人気ブログランキング | 話題のタグを見る

新しい時代の教職入門 

227-5(1114) 新しい時代の教職入門 

秋田喜代美・佐藤学、有斐閣アルマ、2006

1998年の教育職員免許法改正に伴い「教職の意義等に関する科目」が新設された。その科目のためのテキストとして、また現職教員のためにとまとめられたもの。

著者ら9名はすべて大学の教員。初等中等学校の現役教員ではない。にもかかわらず、本書には、教員の日常、同僚との関係、会話などの実態に肉薄する記述が多い。理論によるのではなく、現場の様子を伝える、それを分析する、研究する姿勢で、多くの論文や報告、記録が書かれていることに気づかされる。

教職の専門性を高めるためには、専門職協会の設立など、いくつかの課題があるという指摘はおもしろい。169

教員組合、学会、ではなく、専門家協会。例えば、理容師協会、例えば弁護士協会、例えば落語家協会などを考えてみる。教員の多重的なassociationと、職業的社会化の専門性を考えるのもおもしろい。

一斉授業というのは近代学校制度の産物なのだが、国民教育として、誰もが平等に扱われることの象徴であったというのも、おもしろい視点だ。

第11章は佐藤学さんによる「教育改革と教師の未来」だ。そこでは「国民教育」から「市民教育」へ、teaching professionからlearning professionへ、一斉授業から協同学習、プロジェクト学習へ、という大きな転換点が示されている。232

以下、今年のTEST教育力向上講座の課題である「質的研究力を高める」のテーマに関わるキーワードを、第三章から抜き書きしておく。

教員はアクター、デザイナー、エバリュエイターとしての側面を持ちつつ、授業や指導の局面で「教育的瞬間」に瞬時に対応することが求められるという。49
「行為の中の省察」reflection-in-action
「活動の中で働く力」「暗黙知
省察reflection
反省的実践家 reflective practitioner

「振り返り的省察」recollective reflection
「見通し的省察」anticipatory reflection

教育的鑑識 educational connoisseurship

教育評価とは「心の働き」 願いやねらいを核としながら、状況をとらえ、意味付けながら、行為を生み出すような評価的思考を絶えず行っている。54

子どもたちを解釈するという評価活動全体が、日常的な授業などの営みに埋め込まれている。

そして、それは同僚性や「ともに学ぶ」姿勢という教員集団での評価の共有によっても、より豊かな視点が得られるようになる。

ヴァン・マーネンの「技術的」「実践的」「批判的」省察。
アクション・リサーチを通しての授業実践改善。

書かれたものを読むことによって、どれだけの力づけになるかが鍵なのだと思うのだが。

日本教師教育学会など、教員養成についての情報も満載の本である。
by eric-blog | 2008-04-25 09:21 | ■週5プロジェクト08
<< 新女性のためのライフサイクル心理学 アイデンティティ生涯発達論の展... >>