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共感覚 もっとも奇妙な知覚世界

143-3(686) 共感覚 もっとも奇妙な知覚世界
ジョン・ハリソン、新曜社、2006
SYNAESTHESIA, The Strangest Thing, 2001

ずいぶん前に図書館に予約していて、なぜ予約したのかすら忘れてしまったけれど、
タイトルが誤解を呼ぶ。「共」感とか、「共」生とか、「共」という漢字には、他者
との間で共にという意味が強い。そのためにわたしはこのタイトルを見た時に、他者
との共感に関するものかと誤解したのだ。

syn-という接頭辞は「統」と訳されていることが多いものだと思います。しかし、
「統感覚」と訳すと、感覚が整合的に統御されているように思われるので、内容が違っ
てくる気がします。

というのも、ここで扱っているのは、音を聞いたら色が思い浮かぶ。色聴と呼ばれる
感覚間の相互関係のことなのである。とすると「響感覚」あるいは「随伴感覚」と言っ
た方がいいのかもしれない。本人はまったく統御している感覚もないのだから。(ち
なみに、味覚と色、痛みと色という響感覚もあるらしい)

そして、その感覚は遺伝なのか否か、どのような人に、どんな時に起こるのかを調べ
たのがこの本なのである。

・女性に多い
・伴い方には個人差が大きい
・読むのではなく、聞こえる音に対して色聴が起こる
・2000人に一人くらいはいる
・記憶イメージの連合が行いやすい
47&264

そして、本はわたしたちの感覚というものは、学習が早いということのさまざまな実
験を示していく。あいまい図形についての解釈を一度聞くと、それにしか見えなくなっ
たり、痛みすら学習してしまうというようなことについてだ。

おもしろいなと思ったのは色と音の対応関係は個人差が大きいにも関わらず、『怪獣
の名前はなぜ、がぎぐげご?』で示されたような語感対応に等しいものがあるという
ことだ。Mが赤。だからこそ、まっかなウソは赤いウソではなく、まっかなウソとい
うのだなあ、と感じ入った次第である。113

共感覚者であった有名人列伝で紹介されているのは男性ばかり。ま、いいか。

「点字読みは人間の技能としては新しく、たった2-300年しかたっていない。私たち
の種の歴史という点からは、目を使って読むというのも、比較的新しくて、数千年よ
り古くない。このことからして、ヒトの脳が読みに専門化しているということはなさ
そうだ。...ヒトの読みの能力がすでに存在していたいくつもの認知技能に助けられ
ているということはありうる。例えば、見る能力や言語能力だ。これらの能力は、後
頭葉や側頭葉の神経構造に宿っていることが知られている。」285
「こういうわけで、目の見えない人が点字を読むとき、脳では触覚情報の処理を助け
るために、「視覚」皮質が使われているらしい」287

などの辺りは、まだまだこれからの研究らしいが、とてもおもしろいねぇ。

ね、共感覚、などでははなく、人間の「統感覚」について、研究すべきなのだという
ことがわかったでしょ?

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by eric-blog | 2006-08-12 15:08 | ■週5プロジェクト06
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