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日本の風景・西欧の景観 そして造景の時代

200-1(971)日本の風景・西欧の景観 そして造景の時代
オギュスタン・ベルク、講談社現代新書、1990

記念すべき200週目に入りました。残念ながら、出張が続いているので、冊数はクリアできそうにありませんが、ぼちぼち読んでやってください。

環境デザインからの流れで、少し古いものなのですが、日本の風景と西欧の景観という対比がおもしろい本を紹介します。環境デザインの対談にも登場していたベルクです。

日本が四季折々の、そして南北に長い列島構造のおかげで、多様な風土、つまり気候・気象、そしてそこから生まれる生物相などの自然環境と人間活動のコラボレーションのことですが、コラボの結果、多様な地域文化を育んできたことは、西欧の人々にも充分認識されているわけです。

片や、西欧は、『森の文明』を思い出していただければ幸いですが、フンババをメソポタミアの人々が制して以来、森というエネルギー資源を求めて、都市という中核がさ迷いつつ、フロンティアに進出しつつ、文明という言語や文化の違いを超えた共通性によって生み出される景観を共有してきているのです。

都市の形が生まれなかった日本。都市が武士という官僚のためのものであった日本。

そして、豊かな風土の多様性。

しかし、それらの多様性も、近代になって「すべてのものは世界化される」中で、風土としての必然性を減少しつつ、消費される景観になっていく。

「造景の時代の黎明期にあって、われわれの前に広がる展望は、われわれの環境が全体として少しずつ芸術作品になっていき、これしてわれわれの文化のもつとも高い価値を生態学的に表現するようになるということである。その時、象徴はわれわれの生自体となることだろう」190

ベルクは、もっと豊富に芸術作品、つまり、何に美を人類が見出してきたかを実例を洋の彼我についてあげながら、芸術と美の発見、その美が象徴するもの、自然と人間の営みを論じている。新書ながらたくさんの写真や図版が入っているものなので、例示をしてもイメージが共有しにくい内容ばかりである。ぜひ、ご一読を。
by eric-blog | 2007-10-12 11:08 | ■週5プロジェクト07
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