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原発事故 事故が起きて何が変わったか、変わらなかったか

原発事故 事故が起きて何が変わったか、変わらなかったか

西尾漠、七つ森書館、2018

3220冊目


2017年の『日本の原子力時代史』に並ぶ、原子力事故の真相と深層に迫る集大成。

https://ericweblog.exblog.jp/238812870/

事故は原発が開発された1950年代から起こっている。原子力を人間の技術がコントロールできるのであれば、いまの問題は起こっていない。技術は試行錯誤によって進歩するものだというのが研究者の立場であることは、フクシマ以降、素人は木で鼻をくくったような御用学者の言説や中立的な科学者の言動にも、思い知らされてきた。

鉄道事故も同じだ。事故が起こるたびに再発防止、新たな技術開発、そして管理基準の強化が図られる。しかし、開発者にとっては「100万分の一」であっても、当事者にとっては「一分の一」なのであることは、どの科学技術でも同じことだ。

https://ericweblog.exblog.jp/238849662/

著者によるこの本の構成がとてもわかりやすい。

I. 事故の教訓は1950年代から (3)

II. 事故が地元の意識を変えた (6)

III. 事故で変わる原子力行政 (2)

IV. 安易な事故対策は失敗する (3)

V. 事故に終わりなし (4)

VI. 事故が「原発銀座」の怒りを呼ぶ (4)

VII. 今に続く事故隠しの「どうねん体質」 (2)

VIII. 福島原発事故は、事故が予言していた (4)

IX. 事故の軽視が新たな事故を準備する (4)

X. 防げなかった原発震災 (3)

合計35の事故と事件が年代順に並べられており、見出しのまとめとなっている。

福島の事故は、1986年のチェルノブイリ事故(V)に並ぶ国際事故評価レベル7である。

文明の「闇」と「病み」は誰が負担すべきか?

ヒロシマ・ナガサキの原爆病から73年、水俣病も50年。治療のない「文明病」が今も続く。次世代への影響も未だ不明だ。

「ヒロセタカシ現象」とは、1986年のチェルノブイリ事故以来の反原発運動の盛り上がりに対して、電力会社などの危機感として名付けられたものだ。

198710月から884月の反対運動の間に作られた東京・関西両電力が作成した内部文書。彼らがその時の運動の特徴としてあげているのが次の三点だ。119

1. 広瀬隆を中心とする感覚的な反対運動と今日的メディアの活用

2. 婦人を中心とする草の根的反原発運動拡大のおそれ

3. 自然食グループ・消費者グループと既成の反原発団体との結びつき

動力炉・核燃料開発事業団職員有志の会会誌『未萌』第7(19886 )「反原発運動関連資料」に掲載されている「原子力後方の概念図」には

「電気事業連合会、資源エネルギー庁、科学技術庁、日本原子力文化振興財団、日本原子力産業会議、自治体、外部アドヴィザリースタッフも加わった「原子力後方推進組織」」が作られていたことが明示されている。120

チェルノブイリ事故後の日本国内の動きのもう一つが「汚染」に対する規制強化だ。それについて、小出裕章さんの意見が紹介されている。

「日本の国に対して、汚染が国内に入らないように規制強化を求めることについては私はどうしても同意できない。日本が拒否した食糧は、他の誰かが食べさせられるだけだからである。即ちこれまで原子力を利用してこなかった国々、それゆえに汚染を検査することすらできない国々、貧しく食糧に事欠いている国々が汚染食料を負わされるのである。

原子力開発によるデメリットは、誰を措いても原子力を推進している国々こそが連帯して負うべきであって、間違っても原子力を選択していない国々に負わせるべきではない。」(『放射能汚染の現実を超えて』北斗出版)

195441日、日本初の原子力予算が成立。

原子力応援団が生まれた。288

日刊工業新聞社: 月刊誌『原子力工業』1955年創刊、201111月休刊

東京電力情報誌『SOLA1989年創刊、2011年夏号で休刊(朝日新聞OBが編集に関わる。編集長: 江森陽弘;数百万円の報酬?)

エネルギーを考える会: 1975年発足『エネルギーいんふぉめーしょん』20123月号廃刊

財団法人福島原子力広報協会: 1981年福島県と周辺自治体の出資で設立、2012216日解散

いやいや、もっとあるでしょう。原稿一本数十万円て聞いたけど?

週刊現代2011820-27日合併号で「東電マネーと朝日新聞」の特集しているらしい。

事故直後の混乱で、推進側からも色々な情報が出てくることが、いずれのケースでもよくわかる。

西尾さんが言うように、そして他の「文明病」が半世紀を超えて示しているように、「放射能災害の被害は時間とともにむしろ拡大する。事故の後始末にも終わりは見えない」のだ。109


by eric-blog | 2018-11-16 11:19 | □週5プロジェクト2018
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