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放送禁止歌

かくたです。
                             2003年7月8日配信
いま、
・自由
・異文化
・生涯学習
について、週5プロジェクトで取り上げていきたいと思っているのですが、なかなか、じっくりとした時間が取れないので、少し、脈絡がないですが、とりあえず、員数揃えの意味もあり。

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10-1(39) 放送禁止歌
森 達也、知恵の森文庫、2003
原著2000年解放出版社

66
民放連が1959年に発足させた「要注意歌謡曲指定制度」
システムの趣旨は、それぞれの放送局が、独自に放送するかしないかを判断する際の
ガイドライン。
1983年度版が最後。一覧表=70-71ページ
しかし、討議の模様も、そして、
3ランクに分けられており、「A. 放送しない」「B.旋律は使用してもよい」「C.
不適当な箇所を削除または改訂すればよい」

このような制度が根拠となって、一般には「放送禁止歌」が決められるようになった
のだが、森のレポートによると、「イムジン河」「手紙」「竹田の子守歌」など、放
送禁止歌扱いされている多くの歌が、この一覧にも乗っていない。つまり、ガイドラ
インが示す以上の自主規制が行われているということ。

森は、解放同盟にも取材し、「竹田の子守歌」を放送禁止にする圧力など存在しなかったことをはっきりさせていく。しかし、では、部落差別の問題について、被差別の側がつきつけたかったことは何なのか、という問題である。それは、「ないこと」にしてしまうのではなく、「自分のこと」として考えるということの要請であったわけだが、「差別用語」を問題にする時と同じスタンスだ。そして、そのことが、もっとも難しいことなのだ。

第3章で、森はデーブ・スペクターと対談し、放送禁止歌、日米比較を行っている。

米国における放送禁止は、歴史的に以下のように区分されている。
・下半身に対するピューリタン的タブー観
・ベトナム反戦
・暴力描写
・差別撤廃運動
の4つの根拠があるとされている。PC=politically Correct政治的に正しいという
のは、主に第4の流れ、差別撤廃運動に絡んでのことである。

この間の週5プロジェクト(6-2-22バイアスフリー)で紹介したように、PC(政治的に
正しい)という姿勢から「バイヤスフリー」という概念へという変化があるとわたし
は思っているのだが、その視点は「PC」を揶揄する側に立つデーブ・スペクターは持
ちえていない。

日本の差別用語についての議論もそうであるが、「揶揄」する否定的な立場からは次
は生まれない。

1959年、「安保条約改訂案」が提示され、「安保改訂阻止国民会議」結成、中国のチ
ベット弾圧とダライラマの亡命、戦後最大の三池炭鉱争議、在日朝鮮人の北朝鮮への
帰国第1便が新潟港を出港などなどの世相は、どう関係していたのかは、忘れられて
いく。部落解放運動の問題だけではなかったはずなのに。それを論じなければ、何も
ならない。

そこに、日米の最大の差があるように思われた。

「放送禁止」ということすら、「消費」されていくメディアの現状から始まり、同様
の「文庫版あとがき」でもそのことが指摘されて終わっているのも印象的だ。だから
こそ、わたしたちは、何を積み上げていくのかが問われるのだと思う。

参考図書
差別用語の基礎知識'99、高木正幸、土曜美術社出版販売、1999
新・差別用語、山中 央、汐文社、1992
by eric-blog | 2004-08-05 18:06 | ■週5プロジェクト03
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