死刑弁護人 生きるという権利 安田好弘、講談社、2008、単行本2005 3056冊目 長く死刑反対に取り組んで来た弁護士の方である。 まえがきに言う。「いろいろな事件に関わって来たが、事件に関わるのは「弱い人」なのだ。 強い人とは、信頼できる友人がおり、相談相手がいて、決定的な局面に至る前に問題を解決してくことができる人たちである。3 これは、ERICの主催連続勉強会で「犯罪弱者」を課題にした時に、わたしたちも感じたことだ。加害者も被害者も、弱者である場合が多い。あるいは事件をきっかけに弱者になってしまうとか。 ■第一回報告と予告 http://ericweblog.exblog.jp/20483146/ 第三回予定 http://ericweblog.exblog.jp/20720541/ 第三回記録 http://ericweblog.exblog.jp/20840402/ それは文明病という捉え方にも共通するものだ。 今の社会は「すべての人」にとって都合の良い社会ではない。障害者の権利条約が指摘するように、障害者に「障害がある」のではなく、障害のママでは排除されてしまう社会に「障害」があるのだ。 社会は様々な制約と約束の元に成立しており、それに合わない人たちは ・身体障害者のように物理的に排除される ・文明病のように生物的に排除される ・心の病のように心理的に排除される のである。もちろん、歴史上のいかなる社会も、排除のない社会、格差や差別のない社会はなかっただろう。しかし、社会が「巨大化」している今、排除もよりシステマティックに、そして確実になっているように思う。 一度、昔と今の「排除」のあり方について、「みんなの頭」で考えてみたいと思う。 「死刑」というのは「法律的に排除」され、その上で物理的に 隔離され、生物的に命を奪われるという制度だ。 その制度によって命を奪われる人の弁護を引き受けて来たのが安田弁護士なのである。制度そのものに反対しながら、今の制度の中で、法律的にできる限りのことをして、死刑に至ることがないように、支援をしているのだ。 時々、安田弁護士は、泣く。悔しさと共感と、尊敬の念から、泣く。 はげしい人なのだろうなあ。あったことないけど。 ブログでも紹介しているように、「世界は死刑廃止」の方向へすすんでいる。自分たちの作っている制度や社会について、より自省的になり、「正義」を早々簡単に盲信することのない社会を作ることによって多様性に対して開かれた社会を作ろうとしているのだ。 人権の観点から、少なくとも三つの原則が目指されていることは明らかだ。 ・より包括的で、包摂的で inclusiveな ・より平等で、公正な equality以上にequity ・より良いものへ改善する process mind、learning このような原則を理解し、共有するということは、それを点検の視点にして、自分たちのあり方を見直すということだ。 今のの日本における死刑制度存置の議論は「被害者感情」と「社会的秩序」の二つが中心だと思う。 被害者感情については、わたしたち、誰もが「成長」するしかない。死が不条理に訪れた時、被害が不条理にもたらされた時、そこから回復し、修復されていくためには、個人としても社会的な支えとしても、ともに成長するしかない。 社会的秩序については、それこそが私たちの社会の傲慢だと思う。弱者を生み出している自分たちの社会の歪みや瑕疵、至らなさを反省することなく、排除するのは、社会として未熟である。 冤罪の可能性、および別の犯人の存在が強く疑われる宮代事件。弁護側が探しだアリバイの証人も行方不明だという。 https://www.orangehoppe.com/miyashirojiken-muramatsuseiichiro/ 警察のやり口と言えば、学生運動に対する公安警察のやり口もすごい。「滝田修」に対するでっち上げなど。250 著者はオウム真理教事件の弁護人の一人でもある。 ご自身も訴えられ、裁判をたたかうなど、死刑を求刑されるような事案の弁護は常に国との戦いなのだなあと、実感する本である。
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| 2018-03-20 10:53
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