暗闇のなかで

暗闇のなかで

レイチェル・シーファー、アーティストハウス、2003、原著2001

The Dark Room

3029冊目


ナチスの負の遺産を引きずるドイツを三つの物語に分けて書いた作品。(訳者あとがきより)


まだ、戦争中のベルリンを、障害のために憧れの軍人になれなかった男の子、ヘルムートの目を通して描く。


戦争直後の混乱を、親衛隊員だった父の子供達の目を通して描いた「ローレ」。これが映画『さよなら、アドルフ』の原作になっている。



ローレの祖母は、瓦礫の町と化したハンブルグに南方の疎開先から移動禁止命令と占領軍による統制のもとをかいくぐり、やっとの事で帰り着いたローレに言う。「恥だと思ってはいけないよ。両親を恥じてはいけません。」217

「行き過ぎた連中もいたけれどね、悪いところばかりだったと思ってはいけないよ。」


そして、戦後、祖父の過去を知り悩むミヒャ。ベラルーシを尋ねると、そこで「対独協力者」だったという老人に出会う。物語はミヒャエルが期待するように「ドイツ人の支配」という単純なものではなかった。1941年にナチスがやってきて、彼は、通訳を務めた。そして、ナチスと一緒にユダヤ人を殺したと言う。



興味深いのは著者は1971年生まれで、ドイツ人の母とオーストラリア人の父の間に生まれ、イギリスで育ったミックスであること。


アーモン・ゲートの孫娘と、一歳違いでしかない。


最近、ポーランドが、アウシュヴィッツに絡んでポーランドの名誉を毀損するような言説を禁止する法律を作った。


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この本や、アーモン・ゲートの孫娘の本も、確かにナチス高官や親衛隊員、あるいはSSなどであった父、祖父らの罪を知りながら、シングル・ストーリーには収まりきらない物語である。多分、20世紀の間には語り得なかった視点なのだろう。


多様なストーリーが生まれる時代になったからこそ、ポーランドのような決定も生まれるのかもしれない。少なくとも、ポーランドの意図が「シングル・ストーリー」の矯正にはないことを信じたい。いや、というか、無理なのだろう。


それにしても、最近の日本での満州からの引揚者についての本も、著者は女性であるなあ。

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物語の長さと繊細さ、入り混じる感情などへの耐性を、次の世代は全員が持っているわけではないだろうに。ひょっとすると、そこにも分断と二極化が進んでいるのかもしれない。ヘイトスピーチに走るような単純な物語を鵜呑みにする人々と、複雑な、感情的に揺り動かされる物語に耐えられる人々と。



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by eric-blog | 2018-02-15 17:42 | ■週5プロジェクト17 | Comments(0)
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