に誰がターゲットになってもおかしくなく、主要メディアは以前より非難を受けやすくなった。政治に関するブログにはほとんど制約というものもなければ、発信されるまえの妥当性の確認といったものもない。」57


「極右ブロガーの集団批判には、公平であろうとするふりさえなければ、ストーリーを別の角度から見ようとする気配もなかった。あったのはほとんど殺人的な怒りで、ひたすら盲目的に自分たちの主張を貫き通し、邪魔するもの、同意しないもの、立ち止まって考えるものは全て破壊していった。」57


著者は前年に「アルグレイブ刑務所」の問題を告発する番組で、賞を取っている。


ジョージ W. ブッシュがヴェトナム戦争への派兵を逃れるために州兵に応募したこと、そして、コネでその地位を得たことは、テキサスでは、その時代、公然の秘密だったと、著者は言う。71、第4


知事選ではうわさはとどろきとなった。


1994年に知事、98年の再選を通した知事時代に特筆すべきことがあるとすれば、それは極刑の扱いだと言う。72

知事在任中、ブッシュは150もの死刑を承認している。

「死刑囚は一様に貧しかった。」73


州兵航空隊。1968年、ヴェトナム戦争のさなか。兵役を逃れられずに死んでいった若者はたくさんいる。


映画で取り上げられた印象的な部分は、本編では、ごく短い。兵役逃れの証拠となる文書提供者を明かさざるを得なくなったメアリー。結果、追求された情報提供者ビル・バーケットは、メアリーに行ったのとは異なる物語を暴露したのだ。ダンが、ビル・バーケットにインタビューする場面だ。なぜそんな嘘をついたのかと追及する。

ビルは体の調子が悪い。妻のニッキーはそのことで爆発する。「嘘を言ったとペコペコさせて」「ビルが悪いと話をまとめたい」「いなかもののバカな女だと思っているんでしょう。あなたはご立派で賢いかもしれない。でも、私は約束は守るし、自分の身を守るために他人を破滅させるようなことはしない。人を破滅させて侮辱しておいて、それからその人を気遣うようなふりなんかしない。」294

『壁の向こうの住人』に書かれた60年代から溝が生まれていると言う観察に合致する物語だ。南部の人たちはどこか北部に馬鹿にされているように感じている。


1990年代からずっと、バックラッシュは続いている。既存の価値観や既得権に挑戦したものは全て、「バックラッシュ」の攻撃に会い続けている。

女性問題しかり、人種差別しかり、慰安婦問題しかり、ハラスメントしかり。

それは、前に進もうとする人たちと止まろうとする人たちの間の軋轢のように思う。


普遍的な価値としての人権、普遍的な価値としての正義、公正さの実現は、既得権を損なうし、人を揺るがせる。揺るがせられたくない人たち。安定した地平に立っていると信じたい人々は、それが恐怖なのだろう。だから、ともに前に進もうと言っているだけなのに、それを攻撃と受け取るのだ。前とは変化であり、変化は、否定だからだ。


ともに、すすみたいのだが、それが難しい。


昨日、2019920日、グレタさんが呼びかけた国際的な気候変動へのマーチ。渋谷の国連大学前から表参道、渋谷駅前とマーチした。シュプレヒコールは「気候正義」Climate Justice, Now。だ。


いつ生まれたのか。すごい表現だ。正義を! 永遠に掲げ、問いかけ、考え、協議することが可能な目標である。若い人たち中心だったが、高校生は渋谷の群衆には少なかった。代わりに小さな子どものいる家族が目立った。


すでに1970年代からずっと叫び続けている環境問題。


バックラッシュにいじめられ続けたイシューたち。変わりたくないと言う力は強い。簡単に変わってしまう方向と、変わらない方向と。不思議だ。



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Mind Bombという、危機感に火をつける戦術を取ってきたグリーンピース。過激さは過激さを助長する。必要なのは産官民のあらゆる主体の関わりと、あらゆる機会、あらゆる世代の教育による意識づけだ。


そして、ブッシュ大統領は、ブラジルサミットの時に、現地には来ないで、ビデオメッセージで「アメリカ流のライフスタイルを変えることはない」と発言した張本人なのだ。


そして、今、トランプ大統領に「エコ」という語彙はないように思う。



by eric-blog | 2019-09-21 11:37 | □週5プロジェクト2019

プラスチックスープの海 北太平洋巨大ごみベルトは警告する

プラスチックスープの海 北太平洋巨大ごみベルトは警告する

チャールズ・モア、NHK出版、2012

3397冊目


アルガリータとは「アルガ」藻という単語の縮小語だと思って、アルガリータ海洋調査財団を1994年に設立。実は縮小語はアルギータ。そのことを専門家に指摘され、船の名前はアルギータ号とした。

https://algalita.org


2014年11月に続く2回目の紹介だ。最近、やっと国際的な動きが始まった。

https://ericweblog.exblog.jp/20397674/


プラスチックによる海洋汚染問題は、今に始まったことではない。ペットボトルが導入されるとき、日消連などは大きな反対運動をした。流し網問題でも、何十キロにも渡って無線ブイをつけただけで海に漂流させる流し網が、回収されないまま「幽霊網」となって海洋を漂い続け、「漁」を続ける問題が指摘されていた。


アメリカなどで使われていた「六缶パック」のプラスチックヨークは、海鳥の首を絞めたり、ウミガメの成長を妨げたりしている。


また、プラスチック製品の原材料であるペレットがタンカーに積み込まれ、罪降ろされたあと、その倉庫を洗浄する時、残留物が港に流れるがままにされることの問題は、JEANの活動から明らかになり、改善が計られた。


JEANによる河岸、海岸清掃活動は、1990年に始まっている。

http://www.jean.jp


プラスチック汚染は化学物質汚染でもある。そして、その汚染は海洋だけでなく、陸上の食物連鎖にも入り込んでいる。


プラスチック臭の強い製品に、シャワーカーテンなどのビニール製品がある。カナダの研究者によると、28日以上にわたって、108種の揮発性有機成分とフタル酸エステルを発生させ続けたのだ! 251


つまり、プラスチックは「目に見える汚染」問題から「目に見えない汚染」有毒物質の問題でもあることのトータルの問題として、この本には描かれている。


もちろん、化学物質の汚染問題については、合成洗剤、塩ビ問題、PCB、発がん性物質の問題が1970年代に、オゾンホール問題を引き起こした「夢の化学物質」フロン禁止が1980年代に、シックハウス症候群が1990年代に、防汚剤のTBTが貝類などの生殖異常に繋がることから禁止になったのが2001年など、リストは続く。


それぞれの問題について市民運動からの問題提起がなされてきている。しかし、それらは「単一課題」に焦点を絞ったものに見える。


また、問題提起があるたびに、規制したり、代替品が開発されたり、「応急処置」的な対応が行われ、根本的な問題提起にはなって来なかった。


グリーンピースですら、「塩素のない未来」とまでしかビジョンを打ち出していなかった。


今回の問題提起がこれまでの運動と異なっている点は、迷うことなく「プラスチック全廃」を訴えているところだろう。(繰り返すが、これまでだって、それが課題だということはわかっていたが)


使い捨て生活が「発見」されたのが1950年代。著者はそれを195581日だという。雑誌「ライフ」に「使い捨て生活  色々な使い捨て家庭用品で掃除の手間にさようなら」という記事が載った日だ。98


リサイクルもリユースも難しいプラスチック。すでに大量に漏れ出し、環境にたまっているプラスチック。


財団の仲間たちが、五つの高気圧帯渦流のごみベルトの調査を進めている。

https://www.5gyres.org

10の主要なプラスチック汚染。

https://www.5gyres.org/plastic-pollution-facts

そして、プラスチック・フリーの買い物ガイド。

https://www.5gyres.org/plastic-free-shopping-guide


鍵を握るのは消費者だと、著者は言う。

財団が力を入れているのは若い世代の教育だ。

「複雑さを抱きしめ、大きな挑戦を続けよう」

"Embrace the complexity and take up the challenge."


さてはて、熱し易く冷め易い、そして忘れっぽい消費者、マーケティングに踊らされやすい消費者は、今回、どれほど長く「プラスチック問題」への取り組みを求め続けることができるだろうか?


2012年に盛り上がった消費者教育は、今、どうしているのだろうか?

https://ericweblog.exblog.jp/14468762/


グローバルねっと2019年9月号より

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by eric-blog | 2019-09-20 13:48 | □週5プロジェクト2019

「ホットケーキの神さまたち」に学ぶ ビジネスで成功する10のヒント

「ホットケーキの神さまたち」に学ぶ ビジネスで成功する10のヒント

遠藤功、東洋経済新報社、2019

3396冊目


もう、これは、ホットケーキの聖地を訪ね歩くしかないだろう。赤羽、大山、神田、湯島。5キロ圏内に「名店」として紹介されている店がずらり。


一度だけ、銀座に出かける用事があるときに、そのときは銀座一丁目の三階にあった「雪の下」に行ったことがある。ラッキーにも待つことなく入店。窓のカウンター席に座って、あの分厚いホットケーキをいただいた。


しかし、今回、この本で紹介されているのはそんな「ニューカマー」ではない、オーソドックスな喫茶店、珈琲店のホットケーキが多いのだ。


平井や錦糸町など、下町とは言え、人気エリアではないところで、長く続けている人気の店をピックアップしているのだ。


中には、ジリ貧だった経営を立て直すのにホットケーキのレシピを見直して、人気の商品になり、喫茶店としても経営を軌道に乗せることができた東梅田のサンシャインのような店も紹介されているが、老舗であれば、創業当時からというのが大方だ。


著者自身が子供の頃、交通博物館の帰りに楽しみにしていたという万惣。2012年に閉店し、そのショックで2013年から「絶滅危惧種」かもしれないホットケーキを食べ歩くようになったというから、万惣のホットケーキが基本、らしい。のれんわけではないが、店主の物語の中にも万惣が出てくることは多い。


なぜ、こんな31軒なのか。それはこの本が同時にビジネス書も目指しているからだ。ホットケーキのガイドブックかと思うようなPart1に加えて、Part2はガラリ、ビジネス書なのだ。これはすごい! 絶対、店に足を運んでしまう。味わってしまう。ホットケーキを、だけではない、商売の秘訣を。面白いなあ、楽しみだなあ。


学ぶべき10のヒントは次のようなラインアッブ。

1. ありふれたものにチャンス

2. 差別化は価値の複合化から。安くて品質も良く、デザインもおしゃれ・・・・

3. シンプルなものでもイノベーション、イノベーションは偶然のセレンディピティから

4. 真の差別化には試行錯誤が不可欠

5. お客様の声は神の声


と、これぐらい紹介して、消化したら、もうビジネス書は食い飽きる。そこへ、Part1のホットケーキである。この無限のループがたまらない。


都営三田線沿いには、湯島の「みじんこ」、春日の「自家焙煎 珈琲庵」、神保町の「TAM TAM」、ずっと降ってJR蒲田の「シビタス」、北へ行って、赤羽の「フルーツパーラー プチモンド」あたりは、行こうではないか。


さらに、朝7時からやっているという東梅田の「サンシャイン」に至っては、夜行バスの路線を捻じ曲げてでも、そこへ行くぞ。


ということで、ガイドブック、ビジネス書、リアル体験の三位一体で楽しめる、この本はすごい! って、今の立地ならでは、でもありますが。


では、行ってきマーース。ふふふふ、どこだと思う?

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とってもお洒落な店構えの珈琲店で、久しぶりに極上のコーヒーを飲みながら、図書館で借りた本を読む。

時間をかけて焼いたホットケーキが出てきたとき、お隣さんたちがシロップのお代わりをついでに頼んでいた。


ナイフを入れると表面にじんわりと汁が染み出すしっとりさ。


しかし、わかった。ホットケーキは、この著者もなんども書いているように「懐かしい」ものなのだ。著者は「ホットケーキの神様」と書いているが、今、紹介されているホットケーキの神様たち全員が「懐かしい」ものになれるとは思えない。


ホットケーキも、やはり、消費される流行のスィーツという側面を免れていないと思う。


一方で、ホットケーキ・モデルとは、身近な、あるいは、著者が交通博物館に行ったときに寄ったように、わたしであれば、堺東の高島屋へ行ったときに、たまさか食べさせてもらえる程度の行きつけの、通いの店なのだ。だから、各駅停車の駅前でも人足が途絶えない。カフェ激戦区でも生き残ることができる。通行人ばかりで、全てのチェーン店が撤退するような祖師ヶ谷大蔵でも、続けられる。


それは、「通い」の店になるからだ。遠くの店に食べ歩きに行くようなものではない。そこまでの華は、ホットケーキにはない。誠実な仕事をしている店しか生き残ることはできない。しかし、流行りすたりに乗るような華はなくてもいいのだ。定番を続けること。


著者のようなライターが食べ歩くのはいい。そして、その情報によって、これからの私の懐かしい味に出会えれば、幸いだろう。しかし、そこには、あの高島屋のフードカウンターで、目の前で焼いてくれたホットケーキは、ないのだ。


そのことが、二軒の食べ歩きでわかった。


ついでに言えば、ベーキングソーダの少しむせるような味のホットケーキが好きかも。自分で焼けや!?





by eric-blog | 2019-09-19 14:56 | □週5プロジェクト2019

手話・言語・コミュニケーション No.3-No.7

手話・言語・コミュニケーション No.3-No.7

日本手話研究所、文理閣、2016-2019

3395冊目


Start Line の今村さん。(No.7)

https://www.studioaya.com/startline


ある人生 わが家の系譜(1)-(3) 浅井ひとみさん、(No.4-6)


いずれも、苦しみながら成長してきた姿が生々しい。


「職場でのコミュニケーション課題」小出新一さん(No.4)

障害者枠で雇用されたろう者の二つのパターン、配慮が必要であることを伝えて、職種やコミュニケーションの課題を共有した人、補聴器があれば健聴者と変わらないと言った人。後者は職場で孤立し、やめたケースもあるという。51


「幼少児の人工内耳と感性的なコミュニケーション 子どもの心と言葉を育むために」黒田生子さん(No.4)

言葉ではなくても、人工内耳のおかげで得られる「音の世界」が感性、感動と、それを家族と共有できる喜びをもたらす。「気持ちが通じ合う関係」へ。91

サウンドスケープ 93


「音」も、「音声言語」もない世界と「音」のない世界は違う。


身振りから音声言語へという連載を読んでいると、人間の不思議さにクラクラする。すごいね、コミュニケーション! 


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by eric-blog | 2019-09-19 14:16 | □週5プロジェクト2019

施設・里親家庭で暮らす子どもとはじめる クリエイティブなライフストーリーワーク

施設・里親家庭で暮らす子どもとはじめる クリエイティブなライフストーリーワーク

ケイティー・レンチ、レズリー・ネイラー、福村出版、2015、原著2012

3394冊目


Life Story Work with Children Who are Foster or Adopted

原著名は「里親に引き取られたか、養子縁組された子どもたちとのライフストーリーワーク」からも、英国と日本の「家庭的養護」の実態の違いが見えるか。



ライフストーリーワークは、トラウマを受けた子どもたちが過酷な過去に折り合いをつけ回復への道を歩むことを始めるために極めて有用な支援の方法 8


ワークのプロセスが子どもにとっては大事。しかし、ワーカーは成果に責任を持つ。子どもに読んでもらうためにはブックが面白くも魅力がなければならない。カラー写真やクリップアート、イメージ画像など。15


また、多くのワークはすでに実践されているものなので、目新しいワークを紹介するものではないと、ただ、それらを構造的に整理することで、ニーズに応じたワークを選び出すことがやりやすいようになっているのが特徴だと。日本では、こんな事例が紹介されている。(日本では記録の保存は25歳まで、なんだ)

https://www.sankei.com/west/news/140504/wst1405040061-n1.html




1章は、そんなワーカーのための基礎の確認です。

・十分な時間

・スーパーバイザーからのサポート

・子どもの発達にトラウマが及ぼす影響についての十分な知識

など。


第2章は子どもの安心感を築くための手法の紹介です。

・「ワークの同意書」

・安全な場所

・安心の手

・イニシャル

・体の輪郭-力と回復力 

・体の輪郭-初期の危険信号

・リラクゼーションのワーク 「風船」「ろうそく」「斧」、マッサージなど


3章 エモーショナル・リテラシー

自分の感情体験を言語的に表現することの難しさ。アートセラピーの有効性。

・気分のボード

・感情ジェスチャー

・盾(VVの「紋章」のような)

・体の描写

・心配の木

・感情のバッグ


4章 レジリエンスと自尊感情

・自分についてのコラージュ

・気が晴れる方法

・子どものヒーローを見つける

・誇りに思うものは何?

・私と同じ/私と違う 四つのコーナー「同じ」「違い「少し同じ」「わからない」

・スターのドア


5章 アイデンティティ

黒人と少数民族の子どもたちのアイデンティティのニーズに特に注意が必要。

・手形と足形のワーク

・人生の表/人生のマップのワーク

・家族を描くワーク

・ジオラマ風の表現をする

・島をデザインするワーク

・子ども向けジェノグラム/ファミリー・ツリー(家系図)のワーク


6章 情報の共有と統合

過去がどのようなものであっても、子どもはその時期を生き抜いてきた。若者はすでに生き抜くためのスキルを持ち合わせているということを証明している。98

ジュディス・ハーマン「心的外傷と回復」

「自責の念は、早期幼児期の通常の思考形態と一致します。それは自己というものをすべての出来事の参照点とみなすもの。(103)

・人生の表

・三つの親のゲーム 「生みの親」「育ての親」「法的な親」

・移動カレンダー

・比喩的なストーリー キリンの里親に育てられるサルのきょうだい

・強い壁を建てる

・秘密のシール


7章 未来を見つめて

・ウェルカムマット

・願いごと

・引越し

・ヒーリングコラージュ

・未来の自己像を描く

・キャンドル子どもが愛情を持っている人々のシンボルとしてのキャンドル、火を吹き消して、火が消えても、心の中に愛情が繋がっていることを感じる

・愛情のこもったケーキ というバージョンもある。


補章には、訳者、徳永祥子さんから英国と日本の現状についての解説。

・ソーシャルワーカーの専門性が高い(イギリス)

・ケース担当数が一桁から10数ケース程度(イギリス)

・子どもの記録を100年間保管。社会的養護を離れたケアリーヴァーがアクセスできるように。(イギリス)

措置期間だけでなく、生涯にわたる支援として整備される必要がある。将来、本人が見たときにどう感じるか。149


大阪市立阿武山学園、国立武蔵野学院などに彼らの日本での実践例があるのだろうか?



by eric-blog | 2019-09-15 13:52 | □週5プロジェクト2019

壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

A.R.ホックシールド、岩波書店、2018、原著2016

Strangers in Their Own Land, Anger and Mourning on the American Right

3393冊目


感情労働という概念を1983年に出版した『管理する心』で提示したフェミニスト社会学者。1960年代からすでに「アメリカの分断」に気づき、プロジェクトを温めてきた。共和党支持が強固なルイジアナ州南西部に2011年から2016年の五年間通い、保守派中間層・労働者層の白人男女40人にインタビュー。

彼らの人生の物語「ディープストーリー」を見つける。

まじめに働きさえすれば、いつかは自分もアメリカンドリームを叶えられると信じ、辛抱強く列に並んで待っていたのに、現実はそうではなかった。産業のグローバル化、自動化が進んで働き口がへり、勤めていても給料は横ばい。そこへ、次々と列の前に割り込む者が現れた・・・・370訳者あとがきより


青い州と赤い州。インテリの民主党支持のフェミニストたちに、聖書を信じている南部人は無知で時代遅れで、教養のない貧しい白人ばかりだ、みんな負け犬だって、ばかにされているように感じている。35


カリフォルニア大学の名誉教授である著者が話を聞こうとすると受け入れてくれた彼らは、心温かい人たちなのだ。


しかし、実際にはアメリカでの分断は「政治的」になってきている。気候変動の問題についての認識は、政党によって変わるのだ!


ルイジアナとカリフォルニアの文化の違い。

ニューヨークタイムズがない。オーガニック食品が手に入らない。小型車を見かけない。外国映画を上映していない。プチサイズの服が少ない、通行人が少ない、自転車レーンやリサイクル回収箱、太陽光パネルは探すだけ無駄。カフェのメニューは全て油で揚げてある。29


そんな「自分を守るものの何もない」ところで長期滞在し、社会調査のインタビューをすることのプレッシャーがあるということ自体が「壁」や「溝」を表しているよね。


ルイジアナ州は、石油産業に牛耳られた、環境汚染まみれの、穴掘りからくる陥没で街が消えるなど産業災害満載でもある。にも関わらず、人々は環境規制に反対し、故郷に住み続ける。


今や人は「同類」を求めて引っ越すという。そこに居続けることは、同類の中でいつづけるということだ。そして、それは不安と分断の裏返しなのかもしれない。赤い州の住人は、著者のような「青い州」の人たち以上に、臆病かもしれないよね。彼らが「青い州」に調査で出かけることはない。それはなぜ?


「壁」の非対称性。



by eric-blog | 2019-09-15 12:54 | □週5プロジェクト2019

手話・言語・コミュニケーション No.2

手話・言語・コミュニケーション No.2

日本手話研究所、文理閣、2015

3392冊目


全国手話研修センター発行。


ろう文化という言葉はあるが、盲文化という言葉や主張はない。

文化は言語と結びついており、その言語として「見える」言語という特徴があるのが手話言語である。


そして、手話言語の特徴はさらに何かというと「視覚的記憶」をベースに、抽象化が進むという。


音声言語でもBICsからCALPへの飛躍があるように、手話言語にもそのような発達があるという。


河崎佳子さんが「手話とろう者」の中で、もっとろう者の発達について研究がなされるべきだと指摘している。


ろう者という、音声言語の自然な習得という条件に生まれた人は、「見える」ものをよすがに発達を果たすのが彼らにとっての自然言語であり、母語なのだという。厳しい口話教育は、ろう者を孤立させ、自己アイデンティティに対する混乱を招き、発達を阻害する。


大抵は、インテグレーションによっても学習の遅れから高等部ぐらいにはろう学校に進学し手話に出会う。出会った後、自分が剥奪されてきたものに気づき、怒りを覚えるとともに、親子喧嘩や親子関係の危機に至る。そのことからカウンセリングに来るようになるのだが、手話のできるカウンセラーである河崎さんとの対話の中で、手話によって思考と感情を整理していくことを学んでいく姿は、聴者の発達となんら変わらない。言語によって、自分自身を理解し形作っていくのだ。


河崎さんは、こんな経験をしています。混乱して募る感情を手話で表している時、手話でのコミュニケーションができないほど、激しくなると、彼らはどうやらとても視覚的なある場面記憶に縛られてしまっているようだと。

「ここに見えているのね。思い出したことがここにあるのね。その時のこと、あなたはすごく怒っているのね」と伝え、残念ながら日本手話のできない筆者にはそれが見えないことを詫びて「でも、あなたの怒りがよく伝わってきたので、その内容を、少し、ゆっくり、わたしにもわかりやすい手話で教えてくれますか?」と伝えました。49


聞こえない人たちとの面接に手話を導入すると、しばしば、発達の質的変化がみられます。交互で何度説明されても理解できない場合でも、手話によって映像思考をうまく展開していく援助をすると、「PQとの関係は、RSとの関係と同じ」とか「YXであることは、ZもまたXであるかもしれない」と行った論理的思考が可能になるろう者がいます。また、自分の体験の一つひとつが「感情という意味」を持っていることにも気づきます。・・・なぜ手話がそうした変化を可能にするのか。それは手話がコミュニケーションの重要な要素である「同時性」「相互性」「対等性」「効率性」を保障してくれるからです。それて、これらはカウンセリングだけでなく、養育や教育においても保証されなければならない要素です。53


とても大切な提案ですよね。


家族に対する愛着形成、所属と信頼という発達課題は、ろう者でも同じなのです。その家族が「口話主義」に凝り固まって「見える」言語を否定すれば、言語による思考能力の発達を阻害することになるということを河崎さんは指摘しているのです。


人工内耳をつけたからと言って、健聴者と同じになるわけではないのです。


河崎さんの本には、窓からおもちゃを投げて遊んでいるろう児に、窓の下の道を歩いている人がいるかもしれない、おもちゃを投げるとその人に当たって大変なことになるかもしれないと「映像的に場面」を手話で伝えたら、それまでどれだけ「言って」も、やめなかった行動を、恥ずかしそうに止めたというのです。


いかに「ろう」であるということで知的レベルを低くみられているかということでもあるように思います。


「ろう」に限らず、わたしたちは異なる文化の人の知能を低く見る傾向がありますよね。わたし自身の体験で、米国の教育を視察に行った時のことがあります。マグネットスクールという複数の学校でそれぞれ得意な分野での指導や教育を分担しようという地域の、エリート教育の学校を訪ねた時のことです。拙い英語で質問する日本からの視察者を、そこの生徒らはあからさまにばかにしたのです。視察団は大学教員や教育者たちですよ。言葉ができない=知能が低いなどということではないのに、です。


やたらな強制や矯正、否定ではなく、発達を支援すること。彼らの発達の筋道を知り、理解し、寄り添うこと。それが手話言語がろう児に対してできることなのだと思いました。




災害関連標準手話ハンドブック pdf.

https://www.jfd.or.jp/info/2010/teq/saigai-handbook/saigai-handbook.pdf

その基礎は、東日本大震災の時、「四日で作ってくれ」と要請があり作成したもの。279の単語が紹介されている。中には急遽作ったものも。201144

https://www.jfd.or.jp/info/2010/teq/20110404-eq-sign-handbook.pdf



by eric-blog | 2019-09-14 13:44 | □週5プロジェクト2019

日本一小さな農業高校の学校づくり 愛農高校、校舎たてかえ顛末記

日本一小さな農業高校の学校づくり 愛農高校、校舎たてかえ顛末記

品田茂、岩波ジュニア新書、2017

3391冊目


シャャプラニールに徳永さんという人がいた。いる、のかな?愛農高校の出身者だった。一本筋が通っているなあと思った。


その高校は、1945年、小谷純一さんが戦後始めた農業塾から始まった。三愛精神というのは内村鑑三さんが紹介したデンマークでの取り組みのこと。神を愛し、人を愛し、土を愛する。

10年後の1955年に学校設立。戦後求められた象さんのための農業技術は、1971年、梁瀬ぎりょうささんというお医者さんの危機感から「有機農業」へと切り替えられていきます。


70人ほどの生徒が全寮制で学ぶ小さな農業学校。給食も地産地消。


その三階建ての校舎が耐震性不足で建て替えの必要に迫られ、著者に事務局の白羽の矢が立てられたのが、2005年。著者の娘さんが愛農高校を卒業して3ヶ月がたった時だった。

それから五年。生徒や関係者の声を聞き、設計者を探し、何回も案を練ってできた校舎は、減築、改修という方法でリニューアルされた。2015年、耐震改修優秀建築賞受賞。


著者は、事務局を引き受けたことをきっかけに転職。愛農高校で働きながら、改築を進めた。他にも、「市民のための地域調査入門」や「浮島丸」についての著書がある。



by eric-blog | 2019-09-12 13:39 | □週5プロジェクト2019

きこえない子の心・ことば・家族 聴覚障害者カウンセリングの現場から

きこえない子の心・ことば・家族 聴覚障害者カウンセリングの現場から

河崎佳子、明石書店、2004

3390冊目


藤木和子さんの講演で彼女が言ったキーワードが「ちょうどいい」。

支援も関係も、「ちょうどいい」が難しい。障害や病気を、過度に気遣ったり、条件付きで受け入れたりすることは、時に排除につながる。しかし、何らかの「不利」な条件がある人たちに配慮が全く必要なく、平等に扱うだけでいいわけでもない。


「ちょうどいい」は難しいけれど、目指したいところなのだと。


「はじめに」に著者は言う。

1990年の春、ひとりの臨床心理士がろう者の存在に気づき手話を習い始めた」10


この本はその後の10数年の経験から書かれたものだ。


ろう者は自分のことを障害があるとは思っていない。

他の障害のある人たちとは違うと言う意識が強い。


まだ30歳ぐらいの頃だから、いまから30数年も前に、初めて手話に出会い、半年ほど、学習会を主催していた時に、講師として教えてくれていた人の発言ではなかったか。その後であった視覚障害のご夫婦も、そんな感想を持っていた。


手話通訳講習会に通うようになって、講師や講演会で出会うろう者の姿。テレビ「みんなの手話」に出ている多才な出演者の人々。その才能や生きる力に圧倒されこそすれ、暗さはみじんも感じたことはなかった。


1020日の東京都聴覚障害者大会に参加したものかどうか、まずは講師がどんな人なのかを知ろうと、手に取ったのがこの本。

https://www.tfd.deaf.tokyo/第66回東京都聴覚障害者大会のご案内/


目からウロコ程度の話では済まないほどの衝撃だった。臨床心理士の話が明るいことはまずない。普通でも。そこに言語や文化の異なる人々が、あたかも「普通の家族」であるかのように集い、「障害」と考えられている問題に共に取り組もうと努力し、成長し、発達課題に直面していく姿があるのだ。


聞こえない母親の元に生まれた聴者の女の子が、様々な努力によって順調に口話能力を伸ばしていっているのに、母親とのコミュニケーションが取れないために3-5歳頃になって突然イライラし始める。


聞こえない両親の元に生まれた聴者の男の子が、小学校、中学校と成長するにつれ、「聞こえる人たち」の仲間入りをしていいのかと、立ち止まり戸惑う。


聞こえない子どもが手話と出会って、とても自然にぐんぐん手話言語を獲得していくが、両親の手話言語能力との格差が広がる。


口話教育のろう学校を首席で卒業し、就職した生徒が、会社でいじめられて、心を病んでしまう。


親が死んで、相続の時になって初めて手話通訳者を立てて、会話が成立する状況を体験する家族。


など、著者がカウンセリングを通じて出会った事例は、このように整理されて出されているが、カウンセリングに通い始める頃は、家族の誰もが混沌と混乱の中にあるから、やってくる。それを心を開かせ、聞き出し、了解していく。


さらには、口話教育一辺倒の価値観で成長してきた人が、手話と出会ってアイデンティティの危機を迎える。そのことが「鎖に繋がれた象」に取っての幸せとは何かと言う寓話で語られる。


時に、新たなアイデンティティの獲得は恐怖であり、挑戦であるのだ。


家族が抱える苦しさは、どこからくるのか。手話言語が認められれば、それで解決ということでもないことは明らかだ。


藤木さんが手話を学んで、弟さんから「わかりやすくなった」と言われてショックを受ける。30歳にもなってのことだ。それまでの30年間の関係はなんだったのだ?


手話通訳講習会で、そして日本手話成立についての本などを通して、手話言語の言語としての独立性を聞かされる。しかし、そのこと、手話者と非手話者の関係が、例えば英語話者と日本語話者の関係のようなものなのだと言うことにまでは思いが至らなかった。


聞こえない子どもにとっては、音声言語は「母語」にはならないのだ。

「母語」は「母親語」と言うような「子どもが応答するまで発話する」ような根気強い働きかけの繰り返しによって習得されていきます。

https://ericweblog.exblog.jp/1979998/


その結果確立した母親とのコミュニケーションの可能な「共同体」の成立。しかし、その共同体を超える力のある言語であり得るか、それとも、「方言」「クレオール」だけにとどまってしまうのか。

https://ericweblog.exblog.jp/2211935/


藤木さんと弟さんが「分かり合えていた」と言うのも、実はクレオールであったのではないか。


何れにしても、家族の誰かによる努力によってコミュニケーションができたとして、より広い共同体に出会うと言う課題がある。


大抵の場合、小学校への入学というハードル。そして中学校、高校へと、言語はより抽象度の高い内容をクリアする課題を突きつける。


具体的なものや出来事を介してのコミュニケーションはたやすくても、抽象度の高いものはまた別の課題がある。BICs CALPという閾値が言語生活には存在するのだ。

https://ericweblog.exblog.jp/3671967/


異なる言語空間で過ごした子どもたちの課題については「越境する子ども」という課題が提示されている。

https://ericweblog.exblog.jp/14377560/


文化や階級の異なる社会集団の出会い方についてはこの本が面白い。

https://ericweblog.exblog.jp/8154129/


いずれも逸脱行動や差別体験、欠損感覚などにつながる体験である。


しかし、これらの本を読んできていてなお、ろう/聴の言語の壁からくる悩みの深さ、苦しさは胸を塞ぐ。


それは、「健聴者」の価値観や文化の圧倒的な力の格差に無理解な親の姿を突きつけられるところからもくるのだろう。


1020日の講演会が、とても楽しみだ。



by eric-blog | 2019-09-12 12:30 | □週5プロジェクト2019