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FH17-3 経験を味わう=経験学習「ふりかえり」の鍵

◆◇◆( .) ファシリテーター・ハンドブック3「経験を味わう」◆◇◆


これまで経験学習と言えば「ふりかえり」、四段階というコルプの整理が脚光を浴びてきました。それは教育学の分野だけでなく、様々な分野でも、「経験から学ぶ、改善に生かす」ことは求められています。

自分自身の経験から学ぶことは丁寧に生きるということ。あなた自身の人生を丁寧に生きること、あなたの生きている時代をていねいに生きること。

それが教育において経験学習的アプローチを取ることの、真の価値であると思います。




経験を味わう=経験学習「ふりかえり」の鍵


 経験学習の質を保証するための三つの原則の一つが「ふりかえり」です。経験学習のすすめ方を四段階とまとめたのはデービッド・コルブが有名ですが、わたし自身は環境教育についての学びから次のような四段階でのすすめ方として整理しています。


1.体験する

2.ふりかえる

3.原理・原則を考える/法則を見つける

4.応用する


 単にふりかえるだけでなく、そこから学びを紡ぎ出し、それを次に繋げていくという再帰的なふりかえりであるので、Reflective ではなく、Reflexitive(再帰的ふりかえり=省察)という方が適切なのですが、ここでは「ふりかえり」としておきます。深く学ぶということは、学びを自らに帰すことによって、次の学びのスパイラルにつながり、深まっていくのです。


■ふりかえりの鍵

 いくつかの「ふりかえり」の鍵をまとめておきます。さまざまな分野で行われている「ふりかえり」を知ることで、応用力が高まるのではないでしょうか。大切なことは、本人にしか獲得することのできない「気づき」です。


  • EIAG
  • ACKA
  • 感情・価値観・行動の氷山モデル
  • 3つの省察
  • コルトハーヘン・モデル
  • アレクサンダー・テクニーク
  • ORID
  • ERIC

EIAG 認知を作るもの

 自尊感情や自分を大切にすることができる子どもを育てるために、自己意識を育てることをカリキュラムの中核においている場合の「ふりかえり」についての説明です。4つの要素が認知を作ります。


1.体験・経験そのもの

2.その体験について、重要だとわたしたちが認識するもの

3.わたしたち自身の理由づけによるなぜそれが重要かという分析

4.わたしたちの一般化、その体験が未来にとって持つ価値についてのユニークな認知


短く言うとEIAG

1.体験experience体験する

2.同定identification意味づける、意識化する、特定する

3.分析analysis分析する

4.一般化generalization原理原則を一般化する、応用できる


 AKCA 気づき・知識やスキル・挑戦・行動

 米国の環境教育指導者育成プログラムPLTで使われているモデルです。環境教育は問題解決の行動に力点があること、3. の挑戦は、指導者育成プログラム参加者自身が「アクティビティ実践」をやってみることです。


  1. 1.気づきAwareness導入、すでに知っていることを共有
  2. 2.知識/スキルKnowledge/Skills新たな学び
  3. 3.挑戦Challenge新たに学んだことをやってみる
  4. 4.行動Action個人的行動計画、日常への応用など



  • 感情・価値観・行動の氷山モデル

 体験には感情が伴います。感情に焦点を当てて、ふりかえる、じっくり味わうことも可能です。対立は、激しい感情を引き起こすものだからです。ERICの『対立から学ぼう』というプログラムの中で扱われますが、対立に伴う感情は、学びにとってとても重要です 。対立の場面でわき起こる感情の扱い方について学ぶと同時に、なぜその感情が起きるのかを知ることで「自分自身」を理解することができるからです。

 わたしたちが互いに見ているのは「行動」という現れです。行動は感情から引き起こされます。感情は価値観から来ているというのが、この氷山モデルの考え方です。行動に伴って、自分自身の感情が動く、その感情の背景を見つめてみると、自分のこだわりや大切にしたいもの、価値観が見えるというわけです。





行動: 表面に見えるもの



感情: 行動の源泉           



価値観: 感情のルーツ

       



 対立というのは、基本的には価値観の対立があるために起こるのですが、双方の「本当に満たされたいこと」に焦点をあてて解決することがウィンウィン型解決と呼ばれるものです。自分を大切にするということは、自分の信念や価値観を大切にするということです。



  • 3つの省察 どのように、なぜ、なんのために?

 教師教育学で使われるふりかえりです。教えるということは、学習者の反応を見ながら、手だてや対応を変更していく「省察的実践」であると言われます。ファシリテーターの「柔軟な対応」というのも、参加者・学習者のニーズや理解の状況に従って、プログラムや時間管理などに変更を加えることを意味します。

 ERICではファシリテーター育成のための「セッション3 ふりかえりと参加型学習の特徴」の時に「技術的・実践的・見通し的」の3つの視点でふりかえることで、「アクティビティ」やファシリテーターの行動HOWの背景にある意図WHYに気づく、そして、その手だてが教育的な目標達成のために有効であったかという「見通し」をもってふりかえつてもらいます。(アクティビティ実践評価表参照) 詳しくはそちらを参照してください。


■ アレクサンダー・テクニーク

 演劇指導において、表現力を高めるためのトレーニング手法が「アレクサンダー・テクニーク」です。ゲシュタルト心理学の手法でも同じですが、自分の行動をふりかえることで意図に気づくというのが、いずれも基本にあります。わたしたちがついつい無意識に、はっきりと意図して行っているわけではない行動に気づくこと。そのために「待ったをかける」(Inhibition禁止する)。そして、どんなことをやったか、どうやったか、なぜそうしたかをふりかえることで意識にスペースが生まれます。ふと我に帰るというような。

 すると、何もその方法だけが正解ではないこと。選択肢はたくさんあることに気づく。「手当たり次第の選択肢」(Means Whereby)を知る。さらに、それらの選択肢の中から、自分の意図をもっと適切に表現する方法を選ぶことで、自分を育てることができる。

 他人には、結果としての行動しか見えない。意図とプロセスを知ることができるのは本人だけなのです。


  • コルトハーヘン省察モデル

 オランダのユトレヒト大学の教師教育学の教授、フレット・コルトハーヘン教授の省察モデルは、まさしくゲシュタルト心理学、アレクサンダー・テクニークの応用です。


  1. 1.授業場面
  2. 2.行為のふりかえり
  3. 3.本質的な諸相への気づき
  4. 4.行為の選択肢の拡大
  5. 5.試行







 本質への気づきがもっとも大切であることを、氏は協調しています。                

 そのために、表のように、「感情」をふりかえることで、「本当に満たされたいこと」に迫る手だても行っています。





  • ORID 事実・感情・解釈・意思決定

 カナダのファシリテーション研究所が行っている実践です。ORIDの四段階、それぞれに100ほどの質問があり、それらの質問によって、ふりかえりを深める方法です。


1. 客観的事実Objective事実、行動、データ、覚えていること、印象

2. ふりかえりReflective反応、心、感情、感動したこと、気分が乗ったこと

3. 解釈・価値観Interpretive解釈、クリティカル・シンキング、学んだこと

4. 意思決定Decision明日取り組みたいこと



■ ERIC 体験・ふりかえり・解釈・つなぐ

 さまざまなふりかえりの手だてを学び、試してきて、なんだERICという私たちの団体名そのものが経験学習の四段階を表しているじゃないかと気づいたのは最近です。


Experience(経験する)

Reflect(ふりかえる)

Interpret(解釈する)

Connect(つなげる)


 学んだことを現実とつなぐ、学んだことを日常生活につなぐ、学んだことを回りの人々の学びとつなぐ。応用力、認知的流動性、適応的熟達化、さまざまな言い方が学者、専門家によってなされていますが、学びの主体は学習者本人なのです。



by eric-blog | 2017-04-08 10:32 | ☆よりよい質の教育へBQOE
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