177-3(845) 女たちの大地 [開発援助]フィールドノート
荒木美奈子、築地書館、1992 北の人間として南でどのようにかかわったらいいのか、悩みながらも、ザンビア で3 年間、「変革のためのトレーニング」を中核に、コミュニティ・グループを立ち 上げ て、実践をしてきた著者のお話。 「変革のためのトレーニング」とは、いくつかのフェーズをもった2年間にわたる も の。川喜田二郎さんの「W型探検」などの理論、実践、仮説、改訂、実践、ふりか え りというような流れと考え方は同じである。 わたしたちがシミュレーションと呼んでいるゲーム、ロールプレイや寸劇が、こ こで は「コード」と呼ばれている。歌などもここに含まれる。 ・コード code ・写真連想法 Photo Language ・地域のしくみの絵 Shape of your area などの方法を使って、問題を提起共有し、後半は自分たちでコードを自分たちの 経験 から作る。これがトレーニング・フェイズIの五日間の構成だ。 コードや写真連想法などを使っての討議の進め方は、「きちんとした筋書き」に よっ て進む。112 1. コードの内容を参加者が言葉で表現する。「何がおこっていましたか」 2. どうして問題が起こるのか分析する。(第一分析)「なぜ、そういうことが起 こる のですか」 3. 現実の場面への応用。「こうした問題はあなたの身近でもおきますか」 4. 附随する問題。「この問題が起こることにより、ほかにどのような問題が起 こっ てきますか」 5. 根本的な原因。「この問題の根本原因はなんですか」 6. 行動計画。「それに対して、どんなことをしていけばよいですか」 「ファシリテーターは、海の波のようなものだ。人々とおなじ水からなりたって いる が、状況により飛び上がり、状況がおさまれば、また大海の一部にもどっていく 。」 116 ・listening play 聞く姿勢のトレーニング ・star power 南北の富みの流れ 星組、丸組、三角組でのカード交換ゲーム パウロ・フレイレの「課題提起型」学習理論にのっとって、これらのトレーニン グは 組み立てられている。その実践に触れて、著者は自分自身の受けてきた教育が「 銀行 型」でしかなかったことに気づく。118-120 そして、日本でも課題提起型学習に移行すべきなのではないか、とても控えめに コメ ントを述べられている。 平和教育実践で、学校教育の中にシミュレーションなどが取り入れられていたの が1970年代初め。ゲーム理論、囚人のジレンマなどの心理学的な研究から応用さ れた ものもあった。まさしく「フラワーチルドレン」、日本で言う団塊の世代が大学 に進 学し、教育者となって、学校教育の実践現場に出てきた時だ。 ゲーム理論や社会心理学的なものに触れた人々が現実の、しかも中等教育段階に まで、 その実践を広げようとしたのではないだろうか。 日本の学校教育現場に、「大学進学率3割り超えた」団塊の世代の人々がもたらし た ものは何だったのだろうか。 参加型学習は、米国では教育の人間化、ベトナム戦争への反戦運動、平和教育な どの 流れで出てきている。 そして、ワールド・スタディーズは、英国で植民地支配からの独立運動の中で、 旧宗主国としてどのように国際関係、人種問題を扱うかという課題から生まれた 。 フレイレは1921年生まれ。ブラジルで1964年まで識字教育の実践活動を行ってい た人。 川喜田二郎さんは1920年生まれ。1958年からネパールでフィールド探検をはじめ 、 1967年にKJ法を完成させている。 いずれかの系統だけを記述し、authorizeし、「大文字」の歴史として押し付ける こ とは、これらいずれの学習者中心のパラダイムシフトに貢献する動きの意味を減 少さ せることになるだろうし、研究者がもっとも慎まなければならないことだろう。 では研究者に求められる貢献は何なのか。よりよく、よりひろく、に向けて、続 けて いくことだ。現場から身を引くことなく。広い意味での現場、だが。 なにより欠かせないのは、仕事への情熱、人々への共感、そして謙虚さ。115 と著者はファシリテーターとして言う。現在は、京大アフリカ研究所に所属して おら れる、とまでしかインターネットは教えてくれないが、日本の大学が、日本の教 育現 場にとっても「参加型学習」、学習者中心へのパラダイム・シフトに貢献する人 材を 輩出するようになるのは、いつの日なのだろうか。
by eric-blog
| 2007-04-12 20:39
| ■週5プロジェクト07
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