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ERICnews554号 連載13 GS12 対立を超えて

グローバル・セミナーをふりかえる~今と未来の教育のために No.13 鬼木たまみ
この連載では、ERICが設立当初から10数年にわたって開催したグローバル・セミナーを紹介しています。

◆◇第12回 グローバル・セミナー(2000.7.29-30)
・ テーマ:対立を超えて・世紀を超えて-地球の明日とわたしたちの力
・ 講師:サイモン・フィッシャー(『ワールド・スタディーズ』著者、RTC「対立を解きほぐそうプログラム」責任者/イギリス)、角田尚子(ERIC・事務局長)
・出版『人権教育ファシリテーター・ハンドブック/基本編』

第12回グローバル・セミナーは、東京YMCA国際奉仕センターとERICの共催で行われました。
この回のセミナーは、ERICの原点とも言える『ワールド・スタディーズ』の著者であるサイモン・フィッシャー氏を招き、プログラムに参加型パネルディスカッションや参加者のコミュニティが抱える課題について解決方法を探るワークショップ、ERICポスターセッションなどを取り入れ、前年に続き、参加者とつくるグローバル・セミナーを試みています。

セミナー前日には、ERIC事務所にてフィッシャー氏を囲み、ワールド・スタディーズの開発の経緯やその後の展開、日本での広がり、教育への問いかけなどについて話し合う座談会を開催。その内容は「ワールド・スタディーズの10年」としてレッスンバンクに収められていますのでこの機会にご一読ください。

「ワールド・スタディーズはここ日本でも、そしてもちろんイギリスでも、前をみること、人々に将来何が起こりそうかを予想し、未来をより良くしていくということに積極的に参加すること、つまり、未来は起こることとして受け取り、自分たち自身のものとして作っていく、そういうことを人々に促している、という点が特徴とされてきたと思います」(座談会「ワールド・スタディーズの10年をふりかえる」、フィッシャー氏の発言より)

「ワールド・スタディーズが伝えたい10の概念からERICは進化し、新しい教育の課題として「人権」と「環境」の2つの概念にまでまとめた。
今年の新出版物が『人権教育ファシリテーター・ハンドブック』であることから、私たちの共通理解として今回のグローバル・セミナーでは、新しい教育の課題として「人権」を尊重し、「人権」の課題に取り組んでいく必要性を提案する。

人権を尊重するという共通理解の上に、私たちのコミュニティの課題(対立)に気づき、そして問題解決の方法を共有したい」(セミナー企画書「こんなグローバル・セミナーにしたい」より)

「子どもたちが目を輝かせる学校づくり、対立を超えて多様性を活かす地域づくり、世界の諸問題の解決など、いま求められる力をわたしたち自身の中に育て、文化や社会を超えて共通基盤としていきませんか。
ワークショップは、あなたの課題を、みんなの課題として考える場所です。課題の扱い方と平和的な解決についての理解とスキルを身につけましょう。
わたしとあなた、みんなの未来のために」(セミナー「開催趣旨」より)

20世紀最後の年にあたる2000年に開催されたセミナーのテーマは「対立を超えて・世紀を超えて-地球の明日とわたしたちの力」。21世紀を生きる私たちは諸課題の平和的な解決について、理解とスキルをどれほど身につけられたでしょうか。私たちの価値観はどれだけ育ったのでしょうか。

*第12回グローバル・セミナーの当日プログラム、案内はこちらからご覧になれます。
http://eric-net.org/project/global_seminar/gs00_news.pdf

* 当日資料「グローバル・セミナー2000 ワークシート」(出典、RTC:Responding to Conflict )の一部はこちらからご覧になれます。完全版はレッスンバンク「対立を扱うためのプログラムとワークシート」に収められています。
http://eric-net.org/project/global_seminar/gs00_handout.pdf

* テキスト、レッスンバンクのお申し込みはこちらからどうぞ。
・「対立を扱うためのプログラムとワークシート」(LB4-4):13ページ、260円
・「ワールド・スタディーズの10年」(LB6-1):12ページ、240円
http://eric-net.org/text-order.html

One more!
前回の「第11回グローバル・セミナー 国際理解教育の推進に向けて」の記事を受けて、運営委員の加藤さんが文章を寄せてくださいましたので紹介いたします。
加藤さんは、当時、スタッフとしてセミナーの企画、運営を担ってくださった方で、『環境教育指導者育成マニュアル』の執筆者のおひとりでもあります。

「1999年GSの紹介を拝読しました。
あの当時、ERICは次の方向性を模索する中で、これまでの参加型学習の手法のまとめは12のものの見方考え方で示し、次に総合学習の取組前夜の時期に学校教育で取り組む社会の課題とは何かについてまとめていたという事でしょう。
何のために学ぶのか?教科に分断された知識を統合する「課題」として人権や環境というテーマはまさに参加型で積み上げていく必要性もあったと思います。

ただ当時から18年たった今、思うことは、人権や環境といったテーマをさらに丁寧にいくつかのテーマとして深く掘り下げることができたかもしれません。
巨大な資本と労働のあり方、ビッグデータとプライバシー、自己責任と社会からの孤立化、食と健康、発達と教育、家族システムと暴力、ブラック企業とひきこもりなど社会は進んだ点もあり新たな課題の中で苦しむ人も増えています。そしてますますコミュニケーションは取りにくい状況です。この生きづらさを抱える人々と何を話しあっていけばよいのか、まだ模索する毎日です。」

グローバル・セミナーに参加された方もそうでない方も、記事を読んで、思い、感じることがありましたら、ぜひ、ERICまでお寄せください。
みなさまからのフィードバック、よろこんでお待ちしています。
eric@eric-net.org

【追記:かくた】
ワールド・スタディーズから10年、サイモンは、アフリカの地域の紛争解決センターに勤務するようになっていました。さすがだなと、前年に『対立から学ぼう』を翻訳するように発展してきたERICとどこか道筋が同じであることに、ワールド・スタディーズからの展開として共通点があると思いました。
この時のセミナーには、サイモンとの事前の打ち合わせで、「対立の状況」を演出することが決められていました。そこで、わたしが掲示物の不備を叱るという状況をあえてやりました。娘も参加していたのですが、「お母さん、怒っている、どうしよう」と固ってました。
対立って、すごく印象に残りますね。

by eric-blog | 2017-09-08 14:31 | ERICニュース
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