ごみを資源にまちづくり 肥料・エネルギー・雇用を生む
中村修、農文協、2017 3045冊目 著者が20年も関わってきた大木町の循環施設「くるるん」は2006年に稼働開始、成功事例としても今も年間3000人以上が視察に訪れるという。 菜の花サミットが南阿蘇で開催されるのに合わせて、ツレの中島と私も見せてもらった。併設されたレストランでのランチバイキングは1450円。正午過ぎは、席も取れないほどの混雑だった。 生ゴミ処理施設の隣にレストラン? それほどに臭いもなければ大きなトラックの出入りもないような環境。 下水処理もごみ処理も過剰設備になりつつあることが指摘されています。参考:杉本裕明『ルポにっぽんのごみ』2015 いまさらし尿処理に下水道を完備しようとすることの不合理さを、著者は指摘します。 大木町では、各家庭に合併浄化槽を設置、発生した汚泥を「くるるん」に運んで、生ゴミなどと一緒にメタン発酵装置に投入されます。 メタン発酵は嫌気性発酵で、タンクの中で30日ほどで分解し、メタンガスと発酵液(消化液)になります。メタンガスはガスエンジン発電機で電気に変え、消化液は液肥として農地で肥料として使います。液肥は町の事業として散布作業代を500円/10aで、液肥そのものは無料で提供しています。それによって町の水田70haほど全体で肥料代が700万円節約につながっています。 ごみ処理、し尿処理施設が、町の中央に建設され、レストランや農産物直売所も併設されるなど、売り上げ2億円をこし、雇用も61人を生み出すまでになっています。12液肥で育てられた米は学校給食でも使われているなど、地産地消もバッチリ。ガス発電で複合施設「くるるん」の使用電力の1/3ほどを賄えているのです。 迷惑施設、金食い虫になるかもしれない下水処理、ごみ処理が、町に雇用、収入、エネルギーの自立などへの道を開いているのです!現在、隣町のみやま市にも著者が関わって、今度は大木町より少し規模の大きい、17億円ほどの循環施設の建設が進められている。小学校の廃校跡地を使い、校庭部分に循環施設を建設するとともに、校舎を地域活動や起業の拠点にしようと計画している。 著者が立ち上げる一般社団法人「まちづくり研究所」もその一つだ。大木町のレストランや直売所での雇用同様、女性の活躍も大いに期待されるところだ。楽しいなあ! 元気で自立できる地域を見ていると、地方は宝の宝庫だと思う。 大木町のレストランでは、豊年割引として70歳以上に割引がある。見学した時に運び込まれていた生ゴミは「きのこ工場」(九州一のきのこの産地!)からの残渣だったが、1立方ほどもあるバケツが10戸あたりに一つ設置され家庭の生ゴミを収集するようになっている。町民の負担は、生ゴミの分別だけ。何よりも、コストのかかる「処理」ではなく、エネルギー、雇用、収入につながっているのがすごい。メタンガス発酵装置が地下に設置されているなど、細かなアイデアが蓄積されており、それも見学者が絶えない理由なのだろうと思わされた。 本では、循環施設建設の都市タイプ別試算も3類型出されていて、大都市でも山間部でも手はあることが示されている。Go Go くるるん! だ。 南阿蘇は、まだまだ通行止の所も多く、山肌は、2016年4月の地震直後の大雨で起きた山崩れで荒れたままだ。あの巨大カルデラの外輪山に一箇所できている切り通しは、その崩れやすさゆえであったのだなと、屹立する山並みの間に崩れ落ちていく山塊、むき出しの滝の流れを見て思った。南阿蘇から中岳を眺め、そして外輪山に降る雪を眺めるという雄大な景観と自然の脅威を実感した旅行だった。 菜の花サミットは2001年に滋賀県愛東町で第一回が開催されてから今年で18回を数える。その間に東日本大震災があり、そして熊本震災があった。3.11以降に二回も福島で開催されている。 http://www.nanohana.gr.jp/?p=3439 今回は80名ほどが参加。分科会「菜種油のテイスティング」には、これまでの開催地などが開発した多様なヴァージンオイルが出品されていた。菜種油のバイト味が苦手なことを思い出しながらも、6種類ほどに挑戦。菜種の種類、絞りの技術などの多様性を学びました。菜種を植えて、観光資源、エネルギー資源、商品開発の原材料資源として活用できるのが「菜の花プロジェクト」だ。BDFとして重機を動かして熊本の復興に生かしたという事例の発表もあったらしい。 FAOが取り組み始めた世界の農文化遺産を守るためのGIAHSを呼びかけたParviz Koohafkanさんの話を聞けたこともとてもよかった。 http://www.fao.org/japan/portal-sites/giahs/en/ ■2018年3月10日 東京新聞 田舎のヒロインズにも、やっと会えたし。わたし自身の都合でゆっくりできずに、バタバタとした訪問になってしまったが、充実の二日間でした。熊本在住のファシリテーター、加藤さんとは今回もお会いできませんでしたが「被害の大きい益城町はまだまだ避難も住居探しも続いています。」と復興にお忙しい様子がうかがえるメールをいただきました。 「菜の花元気プロジェクト」に取り組む宇野裕美香さんなど、一人ひとりについて書き出した終わらないほど、女性の活躍が光るサミットでした。 https://www.facebook.com/pg/nanohanagenki/photos/?ref=page_internal TEDのプレゼンはこちら。https://www.facebook.com/TEDxFukuoka/?hc_ref=ARQCZf4mJlE_4T5LXyIg8gyVGtbY17jdM06FG0NmWND0DOfrjSmR2O4Y-ydU9JSLuEE&fref=nf この元気さはなんだろう? みんなにエールを送りたい!
by eric-blog
| 2018-03-10 10:56
| □週5プロジェクト17
|
最新の記事
ERICからのお知らせ
2023年度ERIC主催研修
ESDファシリテーターズ・カレッジ 前期 テーマについて学ぶ 【ESDイシューズについて学ぼう!】 3つのイシューズから課題に気づき、問題解決に取り組む 前期 【テーマ: ESDイシューズについて学ぼう!】 3つのテーマから課題に気づき、問題解決に取り組む 環境/PLT 2023年6月24-25日 国際理解 2023年7月29-30日 人権 2023年9月23-24日 後期 【スキル: ESDコンピテンシーを育てる!】 3つのキー・コンピテンシーで問題解決の力を高める わたし 2023年10月28-29日 あなた 2023年11月25-26日 みんな 2024年 1月27-28日 各講座土日開催です。 TEST教育力向上講座は2024年3月に開催予定。 参加はオンライン受講も受け付けます。お問い合わせください。 参加申し込み: webでの申込はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfCwrZxu0NEhmJINrbtxX7knhM_eqIX3Qahd--mdkvgyowGlw/viewform ==問い合わせ== eric(a)eric-next.org メルマガ登録はこちらから。 http://www.mag2.com/m/0000004947.html 検索
カテゴリ
●3.11地震・津波・原発 ○子ども支援・教育の課題 ◎TEST 教育力向上プロジェクト ☆よりよい質の教育へBQOE ☆アクティビティ・アイデア ☆PLTプロジェクト ◇ブログ&プロフィール・自主学習ノート □週5プロジェクト23 ■週5プロジェクト22 ■週5プロジェクト21 ■週5プロジェクト20 ■週5プロジェクト19 ■週5プロジェクト18 ■週5プロジェクト17 ■週5プロジェクト16 ■週5プロジェクト15 ■週5プロジェクト14 ■週5プロジェクト13 ■週5プロジェクト12 ■週5プロジェクト11 ■週5 プロジェクト10 ■週5プロジェクト09 ■週5プロジェクト08 ■週5プロジェクト07 ■週5プロジェクト06 ■週5プロジェクト05 ■週5プロジェクト04 ■週5プロジェクト03 △研修その他案内 □研修プログラム □レッスンバンク ▲ファシリテーターの課題 ?リンク 草の根の種々 ERICニュース 国際理解教育and You詩歌 □ 最新のコメント
フォロー中のブログ
PLT2006年版翻訳プ... ERIC用語集 PLT 幼児期からの環境体験 リスク・コミュニケーショ... アクティブな教育を実現す... プロジェクト・ラーニング... エコハウスでのエコな生活... 外部リンク
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2003年 05月 最新のトラックバック
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||