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結婚差別の社会学

結婚差別の社会学

齋藤直子、勁草書房、2017

2843冊目


子どものいじめ、就職差別、地域での差別的扱い、ヘイトスピーチ、落書きなど未だに数々ある部落差別の中で、最後まで残るのではないかと言われている「結婚差別」。


当人同士はよくても、兄弟姉妹の結婚、いとこや親戚に対する差別的眼差しや差別など、親が結婚に反対する理由、あるいは結婚の事実そのものを隠そうとする背景には、依然として存在する「社会的差別感」がある。


この本を読んでショックだったのは、その問題への対処の仕方である。


是非を言っているのではない。ただただショックなのだ。


結婚差別の実態は「部落差別をなくすための実態調査」などの結果から把握されている。しかし、ほとんどの調査は「もし、あなたの子どもが部落出身の人と結婚すると言ってきたら」というような仮定に基づいた設問であるので、実態を反映していないと、指摘されている。


また、結婚に反対されたこと、恋愛が破綻した場合でも、それをあからさまに「部落だから」ということは隠蔽されがちであることなどもある。


そして、この本は、その実態をインタビューなどの実例を分析することで「出会いから結婚、そしてその後」に至るプロセスで起こったことを明らかにするものである。


結婚に至るプロセスが、Adamsによる図で紹介されている。36

『結婚相手の選択』に所収。


初期の牽引:「容姿」「行動」「関心事」などに対する好ましさ

初期の牽引の継続: 周りの人からの好意的な反応、自己開示、親和感

より深い牽引: 価値観、パーソナリティ、カテゴリーの同質性

より深い牽引の継続: 感情移入、役割の一致

断絶の防御的要因:


って、何だ? わからないが、「断絶の防御的要因」?


初期に「親からの否定的な介入」は「マイナス」要因。「カテゴリーの異質性」にも当たるのかな。


葛藤のない通婚の事例はほとんどないのであろう。



「部落だか、恋愛に失敗した」と認めることを潔しとしないという心理も描き出されている。


「うちあけ」→「親の反対」→「親の説得」→「親がつけてくる条件(隠す、子供を作らない、親戚づきあいしないなど。)」→「結婚後差別」


という段階が描かれていく。


10章では、博士論文にはなかった「支援」が扱われている。


支援ネットワークの大切さに加え、被差別者に対する「心理的なケア」が語られている。


ここが一番のショックだったかもしれない。被差別の乗り越えはカウンセリングで対応するようなことなのか?!


しかも、精神科など医療やカウンセリングの現場で「部落のことを語れない」ために支援が受けられないのだという。

カップルで、あるいは近しい尊敬

結婚がゴールでもない。その後も人生は続く。部落差別のために、結婚後に離婚した人もいる。

「結婚差別の諸相」、神原文子、2014、『部落解放』689


医療やカウンセリングの現場での差別がなあ。驚くなあ。


「糾弾」という手段は、ご本人たちのほとんどが嫌がっているのね。



by eric-blog | 2017-07-19 11:51 | □週5プロジェクト17
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