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蟹工船

272-6(1225)蟹工船
原作 小林多喜二、漫画 原恵一郎、新潮社、2008
解説 小森陽一

いま、リバイバルになっている1929年に書かれた小説をコミックにしたもの。
「殖民地における資本主義侵入の一ページ」
工場でもない、船でもない、蟹工船は、法の間をくぐり抜け、「法の執行停止」状態にある。法の執行停止状態とは戦争状態なのだ。

近代の国民国家、植民地主義というパイの奪い合い、国家への囲い込みが進む中、日本は、カムサッカで、ロシアと境界をめぐって争っていた。

国家事業としてカムサッカに投入される蟹工船。労働者の権利も、生存権すらもない。巡洋艦は、国家の側にあり、ストライキの首謀者も逮捕されてしまう。

原作よりも読みやすいと、わたしが感じたのは、ある一人の語り手が、漫画においては想定されているからだ。

小林多喜二が、「集団」を描くことに傾注したがために、無名のままに、状況のみが書かれていく原作に対し、漫画では、ある学生(無名のままではあるが)の視線から、描かれ、入り込みやすい。

原作よりも、完成された作品に仕上がっている、と、解説の小森さんも、大絶賛。
by eric-blog | 2008-12-19 08:44 | ■週5プロジェクト08
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