青土社、2018、
1979年に最初に翻訳出版されたものの再刊。
『未来を学ぼう』を出版した時にも読んだのですが、今回改めて読んでみて、人が成
長する時に起こることってなんだろうと考えてしまいました。
・3才4才で離婚した親元を離れてママと呼ぶようになる祖母のもとへ兄妹が預けられ
る。
・そこは南部で、黒人と白人のコミュニティが完璧に分かれている。
・黒人の祖母は万屋を経営し、人に金も貸したりなど、信仰心も篤いが人望も厚い。
・黒人同士は謙譲表現によって「シスター」「さん」づけで呼び合っている。
・白人は黒人を年齢にかかわらずファーストネームで呼ぶ。
・子ども心に差別的な扱いにショックを受けるが、大人たちは誇りは失わないが、事
態は受けいれており、さらには変えようとしないという態度という意味で保守的です
らある。
・祖母はBy the wayところで、という表現すら、聖書の「神の導きによりて」という
表現と同一であり、それ以外の意味での使い方は冒涜だとして、マヤを罰するほどの
人。
・8才の時、一度、シカゴの母の元で暮した時に、母の同居人から強姦され、そのこ
とで裁判がなされ、男は母の身内たちによって、執行猶予で釈放されたその日に死体
に。しかし、強姦にいたるまでの自分の心にあった寂しさや男への親密な気持ちを口
にすることができなかったという「ウソをついた」という罪の意識のため、寡黙に。
その寡黙さゆえの陰気さに、再び祖母のもとに戻される。
・読書が好きで、文章の上手な彼女に、声に出して読むことを教えてくれた人。
・12-13才で兄妹はふたたび母と、今度はサンフランシスコで暮しはじめる。
・人種の混交と公民権運動、第二次世界大戦に伴う日系人の居場所に生じた真空に入
り込んだ黒人たち。
・父を介してのメキシコとの触れ合い、父の愛人との不和とケンカ沙汰、家出、そし
て発見した子どもたちだけで生きる廃車置き場での一ヵ月。
・17才、高校卒業と同時の出産。
混乱と混交の中で成長するというのは大変なことだよなあ。
とはいえ、マヤを支えているのは「最善のことが起こることを期待しながら、最悪の
事態にも備えている」ために、あらゆる事態に対応できる母の存在なんだろうなあ。
1928年生まれの著者の自伝的小説。
2006年6月9日投稿
2014年5月28日 死亡。
PLTガイドに引用されている詩はこちら
http://ericweblog.exblog.jp/5850388/
『未来を学ぼう』に紹介されている「カゴの鳥」