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誰も知らない男 

112-8(531) 誰も知らない男 なぜイエスは世界一有名になったか
ブルース・バートン、日本経済新聞社、2005
The Man Nodody Knows, A Discovery of the Real Jesus, Bruce Barton, 1924

アメリカのベストセラーの歴代何位かに入るといわれる本である。広告代理店で大成功を収めた人物の書いた本である。何種類もの類本が出された本である。評価は定まらないし、カテゴリーもできない本である。なぜならば、これは永遠のベストセラー、最大の出版部数を誇る新約聖書、そのもののリメイク版であるからだ。

訳者の小林保彦さんは、これを「広告業界で成功した男が書いた『世界で永遠のベストセラー』になるための」ノウハウ本として、1924年版を改訳して出すことにしたという。

わたしは、これを読んで、筆者自身の、もっとナイーブな、「日曜学校での話しはとーーーーてもつまらなかったけれど、ホントなの?」 えっ、イエスってもっと面白いやつだったんじゃん!!! という思いに共感する。

もう、章立てがそれを示している。

グッド・リーダーだったイエス
体力派だったイエス あの青白い、くたびれたイエス、後世の芸術家による姿を信じるな社交家だったイエス 人生を愉しんだ人

そして、たった三年の布教活動で、たった11人の弟子を育て、その彼らも数年で死に絶えたにもかかわらず、二千年にわたって語り続けられた人。

その真髄はどこにあったのか。

「神」ではなく「紙」が答えだった、という冗談を言えないのが著者の限界であるのだが、その魅力を著者は次のように読み解く。そして、それはこれまで聖書をところどころに読んでいたわたしにも、響くものなのだ。

新約聖書には、イエスが律法学者やユダヤ教の既存の宗教家と対立することを述べる部分がたくさん出てくるのであるが、律法、すなわち旧約聖書に何が書いてあるかを解釈し、人に伝える人々の挑戦をイエスがどのようにかわしたかを、見てみる。
律法は、「食べてよいものと食べていけないもの」について戒めているが、イエスは「口に入るものによって汚されることはない。口から出るものによって汚されるのだ」と。
パリサイ派の人々が、安息日にわなを仕掛けた。安息日には何もしてはならないという律法を、イエスがどのように対処するか。イエスは言った。「安息日に許されているのは善を行うことか、悪を行うことか。命を救うことか、殺すことか」100
そして、次を読むと、本当に、わたしは新約聖書を読んだことがあるのだろうかと思わされてしまう。そういう解釈があったのかと。69
「人生を無駄にするには、二つの方法がある。一つは無責任に生きること。...しかし、、喜ばず、与えようとしないことも、神をないがしろにするものだ。」

カラスですら、というのはカラスに対して失礼な言い方だが、神はそれを満たす。人間もその存在そのものに対して、神は満たしてくれている。そのことを楽しみ、喜ぶことが、もっとも大事なことなのだ、とイエスは言っていたのだと、少年時代に退屈な日曜学校を過ごした著者は指摘するのだ。まったく、多様な解釈を許すがゆえに古典となったものどもときたら。

著者自身が、あまりにも「広告業界」的な解釈で最初のバージョンを書いたので、第二次大戦後には、ほとんどキリスト教布教用バージョンのように書き換えたというエピソードもおもしろい。

確かに、He sold it well! であったということについては異論は唱えようもない。
同じ神に発するコォーラァーンはこれからどうなるのだろうか。


バートンがまとめたイエスの四大テクニック
1. 文章を圧縮せよ
2. 言葉をシンプルに
3. 誠実に語れ
4. 何度もくり返せ
by eric-blog | 2005-12-09 23:36 | ■週5プロジェクト05
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