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コルの「子どもの学校論」 デンマークのオルタナティヴ教育の創始者

272-2(1171)コルの「子どもの学校論」 デンマークのオルタナティヴ教育の創始者
クリステン・コル、新評論2007

「学校が人々に対して神と隣人と祖国を愛することを教えること、それが本来私のしたいことなのです。」89

コルはコル式教育学を打ち立てたり、教育システムをつくったりすることに関心があったのではない。と。コルは自ら実践し続けたのだ。1816年-1870年

民族意識の強調については、その時代背景も考慮すべきだと、訳者は前書きで言う。植民地主義が吹き荒れていた時代というのは、何も日本だけをナショナリズムに投げ込んだわけではないんだよなあ。

「風のがっこう」代表のケンジ・ステファン・ススギさんは『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか』(合同出版、2008)において、デンマークには宗教心と祖国愛、そして宗教心と祖国愛にもとづく行動があるのだ、と書いている。
困っている人がいたら、支援する。それは国境を越えて、発展途上国に対してもである。いい国をつくるために、税金も払う、投票率はつねに80%以上ある。

日本社会には「ナショナリズム」フォビアがある。戦前の国土拡大主義による富国強兵に「一致団結」してかり出された過去があるからだ。その対立を巡って、大臣が問題解決にもならないことを口走ったりする。悲しくなるまでに、愚かである。

戦前の教育程度といまの教育程度が民主主義にとって、どれほどの違いをもたらすかを考慮することもなく、教育論争はあたかも教育が「プロパガンダ」でしかないような議論になってしまっている。考え、決断するのは子ども自身であるはずなのに。その考え、決断し、選択し、行動する個々人の育成が教育の役割であるのに。

対立する双方の陣営は、自分たちの側に「パワー」を取り込むことだけに汲々としている。

と、こういう前置きをしてから、いま、民衆学校の伝統の強いデンマークでも中央集権的で国家統制的なカリキュラムへの移行が進んでいるらしく、フリースクール関係者の間で、コルの再評価がなされているのだという流れを踏まえ、紹介するコルの言葉である。

・ 初等教育では、想像力や感情に働きかける。
・ 聖書の物語など、人間の生き方についての物語を使う。
・ 訓育と精神の覚醒
・ 生きた言葉
・ 最初に鼓舞し、正しく啓発すること。生気を与えることと、光を与えること。90

内発性の重視、自発的な動機、知的な好奇心を第一とする。
子どもたちがほかのどの場所にいるよりも、幸福で自由である場。
学校改革はたまねぎのようなものだ、次々に取り組んで行くと教育そのものがなくなる。

尋常小学校は鼓舞して、読み書き算の基礎教育・訓育
中等教育以上は、啓発によるエリート養成。

そんな明治時代の学制の亡霊にいまだに縛られている「頭」を放っておいて、実態のない学校改革に振り回されるのではなく、「生きた言葉」で生徒や学生たちと学校の時間をすごす教育者たちが増えること。
by eric-blog | 2008-10-02 09:57 | ■週5プロジェクト08
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