夢みる教養 文系女性のための知的生き方史
小平麻衣子、河出ブックス、2016
2635冊目
大学時代の恩師、扇谷尚先生は、教育課程論を指導してもらったのだが、大学教育、特に教養教育についての専門家であった。ある時、いただいた賀状に手書きで書き込みがされていた。「教養とは他者との共生のための学びである」。
文科省の審議会か何かのメンバーでもあったと記憶するが、亡くなられてすでに30年近くも経つだろうか。
「研究大学における教養教育」細川正吉、2006
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/publications/journal/no6/12.pdf
教養教育の大学における軽視の傾向、教養部の廃止は、この論文でも指摘されている。
さらには、今や文系学部も風前の灯火だと。
しかし、この本での「教養」とは、文芸などを中心としたいわゆる「嗜み」としての教養のようである。つまりは、カリキュラム論者以外のサークルでは、教養という言葉はそのような捉え方をされているということ。まず、それが一つのショック。
でも、カルチャーセンターやスポーツ教室、どこに出かけても女性の方が多い。
のも事実。時間があるから? 「女性は文化のお客様」
「女性用の人文知が限定されていたことと、じんもんちに女性的イメージが持たれることとは違う。」71
「教養の二重底」
二重規範
二重基準
など、刺激的な言葉が並んでいるが、意味不明。
うーーん、この本を読んでわかったことは、「女性は文化の消費者」であるが、文化活動の担い手ではない「教養主義」というのが長らくあったということ。
もう一つ、面白かったのは、太宰治による『女生徒』が有明淑(しづ)さんという方の手記を底本にしたもので、どのような書き換えが行われているかが並べて紹介されているところ。107
これは面白い! 1000円。買いだね。
資料集:翻刻 有明淑の日記
http://www.plib.pref.aomori.lg.jp/opac_bun/OPP1500?ID=4&SELDATA=TOSHO-B&SEARCHID=0&START=1&ORDER=ASC&ORDER_ITEM=SORT1-F&LISTCNT=10&MAXCNT=100&SEARCHMETHOD=SP_SEARCH&MENUNO=0