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植物の生活型の話

160-3(766)植物の生活型の話 雑草のくらし・野外観察入門
岩瀬徹、全国農村教育協会、2006

植物の生活型という観点から分類したり、自然観察をしたりというスタイルを提唱したのは沼田真さん。そして、555種類の植物について生態図を図鑑としてまとめたのが浅野貞夫さん。このお二人の仕事を後づけながら、生活型という考え方に親しみ、その観点から観察することの意味を伝えるのがこの本。沼田さん自身の著書として入門的なものとして『植物の生』岩波新書が紹介されいる。

千葉県の自然観察のドン、なんだろうなあ。お会いしたことは無いけれど。

自然観察会というと、鳥の名前や植物の名前など「名前」に関心がいくけれど、やはり、一過的なので、それだけで終わってしまう。生活型を通して植物を知ることで「くらし」に近づくことができるのだという。植物のくらしに近づくことを手がかりにして自然のしくみを理解しようというもの、なのだそうだ。20

物事を知るということは、いずれにしても知識や言葉、構造的な把握など、時間がかかり、なんらかの記憶保持が必要になることだ。博物的になることが、「知る」ということの一つの側面なのだと思う。

生活型というのは、型というからには類型なのである。

植物を一年草、越年草、多年草、低木・高木などと生育期間でわけることもできます。そこに繁殖の仕方を加味したのが、林一六さんの『植物生態学-基礎と応用』(古今書院、2003)の八類型。そして、二次遷移としては、 31-32
一年生草本期優先種の種は重力散布型、芽生えの耐陰性低い。
二年生草本期優先種の種が軽く、風散布型。芽生えは耐陰性。
種子多産型多年生草本期風散布型。芽生えは耐陰性。
種子少産型多年生草本期種は少産でやや重い。芽生えは耐陰性。
低木期軽くて多産、風散布。芽生えは耐陰性は高い。
風散布型高木期
動物散布型高木期芽生えから種子生産まで10年以上。
極相期小型の堅果

おもしろい視点として、植物の陣取り合戦を「陣地強化型」と「陣地拡大型」に分けているもの。 『雑草たちの陣取り合戦』『雑草生態学』根本正之 32

あるいは生活不適期をどのような姿で過ごしているかで分類した「休眠型」37

沼田さんの生育型、繁殖型は次のようなものだ。

直立型eerect form
ロゼット型rrosette form
一時ロゼット型prpartial-rosette form
偽ロゼット型pspsedo-rosette form
分枝型bbranched form主軸がはっきりしないもの
ほふく型pprocumbent form
叢生型ttussock form
つる型lclimbing or liane form

で、わーい、わーい、誤植みつけちゃったあ。eである直立型の絵に、tってなっている。42  これぞ本当の「誤植」なんてね。この誤植は悔しいだろうなあ。え、植物が間違っているわけじゃないですよ。

花式というのも、おもしろい。52
がくKcalyx
花冠Ccorolla花弁はpetal
雄しべAstamen(雄蕊、複数形はstaminaスタミナ、っておもしろーーーい)
雌しべGpistil(雌ずい)

それぞれの数で花式を表現するのだそうだ。
では、応用問題です。これなんだ? パソコンに∞という記号があることにも感激ですが。

K∞ C(5) A(5) G(2)

いやあー、花式だけからは、わからないね。

なぜだか、英語の頭文字ではないのか、それとも、花冠、花弁、ずい、しべなど、また別の単語があるのか、わたしごときの辞書ではおっつかない。

[答えはタンポポですが。]



これらの考え方を授業に活かしていたのが片野伸雄さん、福島県の高校の先生だそうです。

校庭の雑草の分布を10班に分けて、校庭を観察する。割り当て植物は以下の通り。観察には標本を準備する。97

セイヨウタンポポ
ハルジオン
スギナ
オオバコ
カキオドシ
イネ科の多年草
シロツメクサ
ヨモギ
オオイヌノフグリ
タチイヌノフグリ
ヒメジオン

まずは、分布図からわかることを考える。そして、生活型の観察と分析から、さらに分類や観察を続ける。「踏みつけ度の強弱と生育型」の関連などの発見をまとめる。

いやあ、浅野さんの図鑑は入手して、デザイン図にでも使いたいほど、美しい。
by eric-blog | 2006-12-09 14:53 | ■週5プロジェクト06
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