告発 児童相談所が子供を殺す 山脇由貴子、文藝春秋新書、2016 3189冊目 人は優しくされた分だけ、人に優しくできる。 すべては大人の責任だ。大人が、子どもにだけでなく、身近な大事な人に優しく接してあげる姿を見ることが、子どもが自分の幸せを望む第一歩となるのだ。 あとがきに書かれている著者の思いだ。それほどに辛い思いをして来ている子どもがたくさんいる。 問題は児童相談所で意思決定のち遊郭を担っている児童福祉司が公務員の異動先の一つで、数年で入れ替わる部署の一つでしかなく、配置されるのになんの資格要件もないことだ。 「公務員の常で」と書くとお叱りを受けそうだが、批判に弱い。声を荒げて要求を突きつける人に弱い。事なかれ主義で自分の決定によって声に抗うことをしない。ということは?・・・・・虐待親の要求が児童のニーズより優先される構造が自ずと出来上がってしまう。 そのような現場にいて、著者が見た、経験した、感じた葛藤と矛盾を「告発」しているのがこの本だ。 児童相談所は東京都に11箇所、全国で230箇所、職員数は年々増えていて2829人(平成26年4月1日)。同年の「虐待相談対応件数」は88931件。 職員一人当たり31件! 対応するのは虐待だけではないのだから、大変な件数だ。 相談したいと思っても予約が一ヶ月も先ということもあるという。45 調整しなければならないのは親だけではない。学校もだ。学校も多くの子どもを抱え、児相には思い余って相談するのだが、上記のような状況。 子どもにとっては言葉での暴力、物理的暴力だけでなく、DVを目撃していることも重大な虐待だ。 学校で見せる「元気な姿」は過剰適応の結果かもしれない。88 養育放棄=ネグレクト、子どもの世話を親がすることができない場合ですら、児相の動きは鈍い。 食事を与えない、衣服が汚れている、家が汚い、夜間親が不在である、医療を受けさせない、など。 保護に踏み切らない「情報収集能力不足」を含め、児童福祉司の力量不足が問題の核心だと、第4章は厳しい。 親の言い分を鵜呑みにする、頼りがないのはいい証拠と勝手に思い込む、 定期的に面接しても、虐待防止のための指導ができない。「殴ったらこれだよ」と手錠をかけられる仕草をして、暴力を抑止する指導なんてお笑い以上にブラックだ。105 正義感の言葉を振り回す児童福祉司もいる。叩く、注意する、叩く、注意する、の繰り返しだ。106 こども家庭支援センターとの連携も課題だ。 離婚再婚が増えている中、義父からの暴力や性的虐待もある。 児童心理司として身近で見て来た著者の葛藤は大きい。 貧困救済を出自として作られた児童相談所が、変容していくためにはどうすればいいのか。貧困救済であれば、「公務員」が公的な支援につなげていけばよかったのだ。しかし、虐待は? 新たに加わった「虐待への取り組み」についてはどうだろうか? 第6章「児童相談所が虐待を無くせない理由」は述べられているが、明確な対策はない。 警告の書を受けて、誰がどう動けば良いのだろうか? 個人的な努力に帰されてはならないとと同時に、個人個人の力量アップも、当然必要なのだ。
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| 2018-10-11 09:51
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