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母にむつきをあてるとき 介護 闘いの日々

195-6(942)母にむつきをあてるとき 介護 闘いの日々
舛添要一、中央公論、1998

「むつき」の漢字が出ない。

厚生労働大臣になった舛添さんが、九州と東京、大阪などを往復して、母親の介護を2000年になくなるまでの数年行っていたことは、おぼろながらに知っていた。その経験がさぞや生かされていくのだろうと、初めてこの本を読んでみた。

驚いた。
確かに「闘い」だ。

老人の権利を巡って、「よりよい生」を、在宅介護を、求める著者らと、「ボケは恥じ」「老人の権利は制約されて当然」と考える母と同居してきた姉夫婦との価値観の闘い。

病院の姿勢を巡る闘い。

東京、大阪、九州を結ぶ介護ネットワークのための諸条件を満たそうとするときの「地方分権」、住所とサービスの受託場所が一致して当たり前だとする考え方にもとづいた制度設計をめぐる闘い。

著者は、姉夫婦らも、わたしたちの社会の価値観の犠牲者なのだという。「介護の社会化」ひいては高齢者の人権尊重は社会的な課題なのだと考える姿勢の欠如が、介護を分担する人々を追い詰めていく。肉親によるすさまじいまでの「罵倒」は、老人の権利と介護者の権利とが肉薄する現実を浮き彫りにする。

著者は、在宅介護に力を尽くしながらも、早期発見ができなかった自分の無知を責める。親身族だけではみられない。しかし、親身族が適切な代弁者とならなければ、守られないのも、老人の人権なのだ。親身な人々の存在が、尊厳ある生をまっとうするためには不可欠だ。
by eric-blog | 2007-09-06 08:42 | ■週5プロジェクト07
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