96-7(449) 日本の戦争責任をどう考えるか−歴史和解ワークショップからの報告−
船橋洋一、朝日新聞社、2001 出版年を9.11を基準にみてしまう。このワークショップが開催されたのは2001年2月16、17日、東京国際文化会館においてであったという。7名のペーパー・プレゼンテーターと5名のコメンテーター。すべてのペーパーが「日本の戦争責任」についてだけに焦点を当てているわけではなく、南北朝鮮、カンボジア、東ティモールなど7つのケーススタディであり、「戦後の和解」をどう進めるかということについての報告があり、互いの学び合いがあり、そこから紡ぎ出された原則が提示されている。和解は、日本独自の課題ではなく、人類共通の課題なのだから。 折しも「新しい日本の歴史教科書をつくる会」が編纂した中学の歴史教科書が物議をかもしていたようで、(「国民の歴史」西尾 幹二 , 新しい歴史教科書をつくる会 (1999/10) )あれからどれだけ、わたしたちの議論は進んだのだろうかと思えてくる。 「検定で認められるということは、日本政府が彼等の見方を認めているということ」李時栄氏、18 それはそれとして、世界の動きは、冷戦後の「アイデンティティ政治」によるアイデンティティをつよばった形で、排他的に定義しようとする「記憶の戦い(memory wars)」が吹き出しつつある。20 「歴史の尻尾」とでも呼ぶべき過去の問題。それは普遍的な問題であり、人間社会の問題の一部だということ。22 和解は、異なる局面、段階を経て行くプロセスである。 (1)真実を明らかにすること (2)「記憶化・記念化」すること memorialization (3)補償 (4)責任 accountabillity 懲罰的な責任retributive justiceと回復的正義restorative justiceがある。 -オーストラリアの経験-ギャレス・エバンス元外相 1967年の憲法改正によりアボリジニーの人々に市民権、しかし、ハワード首相による「謝罪」の拒絶。 「和解にはリスクがつきもので、一国内の問題であれ、これを避けて通ることのは不可能である。相手から拒絶されるかもしれない。実現不可能な期待を持たせてしまうかもしれない。約束を撤回せざるを得なくなったときの反発もあるだろうし、法的責任というパンドラの箱を開けてしまうおそれもある。また、新たな問題への配慮を怠ったまま、自己満足してしまうかもしれない。強さ以外は理解の範疇にない反対勢力に弱味を見せることにもなる。さらに、和解プロセスへの取り組みに批判的な第三国の支持を失うリスクもある。恩赦を与えるのであれば、平等かつ公平で納得のいく正義を実現することが果たして可能なのか、という問題もある。」95 「近代的で創意に富み、社会・経済的に発展した結束力のある多文化社会で、時代の潮流と地域の状況に敏感な国家なのか、あるいは孤立し、時代に取り残された偏狭な国家なのか」98 日中両国の和解−その問題点と展望 楊大慶 歴史研究の課題216-218 ・日中関係史のプラスとマイナス両方向からの遺産 ・自国の歴史の研究と、相手国のイメージを作り上げているものの解明 ・日中両国の意見交換を国際化する 歴史教育の課題 ・教師のための共通の参考書 ・国際副読本の採用 ・ユネスコなどの国際機関との連携 「事実の誤り、誤った考え方、議論の分かれる解釈など、ある国の国民や文明に対して不公平で侮辱的なイメージを与え、したがって国と国との関係を悪化させるおそれのある表現」を学校教科書から全面的に追放することを、ユネスコは目指している。 ・一般市民の知識を高めること。 ドイツとポーランドのユネスコ委員会が、両国の教科書対話を始めたのは1972年。244 和解のプロセスとは、ある地域の平和に対する貢献そのものだ。政治的安定、経済的繁栄、良き隣人関係などの源となる地域協力への扉を開く。 「アイアムソーリー」のグローバリゼーション294 過去の行為が多くの人々に苦痛を与えたことへの謝罪が世界中で広まっている。 ・1990年 大平洋戦争中の日系米国人の強制収容所送りに対する補償 ・カトリック教が、ホロコーストを防げなかったこと。 ・ニュージーランドのマオリに対する迫害 ・19世紀のアイルランドの飢饉に対するイギリスの態度 ・アルジェリアの戦いを独立戦争と認める法案をフランスが可決 ・ドイツにおける「記憶・責任・未来」基金の創設 ・1993年細川首相おわび ・1995年村山首相 ・1998年日韓共同宣言 これらは「移行期の正義transitional justice」295 冷戦後「歴史の始まり」297 ・真実の究明・民主化 ・アイデンティティ政治による被害者意識と排他的攻撃性 ・歴史が記憶に負ける ・犠牲者を尊ぶ文化 ・再統合 300-315 歴史和解を考えるための11箇条 第1条 人間社会の普遍的な経験 第2条 「われわれ」の歴史は、「みんな」の歴史=他民族の人々と平和と共存の関係を築き上げる共同作業として 第3条 長期にわたるプロセス 第4条 単一フォーミュラはない 第5条 加害者、被害者双方の共同作業 第6条 前向きの現実主義 第7条 民主主義の育成 第8条 多角主義的、地域主義的アプローチ 第9条 政治リーダーシップ 第10条 個人のイニシャティブ 第11条 どんな国にしたいのか
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| 2005-08-17 18:16
| ■週5プロジェクト05
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