私を最後にするために イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語
The Last Girl
ナディア・ムラド、東洋館、2018
3260冊目
2018年ノーベル平和賞、2016年ヤーツラ・ハヴェル人権賞、サハロフ賞受賞。
ヤズィディ教徒のための人権活動団体ヤズドで活動を継続している。
2014年6月に近隣がISISに制圧され、故郷の村コーチョにやってきたのは8月のこと。
男性を皆殺しにし、若い女性を母親から離し、性奴隷にすることは、ISISが計画的にやったことだと著者はいう。
若い女性は、戦闘員のための褒美として分配されるのだ。
裁判所でイスラムの祈りを言わせ、「サビーヤ」という身分を確定することすらするのだ。彼らには彼らのルールと手続きがある。しかし、それが人道的なものだという保証がないだけだ。
サビーヤはすべての情報が管理され、逃げ出せば指名手配され、元の持ち主に返される。
三ヶ所ほどを連れ回され、所有を変えられた。どの所有者も性奴隷の扱いは同じ。
モースルという街にいた時に、男が買い物に出たすきを見て、逃げ出した。一番最初の所有者から逃げ出した時は失敗し、その結果は集団レイプと転売だった。その記憶からカラダが凍る。助けてくれる人などいるのだろうか? ヤズディを?
ナディアが出会った家族が特別なのか。助けを求めてきた娘を掘り出すことはできないと、その一家は一家の息子の婚約者が、故郷の知り合いを訪ねて行くのを連れて行くのだという風を装って、彼女をISISの支配の外へ連れ出してくれた。ものすごい危険を犯して。
ヒジャーブをかぶるという習慣が、彼女を助けた。検問所には、彼女自身の写真が、指名手配者として貼られていたというのに。
その後、彼女は同じような境遇の女性がいなくなるように、活動を続けている。
レイプは民族浄化の戦略として戦時には行われてきたが、性奴隷としてここまで組織的に「褒賞」として分け与えることまでしているというのは、人道に対する罪である。
著者は、ISISの戦闘員らに法の裁きを受けさせることを夢に見るという。
ナディア、あなたの夢は、わたしの夢です。処罰がなければ、再発防止はあり得ません。一日も早く、ISISに法の裁きが下される日が来ることを。そして、女たちが、どのようなレイプ犯に対しても「いつか必ず裁かれるのだから」と自分の尊厳を保つ心を持つことができるようにすること。必ず。
その思いは映画『Calling the Ghost』を見て以来の、わたしの強い思いだ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Calling_the_Ghosts
1992年のセルビアで起こったこと、『Calling the Ghosts』1997年の作品。
https://www.youtube.com/watch?v=YFc0o0cVnwU
2017年「今年の一冊」より
https://ericweblog.exblog.jp/238128138/