167-2(792)日本人論に関する12章
杉本良夫、ロス・マオア編著、ちくま学芸文庫、2000 原著1982年 と、書こうとしているかたわらで、何回目の放送on airになるのか「冬のソナタ」。18話目、果たして二人は結ばれるのか? のほとんどがコマーシャル! 再々放送だから仕方ないか。海辺の風景がどこか日本と共通し、どこか違う、おもしろさ。ユジンとチュンサンの血縁関係が絡まりつつ、複雑であるのと同じように、日韓中は近くて遠いのだろう。 杉本さんは『日本人をやめる方法』など、抱腹絶倒な日本人論のある人。文庫版の解説を書いているのは小熊英二。1970年代、つまり日本の高度成長期、鼻息あらくジャパンアズナンバーワンへと駆け上がろうとしていたとき、いわゆる「日本人論」は、その杜撰な研究方法にもかかわらず、「学問的真理」として通用していた、と小熊さんは、この本の当時としての蛮勇を評す。 学問とは、専門家のよろいでしかないのか、それとも普遍的な公共財なのか。 後者であり続けるために、専門家に求められる矜持は何なのか。日本人論に限らず、その挑戦に耐えられない程度の体力しかない、「大衆諸費財」としての論で生き延びているだけの専門家が多すぎる。社会科学の宿命なのか。 「何のための知識か」「誰のための知識か」、日本人論批判に対する根源的な問いが、この本にはあるのだと小熊さんは、2000年にふりかえる。 この本はネウストプニーつながりでヒットしたもの。第三章 日本研究のパラダイム を担当しているネウストプニーさんは、日本に関する研究のパラダイムを次の三つにわける。 ・ジャバノロジー(日本学)型 肯定的で分野網羅的、過去の文化中心 ・日本研究型 専門分野別の研究と政治、経済的に応用可能な知識 ・現代型 from withinからの日本研究、肯定的・否定的の両方、バリエーションと葛藤・コンフリクトへの焦点。 著者は現代型パラダイムの特徴を次の五つにまとめている。086 ・バリエーションの研究 ・コンフリクトの考察 ・プロセスの研究 ・統合的なアプローチ ・説明的で決定要因を求める その代表と言える「日本人は集団主義的か」別府晴海さんの検証。068 「社会は少なくとも三つの文化的に定義された概念構成要素をもっている。第一は「人」の次元、第二は人間関係の次元、第三は集合体の次元である。」 別府さんは、西洋個人主義とはこれらの三つのフェーズを貫くものだと考えられるのに対し、日本では 「人」の次元 「精神主義」 人間関係の次元 「間人主義」 集合体の次元 「日本集団主義」 そして、これらの次元の相互関係を調べ、統合する作業が求められると指摘する。069 ほうらね、ここでも「わたし」「あなた」「みんな」の枠組みで説明できる。 もう一点、わたしが注目した指摘は、「民主的フアシズム」(武藤一羊)と清水知久の「ファシズム」による支配の検証。[第6章 ファシズムと日本] 「官僚統制がじわじわと増大し、それとともに制作決定に対する草の根民主主義の影響力が封じ込められるという形が進行している。」199 「過激派学生の脅威、石油ショック、エネルギー危機、大地震発生の恐れ、成田空港などの農民反乱などを処理するために、政府当局が被支配人民に求める「協力」の範囲はしだいに広く深くなっている。」199 「ファシズムが危機に面した資本主義の一現象であり、その歴史的や区割りは、対抗勢力を中立または粉砕し、大衆の活発な支持を動員することによって、ブルジョア支配を強化することにある。」200 また、日本人の交際関係から、「つきあい・友人と、親戚・親族の二類型があり、「ある個人の人間関係のある時点における特殊なパターンは、その個人のおかれている状況、その人の生活スタイル、価値観、人生に対する態度、およびその人の個人的な計画と密接に結びついている。292 夫と妻がつきあいだけを共有し、友人関係は別々だとすると、それぞれは情緒的支持と個人的な満足感とを得るために、いぜんとして自分の親しい友人、あるいは近い親族を求めることになる。そのような場合、日本で一般的とされている性別による役割分化の実際と理念の両方を強め、永続させることになる。」295 「つきあい」という表面的なところにこそ、性別による役割分化が期待され、やすやすと持ち込まれ、強化するというのはおもしろい。いやあ、Gapの中身にぜひ取り入れたいところだが、おっと、もうすでに入稿されているね。昨日入稿予定だったのが、わたしが参考文献などを増やしたばっかりに、今日になり、いまからこれを入れろなどと言えば、さらに事態は・・・ 佐藤reikoさん、金光さん、ご苦労様でした! 女制性と男制の両方にとって、意味あるジェンダー理解のためのワークショップのすすめになったと思います。 ぜひ、いろいろな所でワークショップを実現していきましょう。
by eric-blog
| 2007-02-01 12:34
| ■週5プロジェクト06
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