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美しさという神話

141-2(676) 美しさという神話
リタ・フリードマン、新宿書房、1994
Beauty Bound, 1986

すでに旧聞に属する内容であろう。流れ的には『誰が日本の森を作ったか』に行きたかったのですが、それはまた明日明後日の名古屋出張の後ということで、とりあえず、「出かける準備に時間がかかる」女子大学生たちの顔を思い浮かべながら、こちらを先にレポートします。

美人コンテストの歴史は1921年。日本で始まったのは1950年代ではなかったか。八頭身美人という基準が取りざたされたのを覚えている。そして、1970年代にフェミニストたちが最初の抗議活動の場として選んだのも美人コンテスト。

この本は、女性のからだ、女性の美についての観念が「男性中心」に作られていて、それこそ、二重拘束、ダブルバインド、周りの言う基準を自分自身も取り込んで、自分をひげする、自分を受け入れられない、自分を認められないという心理がうまれると言うのです。
「わたしたちは皆、男であれ、女であれ、女性の身体に脅迫的な関心を持つことを助長するシステムによって縛られているのだ。」12
「抑圧的な固定観念を打破しようと闘っているからには、理想化された女性美と言うものは、その固定観念の一部と見なされなければならない。」12

しかし、それは女性だけでもないだろう。と思うが、著者は次のような研究をあげている。

・被験者に写真を見せて評価させる実験では、多くの場合、女性の写真は男性の写真よりはるかに魅力的だと判定されている。26
・年配の男性は、なお男らしいと見なされるのに対し、年配の女性はあまり女性的でなく、魅力的でもないと判定される。27
・若い女性の場合、美しさは、本人の幸福度や自負心と正の相関関係を持ち、神経過敏度と負の相関関係を持つ。男性には、精神的特徴と外見の間には何ら関係が見つかっていない。27
・成人女性の半数以上が、自分は昔お転婆だったと言った。成長期の少女では四分のさん近くが、自分をお転婆だと分類した。204
・どちらの性別だったらいいと思うかというテストをすると、男の子で女性を選ぶのは10人中一人、女の子は三人に一人が男性を選ぶ。205
・お転婆だったことがない女性は、派手な色の服を好み、結婚願望が強く、職業志向が低い。208
・大学生の男子の75%は自分の全体的な外見や顔の特徴を気に入っている。女子は45%。
・ニュースキャスターの男性は半分以上が40歳以上、女性で40歳以上は3% 325  
・女性ニュースキャスターの顔にはしわがない。


「人間は、知識を単純な二つの概念にまとめてしまう傾向がある。...二分論は多様性に対応するのに役立つ。」36
「女性を賞賛する理由となるのは、仮定としての女性の美しさであるが、まさにそれこそが同時に、女性の劣等性を示す烙印なのである。...女性は美しさのゲームを止める自由をもっていない。...美しさのゲームを続ける女性もまた、同じことを証明している。」ユーナ・スタナードからの引用、95
「おとぎ話の登場人物たちは、善くも悪くも極端であり、子供達にわかりやすい性格になっている。」110
『弱者の力』エリザベス・ジェインウェイからの引用156
「弱者の間に無力さを温存させる要因・・・弱者の生活が、平凡な取るに足りないものであること。・・・孤立感・・・自信と自尊心の欠如」
美しさの儀式はこれらの3つの傾向を助長すると著者は言う。
タルコット・パーソンズからの引用170
「美しさは、女性が職業の世界から閉め出されていることに対する埋め合わせである」
ピアジェの理論より194
「子供は、自分の体験を理解しようとすることによって、生活に適応しようと努力する。我々は、自分自身や自分の環境に関する概念を構成することによって、頭の中に世界を再構成しようとするようにプログラムされている生物だ。...頭の中のフアイルカードは、社会的「現実」になるべく近づくように、何度も書き直される。男らしさとか女らしさと言う概念は、知的成長過程の一部として習得されていく。」
「矛盾する体験の中から知的な秩序を生み出そうとする基本的な欲求」195

「外見が美しいという幸福は複雑なものだ。...妙齢の美女は、セックスの獲物にされやすく、...両親に見せびらかされたり、...(美しさの)社会的な特権を得ようとする友だちに「利用」されたり、...外見しか見てもらえなかったり」210

特別な力がある人に共通していることだと思うけどなあ。美しさも、それぞれに違ってもっている、備わっている、獲得した力の一つなのだよね。力には魔がつきもの。

「人間の社会には自然なものなどない。...女性は...彼女のからだや彼女と世界との関係を修正した他人の行動様式によって決定されているのである。」シモーヌ・ド・ボーヘヴォワールより283

「女性が成熟して知恵や資格を身につけても、それらは彼女のしわや脂肪の埋め合わせにはならない。」325

最近、「教室の中の世界探検」でつながりの中に国際標準探しをしています。「からだ」は国際標準じゃないと言う発言が出ると、本当?美の基準や標準体重、健康の基準だって、国際標準があるよね、というひっかけをし、しかし、一人ひとりのからだこそが個性の源とひっくり返しもし、するのですが、みなさんはどう思いますか。

いずれにしても、個人差も大きいことを前提にしながらも、キャロル・ギリガンの『もうひとつの声』で女性が関係性の中でアイデンティティを築くというのについても、他者との共感性に動く脳内分泌物の役割などから考えて、ものの見方の価値観が変わってきているようには思う。「美しさ」の競争や儀式に取り込まれなかった有名人としてジョージア・オキーフェがあげられている。
by eric-blog | 2006-07-26 09:55 | ■週5プロジェクト06
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