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滅びゆく思考力ー子どもたちの脳が変わるー

かくたです。
                        2003年10月15日配信
東京です。
いやーーー、いまかなり揺れたのですが、直後、隣の小学校から子どもたちのキャー
キャー言う声が聞こえました。考えてみると、何かあった時に、学校と連係して子ど
もたちを安全に帰宅ないし避難させるための方法とかなんかも全く知らないし、考え
ていないなと、昨日のハンドブックを思い出しながら考えました。昔と違って、子ど
ものいる家庭の方が、全体の家庭よりも少数になってきているという社会的な変化を
考えないと、地域と学校の連係はないなと思います。

小学校ですらこれですからね。

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21-2(78 ) 滅びゆく思考力ー子どもたちの脳が変わるー
Jハーリー/著 西村弁作、新美明夫/編訳
大修館書店、1992

経験と思考と言語が遊離しているのがいまの子どもたちの傾向なのであるが、この本
で、子どもたちが考えなくなっている原因のひとつとしてあげられているのがテレビ
やビデオである。中でもセサミ・ストリートの内容に疑問が投げかけられている。
次にあげられているのが、コミュニケーションや人間関係の希薄化したわたしたちの
社会の変化。親が忙しすぎたり、情報のスピード自体が早かったり、そして、情緒的
な体験が少ないなどの、いずれにせよ急激な社会的な変化の結果に子どもたちがさら
されているということ。
その上で、この本では、脳生理学の知見を踏まえて、何ができるかを提示している。
家庭や社会の変化を、学校や幼稚園などがとどめられるはずもなく、だからこそ、子
どもたちの脳に対する適切な刺激を考え、提供するのは学校の役割なのではないかと、
著者は言う。
しかも、学校のパターンにあてはまらない子どもたちに、昔は仕事につくという選択
肢があったが、いまはその選択肢がないという事実をわたしたちも、認めなければな
らないだろう。だとすれば、教え方を、そして学校のパターンを変える必要があるの
は自明だ。260
267
われわれの学校は、教えようとしている子どもたちの現実に直面することをしない限
り、成功することはできない。学校は社会を変えることはできないが、知的な成長の
敵としてではなく、確固たる支持者としての立場をとることができる。

一般的には以下のことができるだろう。
1.「協同学習」の技法を多く用いる。
2.いい教師の配置−教員養成の再検討と人間的に成長しあえる場や機会の継続。
3.25-30人というクラスサイズ以下の少人数の実現。
4.学習にとって重要な「信頼」「所属」「存在」の感覚への配慮
5.親との連携と親が親になることを学校が助けること。

特に「言語と聞き取り、読み書きの能力」について、よい言語使用の経験を提供する
ことる。
・音と綴の関係
・文法
・聞くこと
・質問の仕方

そのための「全体的言語」
原則1・学習者は単に受動的な情報の受け手ではなく、積極的な「知識の構築者」で
あること。
原則2・読むこと、書くこと、聞くことをバラバラではなく、統合された技能として
教えること。
原則3・読むために用いられる教材、それは書く活動の基礎としても用いられるが、
それらはすばらしい児童文学や物語や説明風の良質の言語を含んでいるものであるこ
と。

口頭、書くことの両方での理解、討論、分析を行う指導を行うこと。
しかし、成長する脳には
・その成長段階に適した学習の型を求める基本的な本能をもっている
・積極的な好奇心と個人的な関わりが、思考装置の大きさや能力の両方を増加させる
触媒である。304

教育的に「立ち遅れた」子ども達の多くは賢いし、潜在的な能力がある。必要なのは
「教え方」の改良である。

そして、「新しい世代に考えることを教える」312-ために必要な考える力とは
・メタ認知=自分自身の心を知る技術*
・知的な習慣、方略
・より手を使った活動

加えて、コンピューター学習やメディア・リテラシーなど、どの学習が効果的である
のか、不明なことも多い。

何よりも、わたしたちはこれからの社会の変化と人間の進化を見越して、どのような
「新しい知性」を子ども達の身につけたらいいのか、いいと思うのかを考える必要が
あるのではないかということである。
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88-89
「しずかにさせるという考え方を考え直す必要がある。」

アクティビティとして、子どものコミュニケーションについて考えてみることが大事。
子どもがどんな言語環境にあるか、能動性、受動性を分析する。
積極的に聞く
受け身で聞く
ただ多く聞くのではなく、上手に聞く

90
しばらく前の時代であれば、子どもたちは学校から外に出れば豊かな言語体験ができ
た。
91
聞く力、口語表現、質問する力、分析力など,,,,,子どもの言語体験の質の問題
93
昔は5年生にもっと難しい本を読ませていた。
94
大部分の性とが明確な考えを持っていないし、発表もしていない。
10-14才の子どもに完璧な表現を期待するのは間違い。
この発達の悪さは聞く力の低下の報告と軌を一にしている。

95
教師達が証言したこと
1.聞く力の低下
2.話されたものや書かれたものから、事実や考えをまとまりを持って順序だてて捉
える能力の低下
3.ことばの代わりに身振りを使って伝える傾向
4.小学校4年生以上の子どもの語彙知識の低下
5.重要な語の代わりに埋め合わせのことばを使って文を冗長にする傾向
6.語音の聞き分けと語音の配列の困難さ
7.難しい読みの教材における理解のつまずき
8.上級の学年での長い文、埋め込み節、複雑な文法構造の理解の弱さ
9.話し言葉から書き言葉への切り替えの難しさ

96
テレビからうわべの知識だけは吸収している
小学校低学年では、脳の基本能力が環境刺激によって発達しているので言語の基本的
な構造を取り扱うことができる。したがって注意の問題がいつも指摘されている。言
語の問題はより高い技能が要求される4年生頃までは表に出てこない。そのころになっ
て、現代文化の影響が生徒の言語能力と学校の期待のズレとなって次第に表面化して
くる。言語の理解と使用の問題は、高度の思考、統合能力、難しい本の読解、長い文
による表現が要求される高学年に進むにつれ顕著になる。
中学校に入ると、,,,聞く力、語彙知識、読解力、考えを
効果的に表現する言語使用野よウィンウィン力
高校レベルでは、言語の問題が、計画性、系列化、考えのまとめ方、分類、概念の微
妙な違いの把握、因果関係の判断、書き記されている思想の関係の把握、数学や理科
的な推論、考えを正確にかつ直接的に表現すること、内面的思考、そして行動の統制
の領域に現れてくる。

98
海外の事情=イギリス
テレビの話し方の早さ=一つひとつの音を聞いていない、生活のリズムのテンポが早
くなっている、じっくり考える力が低下
単語の綴りの能力の低下

100
ことばのファースト・フード

読みと綴りの力の弱さは視覚的経験の乏しさから生じているのではなく、聞く力の弱
さによるものである
101
読み能力の比較=「音韻感応力」ことばの音を聞き分けるだけの能力ではなく、音の
並びも捉える能力のこと。
ポップミュージックをよく聞く子どものこと=彼等の脳は、同音反復や短い句切りだ
けの歌詞に馴らされている。,,,ことばを理解する力を育てるためには好ましくない
刺激

102
自分の子どもとできるだけ多くのことばのやりとりをすること。
耳からだけではなく、目からも情報を、得たがっている。結果を求める文化の影響だ。
,,,ゆとりある手本や思慮深いことばがけをしないで、,,,子どもたちには先生の話し
をよく聞き本を読んでよく理解してほしいと期待している

「日本はうまくやっているのではないか」265

319
メタ認知
1.ちょっと待って、考えろ、自分の課題は何か。=問題の明確化
2.自分の対策は何か=解決のためにできること
3.どのように始めるか=第一ステップの分析
4.自分はどのようにやっているか=課題をとき続ける
5.ちょっと待って、ふりかえろう。どんなふうにやったのか=結果を見直す
変化する環境に対して人間をより抵抗力のあるようにする「メタ認知的方略の訓練」
によって、脳はそれ自身も向上する。ルーベン・ヒューエルスタイン
「介助学習」によって適切な思考技能をインプットする。
321「あなた方が今教えていることの大部分はすぐに時代遅れのものになることでしょ
う。自分自身を適応させ変化させる脳だけがわれわれの文化の発展を保証するのです」

どの程度、印刷メディアにこだわるかも疑問。
メディア・映像リテラシーも必要なのではないか。
コンピューターについては
1.ドリル学習・練習のためのプログラム
2.プログラミング
3.データベースの利用
4.シミュレーション
5.ワープロ

344
現代の子どもがもっとも必要としないことは、さらに多くの細かいことを、それを定
着させる基礎的な経験の枠組みなしに、学習することである。
352
ジェローム・ブルーナー「人間の脳機能の進化は原則的に人間とさまざまな道具の体
系との結びつきへの反応として変化してきた」「この文化を動かすためには誰もが高
い技能を持っていることが不可欠になっているということ。もし、その技能の普及に
失敗すれば、深刻な疎外の原因となるでしょう。もしわれわれがその失敗のために2
つに分断された社会を生み出してしまったら、それは事実上、2つの分離した進化の
圧力の集団を持つことを意味します。ひとつは能力の加速化を要請されるエリートの
集団です。もうひとつはそのような圧力の働かない下層の階層です。」353

新しい知性とは何か

言語能力と非言語的思考

成長期の脳は対人的な拒絶とともに社会的な拒絶に傷つきやすい。

Jane M. Healy "Endanged Minds-Why OUr CHildren Don't Think",1990

1980年代の半ばから始まった子どもたちの傾向、それは何を意味するのだろうか。
by eric-blog | 2004-08-12 10:48 | ■週5プロジェクト03
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