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新しい貧困 労働、消費主義、ニュープア

291-4(1306)新しい貧困 労働、消費主義、ニュープア
ジグムント・バウマン、青土社、2008
WORK, CONSUMERISM AND THE NEW POOR, 1998

一度、英文のものを読んでみた方が、いいのかもしれない。バウマンは、コミュニティとか、個人化社会とか、液状化社会とか、モダニティの追放者とか、取り上げているテーマが、興味を引かれる著者なのですが、議論の立て方や深め方そのものはわたしにはしっくりこない。「ああそうだったのか」とか、「新しい視点だ」と感動しないのです。なんだか、タイトルだけで満足してしまうだけのような。ところどころ、いい分析があるなあ、くらいな。

「社会的な存在の質をめぐる権力闘争が金銭的な収入額をめぐる闘争へと方向づけられ、経済的な利益が自律と自己主張への意欲の唯一の表現になった」44
「労働倫理への服従の度合いを評価するために強制と所有の刺激の組み合わせが用いられた」45

「今日の社会の核心は「人為的に生み出された、主観的欠乏感の増大」にある。」ジェレミー・シーブルックより 80
「人びとが持っているものは、いっそう裕福な人びとによるこれ見よがしで過剰なまでに法外な消費によって、打ち消され、否認され、矮小化される」80

うーーん、このような消費主導者会だとして、わたしがそこでもっとも感じる矛盾は、労働がそのような消費に向けての労働へと追いつめられていくということ。例えば、最高のソムリエによる最高のワインを消費するという場合、そのソムリエが、その同等のサービスを受けるレベルになるためには「カリスマ」ともてはやされる以外にはないのだろう。その「最高のワイン」を作る人は、もてはやされることで、「法外な消費」のできる側になるのだろう。

労働がそこへ向う指向性を持たされることが、最大の矛盾なのだ。

失業から余剰へ  132

アンダークラスの発見、ハーバート・J・ガンス 137
「学校から落ちこぼれ、働いていない、また若い女性の場合には、結婚せずに子どもを持ち、福祉の対象となっている人びと」
彼らに共通する一つの特徴は、
他の人びとが彼らに適切な存在理由を見いだせず、
彼らが周囲にいない方が、自分たちはずっと幸せだと想像してしまうことかも知れない。138

無用性と危険性
不適格、不適応

わたしたちはリチャード・ローティの言うような価値観を、教育で実現しているのだろうか?
「机の苗に腰掛けてキイボードをたたいているわれわれが、自分の手を汚してわれわれのトイレをきれいにしている人びとの10倍もの給料をもらっていたり、第三世界でわれわれのキイボードを生産する人びとの100倍もの給料をもらっていたりするのは許せないと考えるような人間に。そして最初に工業化された国々が、まだ工業化されていない国々の数百倍もの富を手にしているという事実に、心を痛めるような人間に。」181


J. Seabrook, 1988, The Race for Riches: The Human Cost of Wealth,
H. J. Gans, 1995, The War Against the Poor: The Underclass and Antipoverty Policy
リチャード・ローティ『アメリカ未完のプロジェクト』
by eric-blog | 2009-04-22 10:43 | ■週5プロジェクト09
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