貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち

貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち
藤田孝典、講談社現代新書、2016
2626冊目

前回紹介した『それでも生活保護を否定しますか』で鋭くいまの社会の冷たさをえぐり出した著者による、若者に焦点を当てたもの。
http://ericweblog.exblog.jp/23219389/

「下流老人」は流行語にまでなった。まだ読めていないけれど。

1982年生まれで、本人自身の課題としても書いている。

前作との違いは、文献やその著者たちに対するインタビューなど、幅広い視点からのデータも紹介されているところか。

若者論の五つの誤り。
1. 働けば収入を得られるという神話  (労働万能説)
ここでは、木下武男さんが紹介されている。「若者のしんどさは大人によって作られたのだ」と。『若者の逆襲』
日本型システム温存のために若者の雇用が破壊された。
ブラック企業、ブラック・バイトの蔓延。
非正規雇用の拡大。
そんな劣悪な悪循環に陥らないためには「働く先を選びたい」のは当たり前。どこでもいいわけではないのだ。

2. 家族が助けてくれるという神話  (家族扶養説)
このことはこどもの虐待についての杉山春さんの本も指摘していたことだか、いまの親世代たちは育児世代を支援する力のない人たちが増えているのだ。
http://ericweblog.exblog.jp/19691774/
家族は若者を救えない。今朝のNHKあさいちでもレポートされていたが、息子が実家に帰ってきて、親にたかり、親の住宅ローンが焦げ付き、競売にかけられ、住む家がなくなるというような事例。
どの世代もアップアップなのだ。
逆に、たかられている若者もいる。飲んだくれの父親をなぜ面倒見る必要があるのかと嘆く高校生。

3. 元気で健康であるという神話  (青年健康説)
若者の自殺死亡率、日本ダントツ一位! すごいなあ。日本。なんとかしようよ。
ふつ、不安、ストレスなどなど。しかし、この健康説に陥っている社会は支援策を準備していない!

4. 昔はもっと大変だったという時代錯誤的神話  (時代比較説)
昔は貧乏、いま貧困。生まれた過程で、持っている人と持っていない人が別れるし、それが固定化している。努力ではどうにもできない。
そして、若者の分断。相互に辛さを分かち合えない。

5. 若いうちは努力するべきで、それは一時的な苦労だという神話 (努力至上主義説)
非正規社員に未来はない。機械の歯車扱い。「報われない労働」があるのだ。
惚れこめない仕事があるのだ。
最低限、普通に暮らせる労働環境が必要だ。

若者支援無くして少子化対策なし!

だよね。結婚できないもの。

次の章からは「ブラックバイトと奨学金」という学べないサイクル、そして「住めないサイクル」について。

日本の奨学金がローンであることは、すでにかなり共有されてきた問題点だ。スカラシップを返済するというのは本当にあり得ない!のが先進国。にもかかわらず、日本での議論は有償か無償か、利子がつくかつかないかなのだ。ふざけている。



画して学生たちは向学心を削ぎ落とされる。

ブラックバイトの実態については大内裕和さんの『ブラックバイト』より。

大学の正規教員になっても、奨学金の返済で、苦しいという。エーー、教員になったら返済免除じゃないの?

親より高いレベルの学歴でも就職できない。しかも学費も高騰している。
平均所得が激減する中、親も仕送りできない。

年功賃金、終身雇用のないところで、私費負担で学費を賄うことはもはや無理!123

なんなんだ、この国は?

どこでデザインを間違えたのかなあ。

日本の経済的成長の神話が、リデザインを阻んだのだろうなあ。

一戸建てを購入することなどできない。
住宅政策もない。
早川和男さんの『居住福祉』

わたしも、カンボジアに行った時、「日本人は金持ちだ、金持ちだ」と言われて、自分の収入をどのように配分しているかを説明していて、愕然とした覚えがある。1/3程度の家賃は当たり前、そして税金やら年金やら光熱費やらの固定費用が1/3。残りの1/3で、衣食を賄う。対して、カンボジアでは家賃なし、まだ社会も安定していないので、税金も年金も健康保険もなし。うーーん。現金収入は嗜好品に消えがちになる現実。

多すぎるだろ?住宅費。

そして、若者の実家住まいの悪循環。これを「世帯内貧困」と呼んでいる。

低所得の若者の4人に3人が実家を出られない。141

著者は言う。

「人に投資しない珍しい国」だと。178

働いても貧困である社会で、就労支援は貧困の温存でしかない。対策間違っている。

口当たりのいい選挙公約や権力的予算配分に政権が明け暮れている間に、とんでもない行き当たりばったりの政策が跋扈し、盛衰し、パッチワーク状態の対策から、だだ漏れしている。そんな気がしてきた。

怖いなあ。

そこで提言

1. 労働組合の復活、復権
2. スカラシップと富裕層への課税
3. 子どもの貧困対策との連携
4. 住宅政策の充実、家賃補助
5. 闘技的民主主義によって声をあげよう! シャンタル・ムフ

一生涯貧困に至るリスクを宿命づけられた状況に置かれた若者たち=貧困世代。

構造的なものなのだ。そこに気づき、問題に取り組むこと。
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by eric-blog | 2016-10-24 10:57 | ■週5プロジェクト16 | Comments(0)
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