289-7(1297)複数にして単数の存在
ジャン=リュック・ナンシー、松籟社、2005 Etre singulier pluriel, 1996 相互-共-存在 われわれ それ自身が 意味 である。 意味作用は 伝達=共同化(コミュニケ) されない限り 意味 を 持たない。 存在 それ 自体が われわれに 意味 として 与え られている。 存在 は 相互-共-存在 すること において しか 存在 しえず、 この 単数的に 複数的な 共-実存 の <共に> において <共に> として 循環する。 存在 は 区別なく かつ 区別された 仕方で 、 同時に 単数 かつ 複数 である。 Etre singulier pluriel Le singulier pluriel Singulier et luriel 世界 とは、 それらの 実存 を 一緒に 配置する 共-実存 である。 共-存在 とは 存在の 最も 固有の 問題 である。 主体の哲学はかつてあったことはなく、決してあることはないだろう。 76 分かち書きによる理解の構造と、分かち書きのない文章による理解のあり方は、違っているのではないだろうか。そんな思いが、この本を読んでいて、強くあった。 Etre singulier pluriel 存在 単数的 複数的 この三語の統辞法についての解釈の多様性そのものについて、著者自身が分析している。 フランス語の原文に近い分かち書きを想像しながら、読んでみた。 (じゃあ、原文で読めよ=ムリ) ESF 持続可能な未来のための教育は、「よりよく生きる」意志と意欲を持った人類への道に他ならない。それが価値観の教育ということである。 持続可能性という価値そのものをあざ笑う人もいるだろう。 人類が地球のガンなのだ、という人もいる。 しかし、例えどれほど「バタ臭く」「西洋中心主義的」な体制とプロセスの中で作られたものだと批判されるとしても、ESD Education for Sustainable Development 持続可能な開発のための教育 の必要性は、わたし自身にとって、そして、わたしという存在の複数性にとっての意味を持っていると、信じているわたしがいる。 日本という、青木保が言うところの「重層的な歴史」を背景とするために、重層的な価値観の地層で育ったわたしたち一人ひとりは、矛盾した価値観のいずれかに過度に加担したり、あるいは葛藤したりする存在にならざるを得ない。 アジア的なもの、儒教的なもの、仏教的なもの、近代的なもの、キリスト教的なもの、マルクス主義的なもの、科学的なもの、そんなもののミクスチャーであるわたしたちが、わかりやすいはずがない。 そんなことを悩み、考え、振り出しに戻って、「わたしが大切にしたいもの」を問うた時、環境、人権、正義、公正、よりよく生きる、QOL、などの価値に行き当たる。 わたしが本を読むのは、自分自身をふりかえる「点検の視点」を先達から得たいためだ。わたしの言葉や考えに、独自のものなど何もない。独自なのは存在そのものだ。複数的に。 自分を成長させる、行動変容につながる視点を求めて、読書する。得たもの、発見したことを、ファシリテーターとして人と共有する。共に成長するために。 『贈る ことば』は、そのような気づきのことばをまとめたものだ。 『問う こころ』は、そのような点検の視点をまとめたものだ。 わたしがあるということは、わたしは複数であることを、信じることができる。 大きな力、大きな文字、大きな声で「複数的単数」化されるのではなく、 一人ひとりの力で、普通の文字で、普通の声で、 わたしたちが選んでいく未来を 拓こうとするのが、ESF Education for Sustainable Future なのだ。 そして、事実、わたしたちはそうなってきている。 その一人ひとりの「内なる声」が、better quality of lifeへ導いてくれるようになるための「シンキング・スキル」を考えたいのだ。それが今年の課題。 しっかし、難解だったなあ。唯我主義批判、あるいは反省、などと、まとめてはならないんだろうねぇ。「わかりやすさ」を否定しているよね。 今日の日経新聞「消費者行政の目指すべき方向 「保護」より「教育」に軸足を」中島隆信(慶応義塾大学教授)も、「日本の成長戦略は賢い消費者抜きには描けない」「賢い消費者を育成することこそ、市場経済をうまく機能させるための必要条件なのだ」としている。 わたしたちの未来は「賢い一人」ではなく、「賢いわたしたち」が拓いていくものなのだ。それが民主主義というものだ。そのための教育に何が求められるか、明らかだ。それが見えていないのは、過去の栄光に囚われている人びとなのだろうか、「わかりやすさ」を拒む人びとなのか。
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| 2009-04-10 08:38
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