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大邸宅と奴隷小屋 ブラジルにおける家父長制家族の形成

277-4(1245) 大邸宅と奴隷小屋 ブラジルにおける家父長制家族の形成
ジルベルト・フレイレ、日本経済評論社、2005
Casa Grande & Senzala

ブラジルの社会史家による上下巻の大部作。その他の三作でブラジルの歴史を描き出したいという意向だったらしい。その中で、この作品は「植民地期における家父長制家族の形成と展開」にあたる。

実は、上巻を読んだとき、もう下巻を借りて読むのはやめようと思っていた。下巻の章が
第四章 ブラジル人の性と家族生活における黒人奴隷
第五章 ブラジル人の性と家族生活における黒人奴隷(続)
となっていたからだ。

小朝独演会ですら、下ねたが多いと、辟易する、さらにはジェンダーの視点についてはとても偏っているので、どれほど、いらだつことかと、予想できるよね?

偏りと言えば、昨日の大学での授業では、文化的相違排除的な「初期の知能テスト」に憤らない学生を見て、あああ、わたしは公民権運動からの視点を強く持っているのだなと、改めて、確認したなあ。閑話休題。

しかも、上巻は、「本書で「温情的」に描かれる奴隷主と奴隷の関係をとりあげ、批判者が「非人間的な側面の無視」として論難し、信奉者が「真実」として擁護する光景」(下巻、訳者解説397) 描写が続くのだ。だからなんなんだ、ジルベルト・フレイレ財団からの出版物だなんて、著者本人がすっげー、大邸宅の側からのノスタルジーなんじゃないの? と思ってしまうほどなのだ。

しかし、下巻では、黒人文化がポルトガル人の陰鬱な文化に持ち込んだ生き生きとしたもの、音楽や説話の世界が描かれていた。その豊かさは、感動的だ。

186-3(887)太鼓歌に耳をかせ、石橋純、松籟社、2006  にも描かれる世界だ。

家族の中で、奴隷女が果たす乳母・養育者・母性としての役割は、以下のものにも同様だ。

62-8(285) 女の町フチタン-メキシコの母系制社会、V.ベンホルト=トムゼン、藤原書店、1996

プランテーションにおける性的放埒と堕落については、ある小説がすごく良かったのに、思い出せない! 

下巻 49
性的堕落のない奴隷制など存在しない。
「奴隷という財産の最も生産的な部位は子宮である。」

100
奴隷との接触から身に付いた悪癖・・・たとえば奇妙なサディズムがある。

216
このような人びとを不潔で、汚れをまきちらす元凶であると非難することはできない。彼らは奴隷から開放された後、・・・こうした職業に明確な衛生観念をもって従事し、・・・

教育やよい生活を保障されない人びとと共に作る社会で、よりよい社会を目指すこと、それを共有することは難しい。
by eric-blog | 2009-01-24 13:12 | ■週5プロジェクト08
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