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水平社博物館

102-1(478) 水平社博物館
2005年9月25日

奈良県御所市柏原、全国水平社運動の始まりの地にたつ『水平社博物館』を訪ねた。
橿原神宮を訪ねたら、「水平社博物館」こっちという看板があり、なんと橿原神宮内
に水平社運動の記念館があるのかと早合点、駐車場(500円もする)に入れて場所を確
認すると、そこからは車で20分もかかるという。ここで駐車して歩いていく距離では
まったくない。
なんだ、この表示は?
しかーーーし、そこはレンタカーの強み、行って来ました。2003年にリニューアルさ
れた「博物館」と「人権のふるさと」へ。

橿原神宮の威丈高さに圧され、商売に逸る飛鳥寺、国費を注ぎ込んで補修し、駐車場
代すら無料の高松塚古墳、補助金できれいに整備された田園風景と続くその確固とし
たたたずまいを逍遥しながらの末、博物館に行きつくと、伝統に楯突くのにどれほど
大変な思いがあったかと、それだけで、じーーーん。でした。

ちなみに、当時の柏原は桐の下駄産業で、本村より経済力があったほどだったそうで、
いまも9軒が下駄づくりに携わっているとか。最近、中国製の安い桐の下駄ばかり履
いているわたしとしては、現場を見たかったでした。

とはいえ、展示内容にはちょっとがっかり。ジオラマのつくり方は「ビデオのイント
ロ」「ジオラマ&3Dで再現」「フロアに配した人型からの声で聴衆の気持ちを表現」
と面白かったのですが、展示がなにせ「文字」ばかり。古文書館の趣きなのです。水
平社運動に携わった人々についての展示は、大阪や福岡の展示よりはるかにていねい
なのは、さすが運動の起こった場所だけあると思いましたが、その生活や生き方を追
体験できるような工夫はありませんでした。(例えば、オーストラリアの環境教育施
設では、昔の建物を移築した明治村のような建物の中で、1800年代、女性の自立を願っ
て旅立つ娘と、それを心配しながら見送る母親のストーリーを、現場劇の中で追体験
できる工夫がありました。)

たぶん、わたしよりも上の世代の、まだ自分たちもその頃の生活体験を覚えている人
が監修したのでしょうが、部落差別からの解放を願った時代は『おしん』の時代のよ
うに、過去なのです。その時代の「差別」とそれを解消するために立ち上がる人の気
持ちを実感するには、もっと工夫がいると思いました。縄文時代も明治時代も、実感
のなさでは同じだ、ということが、創る側に分かっていないんだなと思います。

奈良県の人権学習資料集「なかま」の指導者用資料があったので購入してきました。
いまから考えれば、もとのものも買えば良かったです。
1. 「なかま 小学校用指導書」奈良県人権教育研究会、2002年
2. 「なかま 中学校用指導書」奈良県人権教育研究会、2002年
3. 「なかま 高等学校用指導書」奈良県人権教育研究会、2003年
4. 「なかま成人用 第6集」奈良県人権教育研究会、2005年
5. 見学ガイドマニュアル-指導者の手引き- 水平社博物館、2003
『なかま』の教材のねらいとアプローチの視点は、人権教育の視点として小学校、中
学校、高等学校ともに共通しています。

I. ねらい
1. 知識・認識
-1. 人間観
(1)同質性
(2)多様性
(3)相互依存
(4)共感的理解
-2. 社会観
(1)環境統制感
(2)平和と対立
(3)文化の多様性
(4)環境問題
-3. 人権の基礎的知識
(1)権利・義務・責務・責任
(2)人権侵害の事実
(3)人権の歴史
(4)人権に関する宣言や法律
2. 態度(姿勢)
-1. 人間の尊厳
-2. 興味・関心
-3. 他者への共感
-4. 受容
-5. 正義と公平
3. 技能
-1. 情報活用能力
-2. 批判的思考
-3. コミュニケーション能力
-4. アサーティブネス
-5. 公民的資質

II. アプローチの視点
1. 普遍的視点
-1. セルフ・エスティーム
-2. 慣習・因習
-3. 予断と偏見
-4. 非科学的思考・価値観
-5. 少数者の排除と多数者への追随
2. 個別の視点
-1. 部落問題
-2. 女性
-3. 「障害者・児」
-4. 子ども
-5. 外国人
-6. HIV等
-7. アイヌ・オキナワ
-8. 高齢者

学習方法は基本的に「参加型」による話し合いが中心で、「答え」よりも「考える」
ことが重視されているものです。
高等学校段階では、かなり難しい資料の読み込みやデータから考える活動が増えてい
ます。また、人権の実際については海外の事例との比較がおもしろいです。

 

-- 人権尊重文化の推進3原則 --
○排他的ではなく包容力のある文化 Inclusion
○ヒエラルキーではなく対等な関係 Empowerment
○リスクを避けるのではなく、変化のプロセスに挑戦する Process Mind
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by eric-blog | 2005-09-26 09:33 | ■週5プロジェクト05
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