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証言 未来への記憶 アジア「慰安婦」証言集I

144-3(691) 証言 未来への記憶 アジア「慰安婦」証言集I 南・北・在日コリア編上
WAM編、明石書店、2006

8月13日から来日し、今日まで「靖国No! キャンドル行動」に参加してきた戦時暴力サバイバーである三人の方々との交流会が、WAMアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」で開催された。資料館でのイベントは、いつもいっぱいだ。と言っても50名ほどもいたのだろうか。

韓国にとっては解放記念日、日本帝国軍にとっては敗戦日、あいまいに言うと終戦記念日の今日、小泉首相は靖国神社に参拝した。どのように一日を過ごそうかと迷ったが、ハルモニたち側からの話しを聞くことにした。

ハルモニというのは年上の女性一般を「おばさん」と親しみをこめて呼ぶ表現だ。彼女たちのこれまでの苦労を労い、不特定多数の日本軍人との性的な関係という過去があることによって味わった孤独、排除、下げすみへの恐れ、隠していることが暴露された時に「女」だけが被る不名誉への脅えなどを、我が身内の経験として抱擁しよう、受け止めようという気持ちを、精一杯、彼女たちに伝えようとする親称。

『しがまっこ溶けた』に紹介されている桜井哲夫さんの韓国訪問時の経験。ナンデムンの市場を歩いていた時、駆け寄ってきて手を握り「アボジ、苦労してきたね」と抱き着いてきた韓国人女性のエピソード。ハンセン氏病の後遺症の残る桜井さんの姿に、これまでの経験を読み込めばこその行動だ。

大学の授業で、アクティビティ「しがまっこ溶けた」を行った時に、「最初に写真を見た時に、桜井さんがどのような経験をしてきたかについての想像力がない自分が、鈍感な人間だと分かった」という学生の発言に、はっとさせられたことも重なる。

韓国中国政府は、もはやこれからには関係のない小泉首相の参拝に、終戦記念日だからとこれまで以上の反応を見せることはなかったようだが、ハルモニたちの痛恨の思いは痛い。1993年、韓国政府が生活安定支援法を制定した時、申請・認定されたのは230名。13年の間に、すでに105名が亡くなったという。

1989年から、いわゆる「慰安所」の実態調査が韓国、日本の女性たちの努力で始まった。1991年、自らが実名でその過去を認め、語り始めた金学順さん。1997年亡くなる。6年間の叫び。「青春を返せ!」

過去を認めれば、恨みが募る。なぜと、取りかえしのつかないことを止めどもなく心が巡る。ないことでさえあればいっそ楽なのは、日本の誰彼や、慰安所を作った人や拉致した人や、使った人ではない。彼女たち自身なのだ。

彼女たちの体験をないことのように言う鈍感さはどこから来るのか。日本帝国軍人として戦地に赴き、慰安所を建設し、女性たちを調達し、存在を知っているであろう、使ったであろう200万人もの、まだ生存している、81才以上の男たち。水木しげるさんや少数を除いて、語らない。

同じひとつことに対する圧倒的な非対称性。非対称性に対する想像力の欠如。それこそがジェンダーなのだ。

わたし自身も鈍感だ。時々には、心からそのことを伝えようとする生身の人々に接しなければ、行動への意欲も動機も薄れてしまう程度の人間だ。だからこそ、自分の心を磨く努力を、常に心掛けたいと思う。

出たばかりのこの本は、表題にある通り、これから何集かにわたって出版が目論まれているものだ。12人のハルモニたちの証言と解説で構成されている。\3,000.

その他、購入したものは『李容洙さん証言録』『消せない歴史 日本軍「慰安婦」』『戦時性暴力をなぜ記録するのか』など。

李容洙さんは、今日の三人の中の一人。70才目前で大学にも進み、国際法などを勉強してきた努力の人である。「みんな、わたしが若い若いと言ってくれるけれど、77より78才、78より79才とからだは弱くなる。それを心を鼓舞して、がんばっているのだ」とおっしゃったのが、胸に迫る。求めるものは、戦争犯罪の認定、真相究明、公式謝罪...。

自分の父親が靖国神社に合祀されていることを語ってくれた韓国の映画監督。

合祀の取り下げを拒否し、A級戦犯を合祀し、他者を忖度することのない靖国。問答無用の「お国のため」の姿がそこに象徴されている。ま、宗教っていずれも唯我独尊だけどね。

■わたしは日本軍「慰安婦」だった 日本にも戦争があった
李容洙(イ・ヨンス)・高柳美知子、新日本出版社、2009

■朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実 文化人類学者が読み解く『慰安書日記』
崔吉城、ハート出版、2017
東亜大学教授によるもの。慰安所を経営していた男性、朴氏の日記から、慰安所経営はビジネスだったことが読めると。日記からは慰安所に連れてこられた経緯はわからないが、慰安婦もビジネスでろうという本。

by eric-blog | 2006-08-15 19:12 | ■週5プロジェクト06
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