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現代が受けている挑戦

328-1(1419) 現代が受けている挑戦
アーノルド・トィンビー、新潮文庫、2001

1966年に出版されたCHANGE and HABITの復刻版。

40年経っても色褪せない問題提起の書。

7つの高等宗教、3つのユダヤ系宗教、3つのイデオロギー(国家主義、個人主義、共産主義)が織りなす現代の対立とその解決を描く。

宗教は、人間に人間性の一面を発見させ、社会から解放した。真理に向けて。

「個人をその属する共同体から解放し、宇宙の諸現象の背後にある霊的実在に直接触れさせ、それとの調和のうちに生きることを助けること」309

イデオロギーはこの使命を引き継がなかった。人生における大事な悩みは宗教と哲学のものなのだ、と。

社会は、血縁共同体、地域共同体より大きいつながりを、技術と制度によって獲得したものだ。文明。ローマ帝国ムガール帝国などは、社会の共通基盤の伝播を示すものである。異質な文明の圧迫を受けた側は、従うか反発するかの二者択一を迫られる。

食糧採集時代の人類は、分裂と拡散を繰り返した。文明が統一への契機となる。
ではなぜシュメールの社会は人類全体を巻き込んで再統合させなかったのか?と著者は問う。109

英語ではなんという言葉が使われているか、興味深いところだが、文明の伝播を進めるのは「注解者」の存在なのだという。

西洋は人類に科学技術と民族主義をもたらし、前者は統一を後者は分裂を含意する。

人類の挑戦とはこの統一と分裂の葛藤なのだ。

「個人の最高の政治的忠節は、全体としての人類・・・次なる忠節は一つ以上の世界的規模の散在体に与えられるに違いない。・・・地方的な共同体への忠節は以上に従属したものになる」145

世界的規模の散在体としてあげられているのは、宗教、職業である。

散在体、ディアスポラ

その存在が人類の統合の希望なのだ。136
統一は安全を提供するが、安全は退屈。313
多様性が珍重されるようになり、
「社会がまったく規則立てられてしまうと、生活は退屈な、感激のないものになるのである。」345

食糧採集の生活は不安定なゆえにわくわくさせる。
その日その日の食べ物探しの仕事は希望と恐れ、そしてスリルと心痛で生き生きとしたものになる。

ericかくた なおこ沅
by eric-blog | 2009-12-06 08:56 | ■週5プロジェクト09
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