冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場
冲方丁、集英社インターナショナル、2016
2596冊目
笑うた!
9日間の勾留について、一冊の本が書けるなんて! さすが作家さん、である。
なんで222ページも書けるかなあ。
いや、ぜったいこの人、DVやっているよ。説メンくさいし、めんどくさそう。
結局、警察が刑事告訴できるような「傷害事件」ではなかったから、釈放され、不起訴になっただけのこと。
そして、世間はやさしく彼を受け入れる。
妻の訴えは「民事」で慰謝料などを請求するかわりに刑事告訴になるような動き方をする。警察による「代理誘拐」。
出してほしければ3000万円を和解金として支払えと。しかし、「訴えてはいない」というのだから妻の方も支離滅裂。
ふりまわされた警察は、自分たちの「出世のためなら、なんでもする」体質を暴露されただけ損。
逮捕状自動券売機と名付けられた裁判所
有罪率99.9%を誇る検察。
逮捕の2割はえん罪。それによって高い解決力を誇る。
刑務所と違って、留置場こそが勝負の場。
逮捕した人を「罪の自白」「認罪」に追い込むための数々のしかけ。
自尊心を砕く。
無力感をすりこむ。
怒声をあびせる。
ささいなことで怒鳴る。
あげあしをとる。
一晩中、照明をつけたままにして寝不足気味においこむ。
意志をくだく。
『天地明察』はよかったなあ。
でも、写真は嫌いだ。こんな口元の人にそばに来てほしくないと思う。
DVとは言っても、傷害レベルにならないと、警察は介入しないってことだね。
そして、「精神的」「経済的」「ネグレクト」などの暴力はまったく問われないまま、釈放、不起訴。編集者、読者、ファンあげて、「潔白だった!」のオンパレードかあ。
男性中心の配役の男ばかりの芝居をみさされた感があるなあ。
留置場の非人間性はとてもよくわかったけれど。