文明 西洋が覇権を取れた6つの真因

文明 西洋が覇権を取れた6つの真因

Civilization The West and the Rest

ニーアル・ファーガソン、勁草書房、2012、原著2011

3130冊目


競争

科学

所有権

医学

消費

労働


の六つの西洋文明の特性が、現在の西洋文明優位の状況に繋がっていると著者は言う。もちろん、この大胆な仮説に対する反論や批判は轟々だろうが、わたし自身、常々、考えてはいたことなので、これらの複合的な視点の整理は面白かった。単に、帝国主義を批判するだけでは問題解決にはならない。


「その衰退と滅亡がどれほど目前に迫っているか」を正確に読むことが必要なのだというのが著者の関心である。51


イスラム文明が西洋地域より優れていた時代があった。中国の発明が世界に貢献した時代があった。しかし、西暦1500年以降、世界各地の文明が西洋に従属するようになったこの変化を直視すべきだと、著者は言う。


所有権の章では、著者は新世界の存在に注目する。先住民との関係では葛藤のある事柄ではあるが、西洋の制度は移住してきた人々に「無住」の土地の所有権を認めた。


土地は誰のものか。


西洋がどのように優位性を獲得して行ったか。

競争というのは、政治的にヨーロッパが細分化され、競争に熱心な企業がひしめいていた。第1章「競争」で印象的なのは、バスコダガマの遠征に象徴されるように、ヨーロッパ諸国が争うように世界に進出して行ったのに対し、その頃科学技術でも政治体制でも世界のトップにあった中国では、永楽帝がなくなった後、鄭和が失脚、あっという間に内向きになって行ったことである。新大陸発見をしたサンタ・マリア号の五倍近い大きさだったという120mもの長さの船を300隻も揃えた鄭和の世界航海は突然終わったのだ。68

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それに対し、ヨーロッパでは対立が激しかった。1500年から1800年までの間、スペインは81%の期間、イギリスは53%、フランスは52%の期間、外国との戦争状態にあった。82


ヨーロッパの君主たちはこぞって通商を奨励し、ライバル国との植民地獲得競争に狂奔した。84


第二章 科学革命 では、これもヨーロッパよりもはるかに科学技術的にも進んでいたイスラム文明圏に対してヨーロッパがいかに勝利したかが描かれている。

そのポイントは1683年のウィーン包囲網。スレイマン大帝が支配したオスマン帝国の軍隊が迫る。しかし、この時、伸びすぎた兵站は機能不全に陥りつつあり、軍隊を率いるカラ・ムスタファは最後の攻撃を仕掛けられずにいた。

それを巻き返したヤン3世ソビェスキー国王。多国籍混成軍を率いてオスマン軍の野営地を総攻撃。110


3章 所有権

新世界に移民した人々の戦闘的なプロテスタンティズム。法による徴税。所有権。その所有権は、土地だけでなく、人間にも、奴隷という形で及んだ。

ブラジルの奴隷の平均年齢は23歳。残酷な扱いの結果だ。228


4章 医学

ヨーロッパがもたらしたキラーアプリケーション。それは近代医学だった。病の克服。つまり、帝国主義の支配は、病気を根絶するという「文明の恩恵」として正当化されたのだ。

そして、医学の背景には研究と教育がある。

その研究対象となったのが、植民地に見られる新しい病であり、人種であった。日本軍731部隊と同じく、残虐な方法で現地人が「研究」された。296

人種的にも「劣っている」ことを証明しようとしたのだ。


5章 消費

産業革命によって大量生産が可能になり、消費社会が出来上がった。


6章 労働

大量生産を支える労働力、集約的労働生産性、貯蓄の増加、資本蓄積の継続。


六つのキラーアプリケーション。


しかし、「西洋」は縮小しつつある。


西洋は1950年代には世界人口の2割を占めていたが、2050年までには1割に減少。言語、宗教、領土、GDPいずれも減少している。488


西洋文明はどのように終わりを迎えるのだろうか?


著者は言う。文明の終わりはいずれもあっという間だと。


と言うことで。


「文明病」のルーツをこれらの六つの視点から考えるのも、面白いね。


「アジア」が現在の教育についての動きにどのような影響を与えるているか、ユネスコの報告に書かれているものを『いっしょにESD!』で紹介している。

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ジェンダー意識が果たす役割も大きい。

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コミュニケーションについても、科学の項目で著者は、宗教と国家の分離、そして聖書からの科学の解放を、オスマン帝国の停滞と比較して論じている。


科学が成立するためには、合理的なコミュニケーションが必要なのだよなあ。





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by eric-blog | 2018-06-24 11:36 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)
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