ESDfc2016テーマ「人権」記録
2016年9月24日-25日 参加者:7名 ファシリテーター:かくた http://www.eric-net.org/news/ESDfcPLT2016.pdf ■ねらい 今回の研修では、参加型やアクティブ・ラーニングなどの方法論の導入が教育の現場での課題になっている現状に対して、「伝えたいこと」や価値観という教育目標がおざなりにされていることに対する危機感があった。 何度も言う。ESDは価値観の教育である。専門家の育成やエリートのための教育ではないのだと、OECDのレポートも言う。「教育はわたしたちの社会の生き残りをかけた投資なのだ」と。 そのためにすべての人にESDを届ける必要があるし、すべての教育の質をあげる必要がある。そういう問題意識で、「主体的」で「対話的」で、「深い」学びのためのアクティブ・ラーニングが唱導されているのだ。アクティブ・ラーニングの背景には、わたしたちの社会の生き残りをかけた教育哲学がある。 にもかかわらず、HowはWhyをすっとばして、一人歩きする。 WhyのないHowはバッドコピーに堕しやすい。 今回は、徹底的にWhyにこだわりたいと思った。 ■プログラム 記録 セッション1 共通基盤づくり 11:00-13:00 1. 塗り絵葉書を半年後の自分のために準備する 2. 研修への期待と塗り絵についてのひと言で自己紹介 3. 「○○の心がけ」をペアで考える→共有・模造紙板書・掲示 4. 傾聴 5. 人権尊重文化の行動目標 できている? 課題は何? 手だてをしている? ○肯定的な風土 ○対立は悪くない ○問題提起を受けとめる 【ファシリテーターからのミニレクチャー1】 ERICの研修では、最初に何か「手作業」を取り入れる。作業的なことを行うことで、「スキル」を身につけるというのはどういうことかを考えることにつなげることができるし、手作業は「全体言語的」な理解や考え方を刺激するからだ。 マッサージやからだほぐしもよいものだが、導入からは、ちょっとハードルが高すぎる。今回は、塗り絵。小林かいち展でかいちの描いた絵はがきがすばらしかったので、着想した。10分程度では到底出来上がらないが、みなさん楽しく取り組めたようだ。わたしも途中まで塗ったものがあったのに、自宅に忘れていて、披露できず、悔しかったなあ。 小林かいちの原画を知っているわたしからすれば、「知らない人は自由だ」なあああ。うらやましい。 今回は、この葉書を「半年後のわたし」に送るというプラスアルファ付。 【ファシリテーターからのミニレクチャー2】 ERICの主催研修12時間コースの組み立てを紹介する。 ホワイトボードの左カラムに板書してある11項目。今回は「ファシリテーターの資質」を加えた。MQWの「ファシリテーターのコア・バリュー」の点検を取り入れるつもりだ。 【ファシリテーターからのミニレクチャー3】 いつもであれば「傾聴」をしてから「話し合いの心がけ」を行うのだが、「研修への期待」から「人権の学び」にどん欲になって欲しいと思ったので、「何のためなのか」を明確に意識してもらおうと「○○のために」の部分もペアで話し合ってもらうことにした。 【ファシリテーターからのミニレクチャー4】 傾聴の時に、話が単なる自己紹介になっていたので、「人権教育」について、考えたことなどに集中してほしいことを伝える。 なぜ、「あたりさわりのない」自己紹介に「逃げる」のか?のふりかえりを行った。 【ファシリテーターからのミニレクチャー5】 「なりたい未来」の共有から、その未来に向けてバックキャスティングで教育内容を考える、そんな流れが本来であれば正当であろうと思う。しかし、それをやっていては、二泊三日の「フューチャーサーチ会議」を開催してもおぼつかない。今回は、これまでわたしが人権研修を行って来て、感じていた「人権尊重の風土」の特徴を、とりあえずの行動目標としてその目標の背景にある価値観を確認し、それが実現出来ているかどうかを検証し、育てるための手だてを考えるという流れで行うこととした。 人権尊重文化の背景にある価値観は、「平等」「正義」「多様性」など、ESDの価値観と共通している。それらの価値を実現するのが行動目標である。 ○肯定的な風土 ○対立を恐れない ○問題提起を受けとめる、社会変革につなげる この三つに至ったのは、「日本社会の○△□」の課題を考えた時のこと。この日本社会の特徴は、「対立」することを難しくする。この社会の特徴の故に対立することや、異なる意見を言うことが難しくなる。であれば、どのようなことが実現されていれば、意見を言うことができやすい社会になるのだろうか。 「均質さを好む」のに対して「多様性を喜ぶ」、「力の格差の感覚が大」に対して「対等」、「リスクを避ける」のに対して「プロセス思考」で社会変革する。そんなことを考えた。 人権教育は、同和教育から始まった。同和問題は、被差別の側からの問題提起を受けとめて、社会が改善に取り組んだ結果である。そのことも、人権尊重社会の重要な資質である。 点検のためのアクティビティが、それぞれについて、すでに何度も研修で取り上げて実践してきている。 セッション2 人権尊重文化の実現=課題と手だて 14:00-16:00 1. 課題と手だての共有 行動目標大切な理由行動手だて 肯定的な風土・一人ひとりの存在を尊重する ・対等な関係で ・排除しない ・立場の違いはあっても一人ひとりは対等 ・相手を大事にする・人の話を受けとめる ・価値観が異なる人との対話を試みる ・人の話はさえぎらない ・職場でも異見のいいやすいムード ・自分のもつ社会的力を自覚する肯定的な風土・点検の視点三つ ・わたしのいいところ10 ・人のことをほめたこと ・人からほめられた/認められたこと 対立は悪くない・一人ひとりの成長 ・多様性を受けいれる ・主体性をみんなが持つ・ビビっていても発言する勇気 ・いやだなと思う人でも受けとめる ・違っていても自分の意見を言う ・対立の温度計をあげない。激化させない対立の扱い方を学ぶ 日本社会の○△□ なぜ対立しにくいのか 問題提起を受けとめる・社会教育では人権は大切な基盤 ・立場上大事、そのことを再認識してもらう ・簡単にかいけつできない大きな目標なのでいつも課題がある・研修会の開催あなたは信じる?信じない? 「危険」なことを指摘する 指摘の仕方・受けとめ方 2. ふりかえり セッション3 ふりかえりとまとめ 16:00-18:00 1. 「さまざまな感情」と価値観 2. 正確に聞く傾聴 3. 価値観は育ったかな? 価値観を育てるものはなに? 知識、感情を伴う経験、対話 4. 四つの活動形態をふりかえる 5. 五つの手だてについて、まとめる[グループ作業7’] ○ジャーナル・個別対応 ○風土・学校全体アプローチ セッション4 プログラム開発 9:00-11:30 1. からだほぐし 2. ジャーナルづくり「昨日学んだことを三点、見開きページに書こう」→共有 3. 現状分析「人権尊重文化の課題は何?」「のばしたいものは何?」 4. テキスト・リーディング→共有 5. 手だてを考える ○アクティビティ ○プログラム ○カリキュラム 5. プログラム立案「起承転結の四行文章で伝えたいこと・各行にアクティビティを乗せる」 セッション5 アクティビティ実践 12:30-14:30 1. 教員対象のプログラム「あらためまして人権です」 起承転結アクティビティ あなたが実践している手だては何ですか参加者アンケート(HR,p.51) どんな「人育て」の手だてがあるでしょうか?手だてカードを「効果と効力感」で分析する(参考「あなたならどうする?」HRA, p.17) それらの手だてを、より「人権感覚」を育てるものにできないでしょうか?手だてカードの改善点 人権尊重文化を育てる手だての原則を共有しておきましょう。人を育てる手だての五原則 2. 行政職員対象「市町村担当職員のための人権研修実施のためのオリエンテーション・プログラムを改善する」 既存のプログラム改善点 市町村の職員のためのイントロ参加者アンケート「できていること・課題・改善のアイデア」など。 アクティビティ体験アクティビティ体験 まとめ流れのあるプログラム実践評価表を活用して「四つの活動形態」などの視点からふりかえる 「わたしだったら抗する」実践のためのアイデア共有 3. 一般「子育て世代を育てる」 起承転結アクティビティ 子育てで心がけていること何ですか子育ての「手だて」ビンゴ! いい点・課題を共有しましょう。「効果と効力感」で分析しよう 「前向き子育て」から学ぶこと。トリプルPの17の技術ワークシート 互いに認めあい、励ましあって、誰もが子育てしやすい、よりよい子育て環境をつくりましょう。わたしたちにできること セッション6 ふりかえりとまとめ 14:30-16:00 1. ファシリテーターのコア・バリュー[ペア作業] Making Questions Workより「一貫性・誠実さ・相互関係の尊重」を「わたし・あなた・みんな」の枠組みに書き換えたワークシートを活用する。 2. 価値観は育ったかな? 二日間のふりかえりと共有 3. 個人的行動計画 4. 「半年後のわたし」に葉書を書く 5. 修了証にサインしよう ファシリテーターに求められるコア・バリュー(持つべき価値観) ■「わたし」自身を尊重する ・成果へのグループ・オーナーシップを醸成する: 成果は参加者のもの ・プログラム/プロセスにおける自己欺瞞の最小化 ・意図を明確にする ・問題が起こった時、そのことを認める ・あなたの能力について正直である ・いま、ここに集中する: 参加者とともにある ・参加者の見方・考え方に耳を傾ける ■「あなた」相互の関係性を尊重する ・公平さを実現する: 配慮の必要な人のニーズに応える ・グループの相互尊重の規範を明確にする ・参加者相互の交流の時間を尊重する ・参加者同士の直接的なやりとりを推奨する ・忍耐強く: 誰の沈黙であるのか、ファシリテーターか、参加者か ・グループのエネルギーを尊重する ■「みんな」の規範を保つ ・客観性を保つ ・秘密厳守の確認 ・利害対立に対するセンシティビティ ・馴れ合いを避ける ・質問はフェアに ・発言の根拠、出典を確認する ・力や情報のアンバランスに言及する Making Questions Work: A Guide to How and What to Ask for Facilitators, Consultants, Managers, Coaches, and Educators, Dorothy Strachan、2006 より作成 ■記録の共有 https://www.dropbox.com/sh/omjsvc0yrja9n7k/AAC-rswwPt8SjNv1Zi57s6_3a?dl=0
by eric-blog
| 2016-09-27 10:12
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