人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンジン

                           2003年5月30日配信
4-3(15) テンジン
テンジン, ジュディ&タシ
晶文社、2003年

昨日、5月29日が、エベレスト初登頂から50年であることを考えると、今日、この本を紹介すべきだと言うことの脈絡のなさも、許されるだろう。みなさん、ビールを用意いただいて、では、エベレスト登頂50年を祈念して、乾杯!

その時、歴史が動いた。1953年5月29日。いや、チョモランマ山麓に暮らす人々にとっては、西洋人の人々が、ヒマラヤ山脈に達し、その偉大さを発見し、最高峰にに挑戦するようになってから、すでに、変化は起きていた。山は、シェルパ族だけのものではなくなったし、さまざまな変化がもたらされてもいる。

シェルパとは、シャワと地元では発音され、東方の住民という意味を持つというのを始めて知った。15世紀末に住み着いた人々を、呼ぶ名前が「シェルパ」なのだ。わたしなんぞは、「クーリー」のように、荷役を分担する人のような意味の現地語なのかとすら思っていた。

地上の最高峰が発見されたのが1847年、インド測量隊によってである。最高峰だと結論されたのが1852年のことである。それから、100年後に初登頂達成。それまでの遠征隊の努力も綴られているが、シェルパ族が登山家およびポーターとして参加し始めるのが1921年からである。

そして、テンジンは、その前年にもスイス隊にも参加しつつ、登頂を果たせず、翌年のイギリス隊に参加することで、初登頂の栄誉を勝ち得ているのだ。それは、彼自身にとってエベレストが「おれの山」として登頂を目指したい山となっていたからこその、精神力に支えられてのことだった。そして、その彼が、それまでのシェルパに対する人種的偏見をくつがえすことになったのだという。

世界最高峰と共に生きるということが、特殊なことだなどと、思いもしなかった人々ではあるが、著者は、現在の変化に対しても、彼等が文化や古代からの価値観を損なうことなく、変化に順応していけることに、確信をいだいている。

というように、「エベレスト登頂挑戦記録」「その後のテンジン」「海外に暮らすシェルパ族」などの要素を含めて、明るい本である。異文化との出会いによる収奪や、卑下や、差別が感じられない本である。やっぱり、最高峰への挑戦という「偉業」は、「偉人伝」になるのだなと、思う。

今日は、50周年にあせって、紹介したが、ぜひ、6/4の「テンジン=異文化との出会い=ふたつの側面から」では、より深い発見があることを期待したい。
by eric-blog | 2004-07-30 11:34 | ■週5プロジェクト03
<< 地球がわかる139問 ◯△□の美しさって何? >>