障害のある先生たち 「障害」と「教員」が交錯する場所で
羽田野真帆・照山絢子・松波めぐみ編、生活書院、2018
3103冊目
手話に関する出版物をたくさん出している出版社である。
障害のある先生についての学術研究の成果をまとめた本はそれまでにはなかった。初めての本として手に取ってもらえるものをと心がけたと「はじめに」に言う。そして「あとがき」には、研究とはいえ、あまりにも多様な障害のある先生たちの様相に、これでよかったのだろうかと言う思いがあることも、言及されている。
三人の編者たちが共同で行った16人に対するインタビューからそれぞれが考えたことがコラムにもまとめられている。多様な論文による構成になっている。
2015年の学術振興会の科学研究費による研究に先立つ2012年からインタビューが始まった。16人の先生方は小中高、特別支援、教科も英語、国語、体育、理科、数学、技術など多様である。また、それぞれの障害も聴覚視覚、脳性まひ、発達障害、肢体不自由、学習障害など。
そもそもこの研究の背景は、国連の障害者権利条約が2006年に採択されたことに現れている社会的な動きがある。
では、どれぐらいの数の「障害のある先生」がいるのか? データは1990年代後半から、「障害者の受験に対する配慮」の必要性から把握されるようになった。とはいえ、不十分。2001年から2016年までの採用者数累計802名。24
であるが、「障害」をどのように定義するかによっても違ってくるのではないか。などの問題意識も持ちつつの論考であり、まとめである。
年間3万人ほどの採用があると考えると、ごく少数であり、社会における障害者数の割合にも程遠いことは知れる。
障害者差別解消法にある「合理的配慮」というのはreasonable accomodation。思いやりや親切ではなくアコモ。受け入れ態勢のことだ。誰が「合理的配慮」などと訳したものか。誤解が生じるのも宜なるかなの訳語である。「合理的な受け入れ態勢」とでもすればいいものを。
第4章 教員とはそもそも大変に仕事である
障害のある先生の経験は、教育について考える視点を与えてくれる。
視覚障害のある先生のクラスで「小テスト」で不正があった。そのことは、帰ってTeachable Momentにつながる。
手伝ってもらうこと、も、教育現場にとって大切なことだ。そして、障害があると手伝ってもらうことが、ある。
言えることは、障害のある先生のロールモデルとしての役割だ。生徒たちは見ているのだ。
教育という省察的実践の場に、多様性が持ち込まれる。
点検の視点って大事だよね。
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