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ルポ正社員になりたい 娘・息子の悲惨な職場

207-4(999)ルポ正社員になりたい 娘・息子の悲惨な職場
小林美希、影書房、2007

ホームレス中学生と並んで、いま公共図書館で人気の本。題名から著者は団塊の世代? と思うとそれは間違い。2000年に大学を卒業し、ライターとして「日本の下層社会」に焦点をあててルポしてきた人だ。

2007年は就職が上向きというのはウソだ。100社訪ねて、就職が決まらないと嘆く学生は、いる。

個人の問題なのか、求職率なのか、景気なのか、分析はさまざまに可能なのだろうが、彼らにとって事実は一つ。「職が決まらない」である。

個人で「構造的」な問題に立ち向かうことはできない。

その生きのびる手立てとしての「フリーター」や「派遣」の実態もレポートしているのが本書だ。

正社員がやりたがらない「からだに悪い」仕事をやらされる、文句を言うと切られる、サービス残業は当たり前。「よく働く使えるやつ」として正社員の座を目指してがんばっても、その道はない。どんなにがんばって、体調を壊しても保証がない、妊娠がわかると切られる、病気をしても保証がない。

悲惨な労働実態がそこにある。

正社員だからと言って、保証も何もない。ことも本書はあばきつつ。

それで、わたしたちの社会はなんなのさ。

ずっとNGO, NPOでやってきて、貧困女性の収入ラインを維持しつつ、ちょっと収入が多い年には追徴課税されて、あまりメリットを受けているとも思えない健康保険を払いつつ、それなりに20年ほどもやってきた実績が実りつつ、実際は半分の収入は「英語講師」。

学歴が高いのだけが「救い」になっているようなこの状況、この仕事。

では、「わたし」は不幸なの?

とんでもない。充実しまくり。今年は、我が家の立替というプラスアルファがあったので、ちょっと、バタバタ。それも「輪」の広がりがあって面白いと思うし。いろいろサポートを得られてきた身を感謝しつつ。

大きなところでは、ポストモダンに向けた教育ってなんだという課題を見据えつつ、小さなところではシステム思考で改善を積み重ね、日々はこれ感謝、なんでも楽しむ。

20代の頃は、あせっていたなあ。このルポがとりあげた人々全員が「不幸」になっていくのであれば、それは問題だ。しかし、その問題は、どこか人間の「大量生産大量消費」の社会そのものの問題のようにも思えるのだ。

人間的に生き、人間的に働きたいだけなのだ、と叫ぶ彼らが、もっともっと考える必要があるのではないだろうか。高度成長時代に長時間労働した、とか、保証がなかったという人々との違いは、「若い人々」の求めるものや夢とその労働が直結しないことなのだろう。高度成長期には、社会の方向と個人の夢が、一致しているという幻想を不幸にも持つことができたからね。

悩めばいいし、虚構の「正社員」なんて化けの皮をはいでいく力を、獲得してほしいと思う。もし、フリーターの願いが「ICCO」だったり、「とよえつ」だったりするのであれば、それははっきり言って問題が違う。

そのあたりが整理できないのが「都会のフリーター」なんだよね。
by eric-blog | 2007-11-27 18:25 | ■週5プロジェクト07
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