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夜回り先生

かくたです。
                        2004年2月16日配信
少年非行について、何冊か、御紹介します。
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33-4-133
夜回り先生
水谷 修
サンクチュアリ出版、2004

1990年、それまで障害児学級から受験校と、やりがいを感じながら教員をしてきた著者が、夜間高校で勤めている友人からぐちられる。「おまえは選ばれた生徒に対していい教育ができる。くさった生徒にいい教育なんてできない」と。大ゲンカの末、
「よし、おれは夜間高校の教員になる。おまえは教員をやめろ」という売り言葉に買
い言葉で、2人の人間の運命が変わった。きっかけは、それらしい。
以来12年間、夜の街に出かける日々。いや夜夜か。5000人以上の生徒たちと関わり、ぶつかってきたエピソードが20ほど、紹介されている。本の半分のページは写真で読みやすい。
「更正させてきた」のではない。何か、やり方がそこから見えてくるのでもない。何
度も同じトラップにはまる子ども。順調に更正しながらも、思考と行動を緩慢にさせ
るぜんそくの薬をいやがって飲まなかったために、発作で死んだ子ども。「なぜ、も
う少し、ゆっくり生きれなかったのか」と後悔する。

シンナーに溺れている子どもの扱い方がわからず、死なせてしまう。その時、著者は
精神医療センターに出かけ、薬物依存について教えられる。
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「水谷先生、彼を殺したのは君だよ。シンナーや覚醒剤は簡単にやめさせることがで
きない。それは"依存症"という病気だからだ。病気"愛"や"罰"の力で治せますか?」

子どもたちは、虐待や暴力、不遇などから逃れるために、つらさを忘れるためにシン
ナーや覚醒剤に走る。夜回り先生は、薬物/ドラッグとも闘うことになる。というこ
とは、その背後にある暴力団などとも。

依存症だけではない。親からの保護や適切な生育環境を保証されなかった子どもは、
愛情にも飢えている場合や自分への嫌悪感など、精神的にも支援を必要とする。なか
なか立ち直れず、何度も、何度も「助け」を求められる。彼は、突き放さない。

「いいんだよ、昨日までのことはみんないいんだよ」「(死ぬのだけは)いけない」
「まずは、今日から水谷と一緒に考えよう」

水谷自身が、大学の時、自分が見えず、夜の世界にはまっていたのだ。「何かを探し
てきてごらん」と母親からドイツ行きのチケットと60万円を用意され、ヨーロッパに
出かけるまで。そのことを彼は、「とてもささいなことに縛られていたのだ」と思い
返す。ちょっとしたことなのだ、と。

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子どもに嘘をつかずに生きようとするほど、...私は大人の社会から排除されていく。
でもこれは仕方がない。子どもたちはよく失敗するし、その失敗を許せない大人が多
いからだ

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どんな子どもに対しても、まずは彼らの過去と今を認めた上で、しっかり褒めてあげ
てほしい。よくここまで生きてきたね、と。

生きてくれさえすれば、それでいいんだよ。

著者は、著者自身も寂しいから、子どもと出会いたいのだという。出会いからたくさ
ん得ているものがあるという。
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同時に購入した以下の本も、子どもたちの視点から、「生きて直していく」プロセス
が書かれている。
僕たちはいらない人間ですか? 伊藤幸弘 扶桑社 2003

この著者は、元暴走族。傷害事件まで起こして、刑務所に入った。そこから出た時に、
元勤めていた会社の社長が、迎えに来てくれていた。そして、その会社の人達が、し
ばらくは、毎晩彼のアパートに来て、一緒に飲んだり、食べたり、していたのが、元
の仲間とのつながりを断ち切れたきっかけだという。
by eric-blog | 2004-08-19 11:01 | ■週5プロジェクト03
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