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母よ、殺すな

母よ、殺すな
横塚晃一、生活書院、2007
2554冊目

他の差別と同じような感覚が、障害者差別についてもある。施設が充実し、それなりに年金などの手当もあって、運動の先鋭的な部分が失われ、「弱者」としての位置が固定的になり、受け身にされていく。

運動が弱くなり、個人も弱くなっていく。なぜだろう? 
うらみつらみの量の多さが、思いの強さになるのは否めないよねぇ。

著者は、1935年生まれ、1978年死亡。脳性マヒ。次のような綱領を宣言している「青い芝の会」のメンバー。

■青い芝の会の行動綱領
第一テーゼ: われらは自らがCP者であることを自覚する。
第二テーゼ: われらは強烈な自己主張を行う。自己主張こそ自分を守る意志。
第三テーゼ: われらは愛と正義を否定する。エゴイズム。
第四テーゼ: われらは問題解決の道を選ばない。危険な妥協。次々と問題提起を行うことのみ。

■「千差万別の混沌が社会。」90

「脳性マヒ者が世間一般なみにといって世間にあこがれることは不当な差別を助長するにすぎず、ひいては自己の存在そのものを否定する結果になるのではあるまいか」

「一般常識にあてはまらないからといって人間の存在を否定することは本末転倒といわなければなるまい。」91

「生活形態はどうであろうと社会に対し我々のありのままの存在—社会性のない、非能率的な存在—を堂々と主張することなのである。」91


■昭和45年5月29日、母親による障がい児殺しの問題について書かれた「母親の殺意にこそ」(1972年2月)

◎加害者である母親に対する減刑嘆願の署名運動。
◎行政に対する抗議文の提出

「働けるかどうかだけで決めようとする価値観」42

ベトナムの民間人、数百人を殺害したカリー中尉
日本人農婦を殺したジラード二等兵

「自分たちより劣った蛮族の裁判を・・白人が受けるのは何としても我慢がならない」43

「重症児は健全者といわれる人達にとっては異人種なのであろうか。」

「施設にいる障害者はたいがい外出外泊の自由もなく、所持品や衣服に至るまで制限を受け、必要によっては肉体、生命までも医学の進歩とやらの人身御供に差し出さなければならない。つまり哀れな存在であることを要求されるのである。」44

そのような中で、施設労働者と障害者が出会う。障害者に対する優越感と、オリの中の差別に気づき自己を発見したものとが、闘争する場。

■きょうだい、親との関係

「母は答えました。「それはつくるべきです。二人目、三人目の子供が健全であれば、親の気も休まりますよ。」」73

「自己主張のために子供が必要だった。」74

「弟妹たちも迷惑だったかもしれないが、私にとっても・・・優秀な者がそばにいることで迷惑をこうむっていた」75

「人間には「のりこえる」ことなどできない。・・・気がまぎれる・・・忘れるともなく忘れていたにしても、それらのうらみ・つらみが今の私をつくり上げ、障害者運動へと駆り立てている」76

■「優生保護法とわたし」(1972年9月)で「この世にあってはならない存在」であること。

出生前健診を可能にし、中絶を容認する。


「権力とは常にある少数の者を悪として社会から排斥することによって、他の多数の者に優越感と差別意識を植え付け、幸福幻想をばらまきながら大衆を自らの都合のいい方向へと動かし、その上にのって自らの立場を教科するものなのです。」131

「自分が権力者の側、つまり「不良な子」ときめつけ切り捨て抹殺する側に無意識のうちに立っているから、あるいは書くなくとも自分は消される側ではないと思っているからではないでしょうか。でも、どんじりを抹殺したところで次から次へとどんじりは出て来て、それはこの世に人間がたった一人になるまで続くことでしょう。」132


■『さようならCP』
原一男監督、

・福祉労働者という部類の人間はとかく錯覚に陥る。
・まず差別者であることを自覚する。
・「私は偏見がない」と言い切る言葉の抑圧。
・施設はゴミ捨て場だ。
・優生保護法が「障害者はこの世に生きていてはいけない」と国家が定めている。


■関連ブログなど
障害者はどう生きてきたか 戦前戦後障害者運動史
杉本章、現代書館、2008年、原著2001年
http://ericweblog.exblog.jp/21079615/

カニは横に歩く
角岡伸彦、講談社、2010
http://ericweblog.exblog.jp/14170273/

障害のある子の親である私たち──その解き放ちのために・47〈最終回〉
福井公子
http://www.seikatsushoin.com/web/fukui47.html
by eric-blog | 2016-08-13 11:32 | □週5プロジェクト16
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