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モラル・ハラスメント 職場におけるみえない暴力

モラル・ハラスメント 職場におけるみえない暴力

マリー=フランス・イルゴイエンヌ、白水社、2017、原著2014

3086冊目


#Me Too 運動に加えて、男性が男性に指摘する#You Tooも大切だという動きも始まった。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6279807


「男根社会」を終わらせよう!

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180420-00084235/


宇野ゆうか (@YuhkaUno)

2018/04/20 21:33

私、LGBTの人とか、在日コリアンの人とかが、差別に対して怒ってても、「そりゃ怒るよなぁー今まで怒るだけのことをされてきたんだろうから」と思うことが大半で、「私も一括りにされて攻撃されてる!」とか思ったことなかったから、なんでそんな受け止め方になるんだろうと思って。

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会ったことも話したこともない人なんだから、私に対して怒ってるんじゃないことは明白だよね。別に私の発言引用されて批判されてるわけじゃないし。その人は、今まで自分を差別してきた個人や、自分を差別する社会に怒ってるんでしょ。だから「私が攻撃されてる!」とか思う必要ないわけで。

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私個人がする加害は、私個人がする加害として考えて、私が属している社会がしている加害は、私はその社会を構成している一員として考える、そういうことなんじゃないかなって。だから、自分がした加害だったら、謝らないといけないけど、逆に言えば、自分がしてない加害で、いちいち謝る必要はない。

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たまに、女性差別の問題について「同じ男として申し訳なく思います」って言う男性いるんだけど、「いや、あなたが謝る必要ないでしょ。あなたは私に対して、何も悪いことしてないんだから」って思う。あなたは今、社長とか首長とか、そういう、集団を代表して謝る立場じゃないでしょって。

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ただ、差別のある社会で育った以上、偏見や差別意識は自分の潜在意識の中に植え付けられるから、マジョリティは、そのまま育つと、ごく自然に差別する人間になる。マジョリティの場合、デフォルトが差別者で、差別について学ぶことで、やっと加害しない人になっていく。

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「男を一括りにするな」「そんな攻撃的な言い方じゃ理解されないよ」とか言う人は、ここで思い違いをしている。まっさらな子供でない限り、偏見は植え付けらてるから、一次加害はしなくても二次加害はしてしまう。無知や偏見から、無自覚に失礼なことを言ってしまう。それが「ふつうのマジョリティ」。

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「パンを!パンを!」と声を挙げる民衆に対して、「攻撃的ね。冷静じゃないわ」「そんな言い方じゃ理解してもらえないわよ」と言い、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と、無知から的外れなアドバイス。まだ差別について学んでいない「ふつうのマジョリティ」は、こんな感じ。

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マイノリティに対して「僕は味方だよ!」と言ってくるマジョリティの人は、いくつか勘違いをしている。ひとつは、そもそも、味方かどうかを判断するのは自分ではないということ。「いい人」と「自分をいい人だと思ってるだけの人」が違うように、「味方」と「自分を味方だと思ってるだけの人」は違う。

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ふたつめ。差別に気づく前の自分は「無害な人」で、差別に気づいた時点で「有益な人」になり、差別を学ぶことで「もっと有益な人」になるというイメージを持っている。実際には、気づく前は「有害な人」で、気づいた時点では「ペーペーの新人」、学ぶことで、やっと「無害な人」になれる。

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本当にマイノリティから「味方だ」と思われている人は、自分からは「味方だ」と言わないものだと思う。味方かどうかを決めるのは自分じゃなくて相手だと思ってるから。自分のことを「有益な人」だとも思ってないと思う。本来ならやって当たり前だし、有益かどうかを決めるのも相手だから。

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差別を訴えるマイノリティに対して、「そんな攻撃的な言い方じゃ理解されないよ」と言う人や、性犯罪について的外れな防犯アドバイスをする男性って、マンスプレイニングでもあるけど、ダニング・クルーガー効果の「無知な人ほど自信満々」現象でもあると思うんだよな

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素人が「こうすればいいんじゃない?」って思うことでも、その道の分野の人からすれば「いや、それやっちゃダメなんだよ」っていうのはよくあることで、例えば学問とかでも、新規参入者は、どこかで無根拠な自信の鼻を折られる経験が必要だったりするよね。

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マジョリティの「新規参入」の難しさというのは、この「自信の鼻を折られる」経験がちゃんとできるかどうか、だと思う。


「ダニエル・クルーガー効果」

https://news.mynavi.jp/article/20150520-kara022/



差別のある社会で、差別を身につけて育っていることを自覚することから始めなければ、何が問題であるのかすら、わからないと思う。


それが、今の麻生財務大臣、福田元事務次官の問題だ。


今回の問題の背景には、セクハラを受けていると訴えているのに、取材を継続させた会社の問題も絡んでくる。テレ朝、最悪。


モラハラの問題は、ERICGAP研究会、そして日本型コンフリクト研究会が明らかにしてきた「個人vs集団的伝統的価値観を体現していると思っている人、人々、組織」との間の対立だ。


「対立」なのだから、喧嘩両成敗、両方の言い分を聞かなければ、というのは差別を助長する。全ての差別は「歴史的」であり、「伝統的」(どのような長さを考えるはそれぞれだとしても)であり、「社会的」なものである。


社会的力の欠如が「マイノリティ」の定義である以上、差別を指摘する、改善を求めることには大変なエネルギーがかかる。パワーは、それを持つ人を増長させ、持たない人を萎縮させる。


この本は、1990年代から問題にされてきた「モラル・ハラスメント」の原因についての研究も紹介している。大きく分ければ、集団的アプローチか個人的アプローチかであるが、「暴力的な行動の背後に、たしかに(政治、経済、文化)制度が存在するが、同時に、この効果的なシステムを可能にしているのは、個別であれ、集団であれ、個人である。」96


要因はもつれあっているが、個々に説明する。97


1. 組織的決定要因

・人を弱い立場にする経営 労働の現場のストレスの増加、量的なだけでなく質的なストレスが、人を弱い立場に置き、モラル・ハラスメントの土壌を用意する。98

  労働者の孤立化、プロジェクトごとの横断的な働き方、企業戦略の意思決定の効率化と集権化、存在意義の喪失感情、労働の細分化、声をあげられない

 労働者相互の競い合い


・企業文化として「上層部がモラル・ハラスメントを推し進めている」暗黙の許容。102


・経営方法による誘発

  ・専制的手法 個人の権限が大きい

  ・放任的手法 組織の秩序が乱れている、職務の定義か不明確、雰囲気が不安定

  ・悪徳的手法 労働者を搾取対象とみなす


・起動装置


2. 現代社会の変動

成果主義

経済的競争と社会的成功

保護制度の崩壊と集団的な制度による規制力の弱体化

目標設定が個人に任されている。

「個人は、ただ一人でその生存の困難に立ち向かうことになるが、最高の価値として賞賛された個人主義は、あらゆる分野で不安定な状態をもたらすことになる」106


3. 個人的要因

・個人が自己愛的になっていく

・標的となる人

・偽りの犠牲者 能力不足、上司に対する仕返しなど。

・ハラスメント実行者 敬意の欠如、無関心が標的となる人にとっては快適になる。

   ハラスメントする理由: ・恐怖   ・弱い立場  ・意思疎通できない  ・自己主張したい    ・妬みや嫉妬  ・指導者に対する受動性

・病的性格: 強迫観念  ・パラノイア  ・退廃的  ・



さて、では、最初に戻って、定義と構成要素。


ILO国際労働機関は1998年にハラスメントを次のように定義した。

「不快な行動を伴いながら、個人や集団に対する恨みのこもった、悪意に満ちたあるいは侮辱的な手段を用いて、谷なの価値を貶めようとする。」17


http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/---ilo-tokyo/documents/article/wcms_247004.pdf


不適切な行為が繰り返しあるいは職場ぐるみで行われ、労働者の精神的あるいは肉体的尊厳や健全さを損ない、そのこようを危機に晒したり職場環境を劣化させること。17


構成要素 19

1. 敵対的な行動 妨害、孤立、評判を落とす、信頼を無くさせる。

  ・孤立化とコミュニケーションの拒絶

  ・労働条件の妨害

  ・人格攻撃

  ・脅迫   恐怖を与える

2. 頻度と期間

3. 関係性  当事者間の不平等な力関係によって発生する。25

4. 悪意ある意図の存在  意図しているかいないかではなく、結果で判断。30



「ハラスメントは、強度な社会的ストレスを生み出す暴力である」40


学校、学級におけるいじめのように、ハラスメントの存在は、当事者に対するストレトだけでなく、職場の精神的な環境を悪くすることももっと強調されていいのではないだろうか。



by eric-blog | 2018-04-23 12:35 | □週5プロジェクト2018
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