ヒロシマ 増補版

ヒロシマ 増補版

ジョン・ハーシー、法政大学出版局、2003、初版1949

3030冊目


1946年に来日し、取材。6人の主人公たちに焦点を当てて、ヒロシマを描き出したレポートは、雑誌に連載されただけでなく、一冊の本として大ヒットとなった。


それから39年後に、その6人の人たちのその後を訪ね、取材したのがこの増補版。


一読、描き出される人々の名前の多さに驚く。一人の人が覚えている詳細は限られている。能力の高い取材者、調査者を経て、この本はあの時を一人一人の人間に起こったこととして描き尽くしている。


中村初代さん、佐々木輝文博士、ウィルヘルム・クラインゾルゲ神父、佐々木とし子さん、藤井正和博士、谷本清牧師。


6人の物語は、6人の物語でいて、同じような境遇の人たちは戦争直後の日本のどこにもいた。そのような物語として、共感を呼ぶ。


谷本清さんの社会運動にも心動かされるが、神父そして、神父に導かれて入信した渡辺さんら、キリスト教者の姿に、思いが巡る。


彼らが被爆したのはおよそ爆心地から1kmから1.5kmの所にあった教会堂や病院など。


自身も被爆したクラインゾルゲ(高倉)神父は、ある取材にこう答えている。


「もし、誰かが私に、体がだるいといい、そういった男が被爆者だとしたら。そのことは彼が普通の人である場合とは違った感情を私に起こさせます。彼は説明する必要はありません。」152


続いて彼は天皇陛下という言葉が西洋人と日本人にもたらす違いにも言及する。


「犠牲者である人と、そうでない人との場合でも、両者がもう一人の犠牲者について耳にした時には同様の問題があります。」


日本に生きている外国人というアイデンティティよりも、国籍よりも強い共通性を「被爆者」は持つという。


ピア・サポートの重要性はこんな所にあるのかもしれないと思った。


佐々木さんは、クリスチャンの施設で仕事をしながら、被ばくのひどさよりも、戦争の残酷さをこそ、伝えるべきだと感じていたという。



何を語るべきか、被爆者の運動は、そのような共通性を背景に、世界に訴え続けてきたのだろうなあ。


これまで、多くのヒロシマについての本を読んできたが、この本はすごい。


映画『デトロイト』の原作ともいうべきルポの著者でもある。



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by eric-blog | 2018-02-17 14:05 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)
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