くらしの昭和史 昭和のくらし博物館から
小泉和子、朝日新聞出版、2017
2891冊目
http://www.showanokurashi.com
ここの館長。
テーマ展示を繰り返してきて、博物館の「もの」に厚みを加えてきた方法論は素晴らしい。今も勉強会とその内容の発表という形で発掘を続けているという。
そのテーマの一つであったのだろうが、「在日のくらし--ポッタリ一つで海を超えて」という項目が収録されており、ある在日の方の戦後の人生が詳細に記録されている。在日による在日のための在日生活向上活動、みたいな。素晴らしいよね。昭和って、そういう時代だった。うん。と思いたい。
著者はあとがきにかえて、「昭和三十年代を振り返る」という中で、日本の歴史上、昭和三十年代から40年代、50年代ぐらいまでが、人々が最も幸福な時代だったのではないかと思う、最も明るい時代だったのだと。310
貧しかったが、みんなが働いていた。
貧乏文化を洗練してきていたと。「貧しい国には素朴で質素な生活文化が発達している」と。307
ホテルがないから人を泊めた。銭湯は気を使う。呼び出し電話には近所との関係が不可欠。邪魔くさいのだ、貧乏臭い文化は。30年代のような暮らしに戻る。ものを大事にする文化を取り戻さなければと、著者は言う。306
さらに、加賀乙彦氏の『不幸な国の幸福論』(2009)から随分引用して、次のようなまとめを紹介している。
支払った税金などが戻っている率、社会保障還元率は、先進国中最低の41.6%。
社会保障が貧弱なのは、税金をさらなる経済成長につぎ込んでいるから。公共事業。300
第二次安倍内閣になってからその傾向は余計にひどくなっていると言う。
「よもや政府が憲法を変えて日本を戦争ができる国にしたいと言い出すようなことはあり得ないと多くの国民は信じていたし、国民を監視するための共謀罪方が成立する時代が来るなどとは夢にも思わなかった。」311
1933年生まれ、現在84歳の著者の舌鋒はまだまだ鋭い。きっと現役でデモでもなんでも出かけておられるのだろうなあ。機会があれば、博物館も訪れて見たいものだ。
紹介されている間取りが、まさしく、我が家がわたしが2歳まで住んでいた家そのまま。裏庭の畑はこんなに大きくなかったけれど。
p.235