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ぼくと1ルピーの神様

218-2(1060)ぼくと1ルピーの神様
ヴィカス・スワラップ、ランダムハウス講談社、2006
原題 Q & A

インドの外交官が書いた物語。原題が示すように「クイズミリオネア」のインド版のようなクイズ番組に出演し、12問すべての質問に正答し、10億ルピーを獲得した男の子。なぜ、教育も教養もない17歳の男の子が、すべての問題に答えることができたのか。それは彼の経験があったから。
その質問に対する答えを男の子が知っていた背景には、波瀾万丈の彼の経験がある。物語はその経験を軸に語られていく。

第一問の映画スターに関する問題にかめて、映画好きで、役者になりたいと願っていた親友との物語が。

第二問、十字架の上に刻まれているアルファベットを知っていたのは、彼が孤児で、教会の前に捨てられていて、7歳になるまではオーストラリア人の神父のところで養育されていたからだ。ラマ・ムハンマド・トーマスという三つの宗教が融合したかのような名前も、そこでつけられた。

第三問の「太陽系のもっとも小さな星」冥王星についての知識は、親友サリムと暮らしていた長屋アパートの隣人が、元天文学者で、娘に天文学の知識を伝授していたのを聞いていたから。その人は天文台に勤めていたときに、手柄を横取りされ、自暴自棄になり、酒に溺れ、職をなくし、長屋アパートに引っ越すまでに落ちぶれ、家族に暴力をふるうまでになっていく。

第四問、盲目の詩人についての質問に答えられたのは、自分たち自身が、子どもに障害を負わせ、乞食をさせる一味のところにいたことがあるからだ。二週間、歌の特訓を受け、目をつぶされるという晩に、そのことに気づき、逃げ出す。

外交官についての質問、パプアニューギニアの首都、拳銃、などなど、多様な分野からの質問が続く。そしてそれに対する答えを知っている彼の経験が語られる。

10億ルピーで、彼は何をしたかって?
友人を役者業に押し出し、恋人と結婚し、幸せな人生を手に入れるのだ。

でも、百年続く幸せってあると思う? こんなにドラマチックなことが起こる社会に?

平均寿命が男性も女性も60歳前後の国、インド。貧富の格差、階級格差、宗教の対立などのある社会の、ある程度、実話なのではないかと思ってしまう。

『この本が、おもしろい』(岩波ジュニア新書)に紹介されていた本の中の一冊。多彩な紹介者らが紹介しているほとんどが、物語本ばかりだったのも、驚きだった。あまり、小説や物語本は読まないもんで。
by eric-blog | 2008-02-20 09:25 | ■週5プロジェクト07
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