野生動物問題
羽山伸一、地人書館、2001
2960冊目
わたしたちが守るべきものは「進化」であって、単なる「生命」ではない。
著者が野生生物保護を語る時の矜持である。
個体数が激減した集団には、遺伝的な多様性が失われている。回復しても近親交配による悪影響が心配される。215
生息域外保全されている生物種の数は2000種類ほど。世界に1200ほどある動物園の役割として期待されている。
コウノトリの野生復帰事業が、日本で初めての絶滅種の復活を目指すもの。238
サルやシカなどの「絶滅危惧種」でない動物の問題はより複雑だ。
生息域はどこなのか。
都会や人が住む場所では迷惑がられるが、シカもサルも平野の生き物であって、決して「奥山」の生き物ではない。17
明治維新による近代化が日本の野生動物の乱獲の始まりだった。19
明治期に平野部から絶滅。トキ、コウノトリなども。
棲み分けできるのか?
有害駆除はどこまで許されるのか?
鳥獣保護法と言いながら、その実態は農林水産業の視点中心である。
シカを平野部に戻すことは可能か?
サルの避妊手術は容認できるか?
20世紀からの宿題のまとめとして、画期的な出版物だよね。