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アベノミクスによろしく

アベノミクスによろしく

明石順平、インターナショナル新書、2017

3048冊目


1984年生まれの著者は、とことんデータを調べてみて、アベノミクスの失敗を知り、またその超特大副作用について理解したと。ブログに連載したものの書籍化。


たぶん、ブログはこちら。

http://blog.monoshirin.com/entry/2016/05/11/232030


でも、ここには『ブラックジャックによろしく』はないしなあ。

批判記事もおなじタイトルで検索に引っかかるし。


二次利用可能なコミックって面白いねぇ。「総統閣下はお怒りです」という映画の1シーンも、二次利用可能で公開されているのかなあ。


金融政策

財政政策

法律緩和


それがアベノミクス三本の矢。最近話題になった「裁量労働制」が三本目の矢の一例。しかし、その議論を聞いていると「労働時間が短くなった」というのは真っ赤のウソだったらしい。


ということも含めて、「とことん自分で」調べてみたわけでもないわたしには、これらのデータの読み方自体がよくわかっていない。暦年か年度かで名目賃金の伸び率も0.1%0.5%違ってくるという「読み方の注意」があとがきに書いてある。


ともあれ、気を取り直して、読んでみた。


そもそも、金融政策については、すでに「異次元金融緩和」という風に呼ばれていて、異次元なのか異常なのか疑ってしまう。インフレ率2%によって経済成長を持続する、そのためにはデフレを脱却する。逆利子ぐらいにして、市場に金が出回るようにする。それが「異次元」な金融緩和。


その上で市場に出回るお金を政府が公共投資をして、お金の使い道を作る。それが財政政策。


この本では、超異次元にある金融緩和の話を中心にしていくらしい。12


金利が低く、インフレが起こっていると、お金を借りやすく、返しやすくなる。返す時には物価が上がっているから、借りたお金の価値は下がっているから。


日銀の通貨供給(マネタリーベース)2013年からどんどん上がっている。

アメリカも同様に伸びているが、対GDPで見ると20%台。日本は80%。通貨を供給してもGDPが伸びていないということ。22


さて、第二章でその目論見がうまくいったのかどうかを検証。


M3というマネーストックの指標をみてみよう。現金通貨と預金通貨に準通貨と譲渡性預金を足したもの。これは変わっていない。伸びていない。


この間起こった物価上昇は「為替相場」で円安が進んだことにある。

円がたくさんあるから価値が下がると読んだ投資家が円を売った。39


為替相場は様々な要因で変動するので、継続的なインフレ目標達成には繋がらない。41


そして第3章。国内実質消費は戦後最悪の下落率! こわ!


なんとアベノミクス開始前の2012年より下がってしまっているのだ。49


高齢化のせい? でもそれなら読み込んで置いてよね。


それは「実質賃金」が下がっているから。名目賃金は下がっていなくても物価が上がっているので実質賃金が下がっている。59


エンゲル係数が上がる。


日本は賃金が上がらないのに物価が上がるというスタグフレーション状態。

だから、物価を上げるという政策を続けても、景気が良くならない。原因と結果の関係を取り違えた政策だからだ。66


そして国際的に比較すると、名目賃金ですら、2000年を100として比較して、下がっている。OECD諸国では日本だけ? 67


4章では「GDPかさ上げ疑惑」のからくり。


「その他」の項目の異常な増額。2016年、基準の改定。89


5章 アベノミクスの「成果」を鵜呑みにするな


失業率が下がった。有効求人倍率が上がった。


生産年齢人口が減っている。

労働者がたくさん必要な雇用構造にしている。


だから、失業率が下がり、有効求人倍率も増える傾向は続く。


しかし、そのこととアベノミクスは無関係。


株価を吊り上げている。118


6章は「第三の矢」は労働者を過労死させる。

7章 超特大副作用!


為替相場で円安が進み、低金利と供給過剰で金余り現象を引き起こし、株価を吊り上げた結果、日本はどうなる?


一番心配なのは、円に対する国際的な信頼。そして、国の借金。


そうなんです。安倍政権は、国民に痛みを求めない。増税すら先延ばしにする。国の借金を返すために、財政引き締めのための事業仕分けもしない、公共投資はどんどんする。


しかし、その甘い言葉の裏で、労働者は疲弊し、国は仮想金融で相場を踊らせ、オポチュニストが群がってくる円相場になっている。怖いねぇ。


甘い言葉と場当たり的な政策で、国民の歓心を買うことに躍起の政権だが、その支持率は44%。そろそろ、目先の撒き餌だけでは誤魔化されなくなってきているのではないか?


しかし、怖いのは、その後だ。誰が首相になっても人気は出ない。人気が出る政策など、安倍政権がやりつくしてしまっているからだ。不人気の末、長期政権にはならない。安定した政策が打てない。目先の利益に踊ることに慣らされた国民とともに、方向転換についての国民的合意も作れるはずがない。


にも関わらず、1984年生まれの著者は最終章に言う。「それでも、絶望してはいけない」。一章とはいえ、たった5ページだけどね。


この見出しに騙されてはいけない。アベノミクスは失敗だったし、大きな痛みなしで終えることはあり得ないと書いているのだから。215


少なくとも、希少な資源である労働力を疲弊させる長時間労働にだけは歯止めをかけたほうがいいよね、と言うのが唯一の提案。217


アベノリスク、与露死苦。だなあ。



by eric-blog | 2018-03-14 09:59 | □週5プロジェクト17
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